第60話「二人の鬼」前編(改訂版)
第二十話「二人の鬼」前編
ザスッ!ザスッ!ザスッ!
ザスッ!ザスッ!ザスッ!
「うぎゃ!」
「ぐぉっ!」
「がはっ!」
雨霰と矢が降り注ぎ――
そしてそのどれもが命中するという神業!!
天駆ける無数の矢は、一矢たりとも地面に触れる事は無く――
代わりにそれを受けた兵士達が地表を埋め尽くした。
「ちぃっ!なんて腕だ……これが
ブォォンッ!
平地に屍を敷き詰めるばかりで一向に砦へと近づけぬ苛立ちからか、馬上より手にした剣を虚空に斬りつける鎧姿の男。
「コソコソと遠見から姑息な……」
苛立つ男は、まるで天を突くような二本の直角な角を生やした特徴的な造りの兜を被っていた。
「落ち着かれよ、
そして、その二本角兜の男を
こちらの武将は鎧兜と額から鼻まで覆った黒い仮面を装着し、露出した
「
二本角兜の
ヒヒィィーーン!
「
自隊を率いて構わず特攻する二本角兜の男の背を見ながら、黒仮面の男、
ザスッ!ザスッ!ザスッ!
ザスッ!ザスッ!ザスッ!
「うぎゃ!」
「ぐぉっ!」
「がはっ!」
雨霰と矢が降り注ぎ――
そしてそのどれもが的確に相手を貫く!
「…………ふぅ」
小さく吐息を漏らす
「
小国群のひとつ、
「
長い黒髪を後ろで束ねた、少し
「…………多いわ……ほんと……はぁ」
おおおおおぉぉぉぉっ!!!!
犠牲もなんのその!
突き進み迫り来る敵部隊の先頭に、おかっぱ頭の少女は二丁拳銃の如き構えから両手にもった若干小型の西洋風”
バシュッ!バシュッ!!
「ぎゃっ!」
「ぐわっ!」
同時に放たれた矢は見事に二人の兵士の眉間を射貫くが……
おおおおおぉぉぉぉっ!!!!
「くっ!これでは……」
そう、まんま”焼け石に水”だ。
「捉えたぞぉぉ!小賢しい敵弓部隊を蹴散らせぇぇいっ!!」
おおおおおぉぉぉぉっ!!!!
とうとう敵軍の侵入を許して、砦前は敵味方入り乱れた混戦状態と化していた。
ザシュゥーー!
「うぎゃっ!」
ズバッ!
「きゃぁぁっ!」
混乱する戦場に所狭しと閃く刃が放つ銀光の数々!!
混戦状態に持ち込まれた
トスッ!トスッ!
「ぎゃっ!」
「ぐわっ!」
「よし……次っ!」
迫り来る敵兵二人を両手の
ギィィィーーン!
「きゃっ!」
後ろから右手の
「おおっ!指揮官の首頂きだぁっ!!」
少女の眼前で血走った
「くっ!すみません……
ザシュゥーー!
「ぎゃぁぁっ!!」
少女が覚悟した瞬間、獣の如き
「…………み、
尻餅を着いたまま、驚いて瞳を大きく開くおかっぱ頭の少女。
「…………」
彼女の前には、先程まで
「
「…………はぁ」
おかっぱ少女の声にも無反応に、頭の後方に束ねた艶やかなる黒髪ポニーテールを
「貴様っ!ここの総大将か!?」
「よ、よくもっ!かかれっ!」
斬り殺された
「これはもう……やるしかないわね……はぁ……面倒くさ」
そして、殺気立つ敵兵士達を前に場違いなやる気の無い溜息を
「ああそうだ、フタエちゃん?……そうそう、
「は?……え、あの……」
「死ねぇぇっ!」
ザシュ!
「がはっ!」
余りに場違いな女の口調と言葉に、つい間抜けな声で聞き返す”
「
「どりゃぁぁっ!」
「やぁぁっ!」
ズバァァッ!
ドスゥゥー!!
「ぎゃっ!」
「ぐふぉっ!」
さらに斬り寄せる
「…………」
ゆっくりと唇が
「なっ…………!」
――ゾクリッ!
尻餅をついたままの
気怠い表情から一転して見せる狂気に……
背筋に冷たいものが走って固まっていた。
「ああそうね、もう少しは持たせるつもりだから……」
そんなやり取りをしている間にも怒濤の如く襲い来る敵を、
ズバァァッ!
ドスゥゥー!!
「ぎゃっ!」
「ぐふぉっ!」
「……その間になんとか手を打って欲しいと……聞いてる?」
自在に跳ねる
「あ……えと、しかし、
少し前までの
しかし返り血で赤く染まってゆく
ザシュ!
「ぐわっ!」
ドスゥ!
「がはぁ!」
無情なる刃を振るう度に……
垂れ目気味な彼女の瞳は尋常な色を無くしてゆき、
「は……はぅ」
その姿は……”別人”……”人”……”ひと”?
いや、その姿は血肉を貪る……”夜叉”
ザシュゥ!
「ぎゃはぁぁっ!」
また一人、
目の前の指揮官に……
味方であるはずの
「ひ……は……あ……」
”
血に染まった敵兵はもう何人目かも解らない。
「…………聞いてる?フタエちゃん?」
「っ!?……
我に返った
「…………あ、あの」
その後、少し躊躇した。
三方を大群の敵に囲まれた戦場。
死地に――
ただでさえ少ない兵を引き連れて、自分が城に戻ってしまっては、
その戸惑いが、恐怖心から戻ったばかりの
「…………あの、
そんな少女を察しただろうか、
「早く行った方が良いわ、だって……」
「
返り血をたっぷり浴びて
垂れ気味の瞳を細め、薄く微笑して少女を促したのだった。
第二十話「二人の鬼」前編 END
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