第61話「最嘉と陽子」前編(改訂版)
第二十一話「
カターン!
石造りの床に何か堅い物が落ちた音が響く。
――っ!?
激しい攻防戦
そこには――
「……」
腰まで届く緩やかにウェーブがかかった輝く緑の黒髪と、白く透き通った肌が美しい少女が立ち尽くしていた。
「は、
直ぐに、側に控えていた若い女性士官が黒髪の美姫に寄り添って華奢な肩をそっと支える。
「…………問題ないわ、少し手が滑っただけ」
恐ろしいまでに
「姫様……少し休まれた方がよろしいのでは?開戦からもう幾日も十分な睡眠を取っておられないのではないですか」
女性士官は主人の意を汲んでそっと離れはしたが、そう言う言葉を付け加える。
そしてその場に
――コトリ
それを司令室に設置された大テーブルの上、
――ロイ・デ・シュヴァリエ
それは、二つの陣営に別れた白と黒の多様な駒を駆使して優劣を競う盤面
「……」
深淵の瞳をした美少女は、ただ沈黙してロイ・デ・シュヴァリエの盤面を見つめている。
そう、
彼女の頭の中にはその地の地形と敵味方の陣形は勿論、その後の敵味方の動きやその予測さえも全て入っており、それをロイ・デ・シュヴァリエの盤面に反映するという彼女独特の作戦立案の方法を採る。
「
「不眠不休なのは
「姫様っ!」
明らかに青白い肌色で事も無げにしれっとそう言う主に、女性士官はグイッと近寄った。
「…………」
主に対して少しばかり無礼な行動、しかしその女性士官は……
降ろすとそれなりに長そうな黒髪を首元で簡単に
「ここにいる者達は
女性士官の臣下とは思えぬ剣幕で詰め寄る様に、その場で各自作業をしていた者達も思わず目を丸くしていた。
「
必死な部下の自身を案じる言葉に、とうとう
特異な革製眼帯で右顔半分を覆ったこの奇抜な風体の女性士官は、先任で
「では、
「…………そうね」
「…………」
「…………」
「え……と、
「いいえ!私の任務はあくまで姫様の護衛ですので、当然ながらお供致します!」
「…………」
力一杯に、それだけが自身の成すことだと言わんばかりで答える
――
―
ガチャリ
自身の私室前に控えるという
――シュルリ……
肩から滑り落としたケープを椅子の背に掛けて、滑らかな曲線の膨らみに白い指を添え、胸ボタンに……
「……」
彼女の繊細な指が次の動作を行う前に……
――っ
彼女は何か違和感を感じて停止していた。
「だれか……いるの?」
家具の輪郭が
「そこに誰か……」
ガバッ!
――っ!?
警戒し、確認しようとした瞬間、暗黒の美姫は後方から何者かに羽交い締めにされてしまった!
「な!?……何者っ!……このっ!」
グイッ!
「くっ!……んん……」
咄嗟に抵抗する
「かっ……かず……うっ……むむ…………」
そして整った
「んん……うっ」
「うう……このっ……や……」
背後から抱きすくめられ捕獲された黒髪の美姫は、為す術無く持ち上げられた
ドサッ!
少しだけ乱暴に、自らが休む予定であったベッドの上に投げ置かれた。
雑に投げ出された肢体……
少し乱れたスカートの裾から黒いストッキングを着用した太ももが露出する。
「ぶっ、無礼者!……っ!」
声を上げる千載一遇の機会、しかしこんな状況でも彼女は……
ギシッ!
「むっ!……はっ……むぅぅ……」
――た瞬間に、
男は図々しくも仰向けの
「……ん……ぅぅ!」
必死の抵抗を試みようとする
「…………」
薄暗闇の中でも、自分を見下ろす男の視線を感じる。
ここ数日は
「うぅ!……ん……」
ガバッ
「っ!」
その視線を
「むむ……む……」
少女はもう完全に制圧された虜囚だ。
後は無惨に蹂躙されるだけ……
「……」
決してそうはさせまいと、自らの純潔に触れえる人物はひとりだけと……
「っ!」
少女がその決意を実行しようとした瞬間だった。
「大人しく言うことを聞け、
仰向けに固定された
「っ!?」
途端に……
押し倒され、押さえ込まれ、上に乗られた少女の漆黒の瞳が薄暗がりの中で、一回り大きく見開かれた。
続いて
「……」
だが、
暗黒の美姫をいつでも、どう料理することも出来ると、生殺与奪を握られた相手に恐怖してそうできないのか、それとも……
――それとも?
少しの間、男の指先は少女の形の良い
「諦めたのか、お前……」
「随分と礼儀を知らない手ね、乙女の肌に」
すっかり為すがまま、抵抗を
「そ、そうか?……だがこれからだお姫様、さぁ、この後どうしてくれようか?」
「……」
「?」
しかし美姫はピクリとも反応しない。
「ど、どうした?抵抗はもう
為すがままの相手に疑問を感じた男は、ピタリとその行為を
「好きにしたら?どうせ抵抗できないのでしょう」
驚いたことに、貞操の危機にも
「い、いいのかよ?……ほんとに?」
「ええ」
「す、凄いことするぞ……」
「どんな?」
「いや、だから……その……む、胸を揉んだりとか……ふ、服を脱がせて……アレだその、色々な辱めを……」
先ほどまでの雰囲気から一転、すっかり攻守が入れ替わったかのような状況である。
「そう、ドキドキするわ」
「…………」
男は……
”俺”は……自分の下で仰向けに寝た少女の体温を感じるほど密着した状態で……
「ふふ……くすくす」
なぜか愉しげに口元を綻ばせる少女に……
「おい……
押し倒した少女にそう言っていた。
「なぁに?
そして俺に組み敷かれたままの獲物は、もの凄く愉しげに
第二十一話「
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