第53話「暗躍する怪老」後編(改訂版)
第十三話「暗躍する怪老」後編
「…………」
――
誰も居なくなり、ガランとした
「…………」
薄暗くなった頃合いにも
「…………」
唯々、広い板敷きの床に地図を広げて何かを思案していた。
――
「主よ……本当に我が
いつの間にか、部屋には確かに独りだけだった老人の背後に立つ男。
闇に溶けるように全く気配の無い黒装束の男は、逆に闇が空間に染みてできたかのように
「
「…………」
老人の言葉はあの軍議とは全く別のもので……
しかし、問いかけた黒装束の男も半ばそれを察していたかのように、老人の背後で微動だにしない。
「では、諸将が理解したように、”
「カカッ、肉を切らせて骨を断つ?”
老人は悪びれもせずにそう応える。
「…………では?」
「
「…………」
黒装束の男は、自らの主が放ったとんでもない発言にも、矢張り眉一つ動かさない。
「
「心得ております、主」
「……うむ」
忠実な
そしておもむろに傍らに寝かしていた杖を手に……
「先ずは”
カッ!
老人は杖の先で”
「次いで”
カッ!
続いて宗教国家”
「そして……”
カッ!
老人の杖先は、今度は
「カカッ!流れによっては”
老人はしわくちゃの顔を破顔させ、子供のようにはしゃいだ声を出していた。
「カカカカッ!」
「…………」
上機嫌な老人と無言で立つ黒装束の男。
「…………そこまで……そこまで必要なのですか」
老人に付き従う忠実なる影は……
「…………うむ」
老人は笑いを収め、目の前に広げた地図に再び視線を落とす。
「必要じゃ……”かの者”を亡き者にし、その後に我が大策の続きを以て、この”
「…………」
――
只黙って主の横で膝をついて
「策の第一段階は”かの者”……
「…………」
主の言うことは絶対だ。
彼にとって主は、
「…………」
――だが、彼は今回に限り、心の中でこうも思う
大国、
あの姫の才覚は、認め難い事であるが我が主に匹敵する。
近年の
そして古き良き安定を望む自身の主と、古き世の破壊と新たなる秩序の創世を是とするかの姫との価値観の違いは明白で、我が主にとってそれが決して天下を治めさせてはならぬ相手という事も……
――しかし
確かに最近の躍進には目を見張るものがあるが、とはいっても
今回の主の策に、敵に
その王、鈴原
そこまでして警戒する男なのか……
「…………」
――できないが……
彼は主である
「
「
今回の”計画”……それのための大戦を先導させるのは懇意の”
「カカッ、主には別件を任せておったからこの仕込みは知らせておらなんだの……
「……」
――だとすると……
つまり、もう一つの王位継承権を持つ有力な人物……
「…………
頭の回転の速い
「相手方には既に話を通してある、即刻下準備を整えよ!まごまごしておると他の
「……はっ!」
闇の中に溶けたのだった。
第十三話「暗躍する怪老」後編 END
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