第60話「二人の鬼」後編(改訂版)
第二十話「二人の鬼」後編
「
天を突くような二本の直角な角を生やした特徴的な造りの兜を被った男が、その場の光景に言葉を無くし立ち尽くしていた。
「あははっ!ふふっ!あはははぁぁーー!」
その戦場には狂ったように
「ぎゃぁぁ!」
「ぐふぉっ!」
――阿鼻叫喚!
血飛沫を撒き散らす紅き竜巻に肉を削がれ、骨を刻まれ、倒れ行く数多の
長い黒髪……いや、赤黒く染まった髪を振り乱し、全身をも更なる”
「あはははぁぁーー!」
女の肩口には折れた刀が刺さり、身につけた鎧は歪み凹み、所々の衣服が破れて露出した白い肌にも、腕にも足にも無数の傷を負って……
それはもう返り血なのか自身の血なのか。
何十人斬り伏せたのか、孤軍奮闘で両手の刃を振るう紅き女は赤の中で笑い続ける。
「これが……
だが、驚くべき事にその女の運動量は微塵も落ちることがない。
敵も味方もない、自身以外は
「
遅ればせながら、槍を片手に持った黒い仮面の将が駆けつけた時には、同僚である二本角兜の男、
「
額から鼻まで覆った黒い仮面を装着した、露出した
「
「離れろ!離れるのだっ!少しばかり時間はかかるが、遠巻きから飛び道具を交え、確実に仕留め……」
「では、俺が行こう」
――!?
命令が完結する前に
「き、貴様は……」
その人物は、細身で引き締まった体つき、両腕をだらりと無防備に下げてはいるが、一分の隙も見当たらない男。
一見、物静かに見えるが、実は関わり合いになりたくは無い鋭い眼光を宿す、長めの黒髪を雑に後方で
「あ、
黒仮面の将、
「こんなところで時間を食っている暇はないだろう、貴殿等が行かぬのなら俺が仕留めるまで」
ザッ!ザッ!
言うが早いか、前方の”
ザシュゥーー!!
「ぎゃぁぁっ!!」
ザッ!ザッ!
「……」
「っ!……あら?」
ドサリ
闘争と殺戮の恍惚からか
「なに?なに?……今度はあなたがこの身を
そして、ゆっくりと男の方を振り返って
「……生憎だが、お前を飾るのは貴様自身の血だ」
そして、戦慄の血濡れた夜叉と対峙しても、表情を全く変えずに応える
「ふふ……血に飢える
愉しげに……
本当に愉しげに口角を上げた女は、血に浸した両手の細身剣を水平に振り上げた!
ダダッ!
ダッ!
「待たれよっ!ここで”その獲物”を持って行かれては、我ら
突如!天を突くような二本の直角な角を生やした特徴的な造りの兜を被った男が、
「左様!
額から鼻まで覆われた黒い仮面を装着した男もまた、同時に突進し、その槍が
ブォォン!
黒仮面、
ふわりっ!
軽く跳んで
ガッ!
そのまま片足で槍を踏みつけて地面に押さえ込んだ。
シュオンッ!
「ぬっ!」
キィィーーンッ!
同時に攻撃を仕掛けた二本角兜の
ズバァァッ!
「ぐはっ!なんだとっ!?」
体勢を崩した
――飛び散る鮮血!
「あはははっ!またくれるの?私に”
脂汗を滲ませてしゃがむ二人の武将を見下ろしながら、女は妖艶な紅い唇で笑う。
「ぐぅぬぬぬ……夜叉め!」
「恐ろしい……
場の空気に完全に呑まれた二人の
「……そうよ、”
「……くっ」
「ぬぅ……」
近寄る”
ザッ!ザッ!
「…………あら?」
再び――
ザッ!ザッ!
シャラン!
歩きながら刀身を抜き放つ男。
そしてその金属音に、”
「奇遇だな、
ザッ!ザッ!
銀色に反射する刀身を肩の高さに掲げて歩み寄る男。
「へぇ、そうだったんだ?……あなたが……あの」
それだけで
「……鬼」
呟いた
「ああ、”
そして――
後に、この”
「……」
「……」
二人の”鬼”は
第二十話「二人の鬼」後編 END
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます