第53話「暗躍する怪老」前編(改訂版)
第十三話「暗躍する怪老」前編
――
御三家が一つ、
同じく御三家が一つ、
そして
「既に”
「
四十八家の代表達が、ここまで戦の指揮を執ってきた御三家の面々に激しく詰め寄る。
「…………大したことでは無い。
集まった諸将の追求に、上座に座した御三家の一人である
「ほほぅ!
即座に
「そう殺気立つな、
「
同じ御三家の
「……ぬぅ」
「……ふん」
御三家とそれ以外の四十八家の面々が睨み合う構図。
そこに一人の男が立ち上がった。
「貴殿ら、少し口が過ぎるのではないか……」
男の名は加藤
四十八家の一家で、武門の誉れ高い男であるが、中々に人柄も出来た人物であった。
「今回の度重なる敗戦は何も御三家の方々の責任ばかりではあるまい。なにより
殺伐とした場の空気を配慮してか、抑え気味の声で双方を取りなすように諭す加藤
「だまれっ!加藤
だがそれを足蹴にし、それどころか仲裁を買って出た加藤
「
「ふん、口ではなんとでも言えよう、噂では裏で
「なっ!なんだとっ!聞き捨てならんぞ、その言葉!わが家名ばかりか、弟の
基本的には温厚な
――だんっ!
「!?」
「っ……」
床板を強く叩く音が響き、一同の視線は音の方向……
上座の御三家の中心に座する長い白髭を蓄えた老人に注がれた。
「……
「
言い争って頭に血の上っていた二人はその老人の背後に立つ黒い影に、黒装束の合間から鈍く光る鋭い眼光の男に、思わず息を呑み込んで固まった。
――恐ろしい殺気……
忍びの頭領が集まるこの場でも群を抜く殺気。
それがその黒装束の男から発せられていたのだ。
「落ち着かれよ、諸将よ……」
白髪頭を後ろで結わえた長い髭の老人がゆっくりと言葉を発し、その途端に老人の背後に控えた黒装束の男からも殺気は霧散する。
――
そしてそこに集う
「
――ゾクリッ!
人生経験をそのまま刻んだしわくちゃ顔の、窪んだ眼光がヤケに鋭く光る
「あの
「う、
「落ち着くが良い
老人は、同じ御三家として並び立つ
枯れ枝のような痩せた体躯と自らの波乱の人生を刻んだかのような多くの深い溝に覆われた顔……
しかしその中でギョロリと光る眼光は、その老人を見た目の
「……で、では、
今までも幾多の困難を退け、
「カカッ、戦というのは大きな目で眺めてこそじゃ、
ガッ!
「諸将よ、
――ザワッ!
諸将がその真意を読み取れずに場はざわめき立ち……
「この
「いや……それは……
聞いた
「カカッ、左様、左様……”放棄”とはそう言う事じゃろう?」
しかし老人は二人の反応など何処吹く風と笑い飛ばす。
――ガタガタッ!
「し、信じられぬ!戦わずして降伏とは……怖じ気づいたといわれるのか!ご老体!」
「
もう我慢できぬとばかりに、
――!!
ガタッ!ガタタッ!
同時に、触発された諸将の殆どが立ち上がる。
ザワザワッ!
中には、先に立ち上がった二人に感化されて
「…………」
当の老人……
「お、落ち着かれよ、各々方、
「座れ!座らぬか!」
「途中と……ではお聞きするが、
「然り!
御三家の言葉を受けても依然立ったままの
「
泣きつくような情けない顔で老人を見る他の御三家二人の視線に、老人はやれやれとため息をつく。
「
――っ!!
そして老人が口にしたのは、更にあり得ない発言……
この期に及んで
諸将にとってその言葉は
「し、暫し……若輩なる我にも解るようご指南頂きたい……
「…………」
そして、その加藤
「これは
「…………」
「…………」
うって変わって、
「しかし、それでは
加藤
「なに、これも我が兵法のうちじゃよ……カカッ、奴らをこの
――っ!
老人の深い溝の奥で眼が光り、諸将は思わず息をのむ!
「二度と這い上がれぬ闇に落としてやろうぞ……」
――
―
後はもう簡単だった。
誰もが認める
そして、
以上の事から、逆らうことが出来る者などもう居るはずも無かった。
第十三話「暗躍する怪老」前編 END
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