第62話「十四番目の男(ワイルドカード)」(改訂版)
第二十二話「
「で、
「はい、さい……
俺の問いかけに、戦場には場違いな
「そうか、わかった」
俺は目前に整列した六名の女達を眺めていた。
――
革製の最早、仮面といえるくらいの大きな眼帯で右顔半分を覆った奇抜な風体であるが、露出した左半分から見える顔は、細く涼しい瞳にキリリとした口元と
――
ニコニコと愛嬌が良いが緊張感の少し欠けた、ある意味、飄々とした雰囲気の三つ編みの剣士で、余談だがボン、キュ、ボンっとスタイルはかなり良い中々の美女。
――
ジトッとした三白眼で俺をジッと睨む、なんだか無口で無表情で小柄な謎少女。
しかし、その小さい身に確かに殺気を
多分、懐に多数の凶器を隠し持つ”暗器使い”であろう少女。
――
長い黒髪を簡易的に後ろで束ねた、凜とした佇まいの見るからに生真面目そうな美女。
簡易的な金属製の
――
くせっ毛のショートカットに、そばかす顔の本来は快活そうな少女であるが、
真面目でちょっと融通が利かない性格からか、どうも難しい顔がクセになっているらしい堅物少女。
だが、その瞳には澄んだ叡智が見て取れる……
俺が見るに、間違い無く策士の部類だろう。
――最後に……
長い髪をアップに
それと家事全般が神級の腕前で、俺が知る”
あと……は、さっきの
「…………」
――これが
なるほど一見、見目麗しい女性、少女揃いだが、その実は中々の面構えの猛者共ようだ。
――
「
「っ?……ああ、そうだったな」
六人の見目麗しい女性達を観察していた俺は、
――そうだ……今の俺は、”鈴木
”
”
俺が急遽、用意した設定だ。
――
「聞いてないわ、
真面目そうな、
「そうだよねぇー、顔もぐるぐるの包帯巻きで怪しさ爆発だよぉ!」
そう言ってケラケラと子供のように笑う三つ編みの
「
「……」
――火傷……ねぇ、ホントあの
俺は自分で決めた設定であるにも
――とはいえ……
このままでは話が一向に進まないだろう。
「えー、まぁ、諸君等が俺を不審に感じるのも仕方が無いと思うが、今は緊急事態だ、どうか姫様に全権を委任された俺に身を委ねて欲しい」
俺の言葉に
「鈴木
――ペテン師って……おい、本音がチラチラと垣間見えてますよ、
「まぁ……
「だねぇ」
だが、
「わかりました」
「…………わかった」
続いて残りの二人も言葉少なく頷いた。
――やはり……
俺は頷くと、
「……ふん」
が、あからさまに仏頂面で視線を外される。
「……」
――まぁなぁ……
あの時……
俺は自らぐるぐるに巻いた包帯の下で苦笑いをしてから、目の前に存在する作戦図ともいえるもの……
つまり、司令室中央に設置された大テーブルの上にある
「…………」
――”
そうだ。
実際の戦場地図を広げずに、この
戦場の地形、敵味方の陣形、更にはその後の兵の動きの予測……
それら全てをこのシンプルな遊戯の盤上に反映させ、そこから神算鬼謀を構築する。
彼女独特の手法だ。
――で、これは……
「十面埋伏か、そして……」
俺は様々なクリスタルの駒が並ぶ盤面から彼女の意図を読み取ろうと脳味噌を忙しく働かせ……
やがて”それ”を得ていた。
「とりあえず、第一に正面の
盤面を見つめたまま大雑把な配置を促す俺に、
「正気……ですか、現在最も火急に対応すべきは、姫様の防御陣さえ
彼女らを代表するかのように、
「
「なっ!?」
そして、五人を代表するように異論を唱えた、くせっ毛のショートカットにそばかす顔の少女……
「鈴木
”
彼女は同じ策士として、特に俺の方針がどうしても受け入れられないのだろう。
”
その化けの皮が早くも剥がれたとばかりに、俺に呆れた視線が集中していた。
――はいはい、そういう特異な視線は馴れっこなんだよなぁ
俺は五人の女達が向ける侮蔑や疑心暗鬼を含んだ視線の集中砲火にも余裕で笑う。
そして――
そうだな……最初の
俺は五人の中でも最も俺に疑問の視線を突き刺す少女に向き合った。
「神が振るサイコロはな……高い目しか出ないって知ってるか?」
――っ!?
予測もしない返答だったのだろう、
「なにを?……いったい」
ようやっと、そう絞り出した少女に俺は続けた。
「他に”策”を宛がうって事だよ、いいか、信じられない程の強運、異能、神魔……そんな理不尽級な輩と相対するなら、そういう
「…………あ、あとは?」
ゴクリと生唾を呑み込むような切羽詰まった
”
だが、そうは言っても、その
――それは彼女が……叡智に魅入られた”策士”だから……
俺の言葉に静まりかえる司令室で……
俺を推し量ろうとする面々の無言の視線で重くなる空気の中で……
俺は応えた。
「適当な”
――
―
そして、その場は……
例えようも無いくらい冷え込んだのだった。
第二十二話「
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