第112話「動乱の幕開け」―臨海2―(改訂版)
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第七十二話「動乱の幕開け」―臨海2―
――元
「では、そのように進めます」
落ち着いた感じで体格の良い
人物は、
「兄上、そろそろ……」
そして後ろから声をかけたのは、
「そうだな……では、早速”
頭を下げて去りゆく二人の武将を見送るのは……
「宜しくお願いする、城主の
黒髪を尻尾のように後ろで結わえたスッキリした顔立ちの青年、
「これで
それまで
そして、その
「少し休まれてはどうですか?あまり睡眠も取られておられないようですし……」
部屋に残った
彼が席に着いた会議用テーブル上にコトリと香ばしい湯気の上がるコーヒーカップが静かに置かれる。
「
――
前
であったはずだが、現在は
「
「……」
応えて恐縮する
「す、
「そうですね、
「うっ!……いえ……あの……そういうつもりでは…………すみません……」
珍しく軽い皮肉っぽい冗談を言った
「いや、すみません。冗談です……申し訳ない」
そして
冗談が通じなかったのは
真面目を絵に描いたような
やはり馴れぬ事はせぬものだと、
だが、今回のこの人事には政治的意図もあるだろう。
造反したばかりの人間を再びその地の守備指揮官統轄の重要職に置く。
それはあくまで
そういう風に家臣団だけでなく近隣諸国にまでも示す事により、未だ
同様に
つまり、この先の、第二、第三の反乱の芽を摘む為の処置であり、他国に付け入る隙を与えない為だった。
「そうですね、
勿論、昔から
神算鬼謀の策士、稀代の名将、支配者に相応しく合理的思考を持つ
我が誇りに思える唯一無二の主君なのだ……と
「
「ん?ああ、何でしょう?」
主君の事を考えていた
「いえ、とても良い顔をされておいででした、
「……」
さっきのお返し……
ではないだろうが、
「そういえば、
そして
「ん?……”
会議室で
それは破損の無い完全な状態で黒き鞘を輝かせていた。
――
―
この時より遡り、
「たく……相変わらず人里離れた山奥だなぁ
道中散々に文句を垂れながら目的地に辿り着いた俺。
「人付き合いに多少難がある男ですからね、仕方がないでしょう」
対して
ここは
”
――
「いやぁ、先に連絡は貰ってますよ、
滅多に人の寄りつかない山の
俺よりもひとつ年下の男で名は……
「人手が無いってお前、
十七歳という若さでは弟子が無いのは仕方無いが、家族も妻子もいない、独り暮らしで人付き合いが大の苦手の変わり者……
「ちょっ!酷いな、
「
「あーー!あーー!言った!妄想って言った!てか、
ボロ家の玄関口で大騒ぎする鬱陶しい男。
その名は……
「
「そうそう、流石、
「彼女いない歴イコール年齢である彼の悲しき妄想も大目に見るのが人としての情かと」
「ないーーっ!!いやっ!ぜんっぜん解ってない!てか哀れまれた方がより精神的ダメージ大きいんですけどぉぉっ!!」
――相変わらず五月蠅い男だ……
この男、この若さで”
というか、我流で少しばかり風変わりした刀剣を打つ。
この男が天下の名刀に引けを取らない逸品を創造する力量を持ちながら全くの無名なのは、こんな山奥に引き籠もっているからだ。
なんでも過去にちょっとした
とにかく、この男、俺の”
「と・に・か・く!俺には彼女どころか”
――はいはい……たく、ていうか一度も見たこと無いって……姿形も欠片もなぁ
俺は興奮する男の肩にポンポンと手を置いて話を進める。
「分かった分かった、それでな……」
こういう妄想人間は否定するより適当にあしらって話を進めるのが吉だ。
「あれっスよ、
「ざっけんなっ!ゴルラァァ!!」
ガンッ!
俺は小突いていた。
この
「ちょっ……なにを」
この……
”
「お前言うに事欠いて
「いやいや、
妄想男は小突かれた頭を抑えながらも身の程知らずの持論を引っ込めない。
「……ならそのプラチナ美少女は今どこに居るんだよ、”
「いや……それは、今は任務で暫くは……」
俺の質問に男はあからさまに目を逸らす。
「にんむぅぅ??どんな仕事してんだよ?」
「う……その……えと……世直し?」
「……」
「……」
俺と
「……あの?
「……」
――聞いた俺が悪かった
――モテないとは、こうも悲しき生き物に成り果てるものなのか……
俺はそっと非モテ男の肩に両手を添える。
「兎に角だ、俺と
「無かった事になってるし!俺の彼女話っ!!」
「お前なぁ……俺達は忙しいんだ、非モテ男の妄想に付き合うほど暇じゃ無い」
「だから妄想って言うな!
――忙しい男だなぁ……
俺は分かった分かったと仕方なく頷き、
「……たく、本当ッスよ……超、超、超、超美少女なんスから……」
シャラン。
ブツブツ言いながらもそれらを受け取って鞘から抜く
「……」
そして何故かそのまま固まる目前の男。
「……るか」
「は?」
ボソリと呟く非モテ男の聴き取り辛い言葉を俺は聞き直す。
「できるかぁぁーー!!真っ二つやん!これ真っ二つに折れてるやん!!」
「……」
そして何が悲しいのか涙交じりに叫ぶ男。
「どうやって破損したんですか、
そして多少落ち着いたかと思うと聞いてくる。
「いや、照れるな、だがどちらかと言うとその腕前でなぁ……」
「腕前で?」
「ああ、腕前で
俺はテヘペロと可愛らしく舌を出す。
「”
――ほんと五月蠅いなぁこの男……と言うかその”妄想嫁”は誰も認めていない
「近日中に戦があるから出来れば大至急だ」
「あ、あんたってひとは”しれっ”と…………」
「
そして
――スッ
「お?なんだこれ」
再び出てきたと思ったら無言で俺に二つの長い布袋に入った物を差し出した。
「
「……おおっ!!流石!名刀鍛治師、
俺は本当に感心しながら、懐から支払いのため用意していた
ジャラリ……
「もういいっスよ、
俺の謝礼を受け取りつつ、
「今日はホント厄日ッスよ……変わった刀を作れって言う無口で変な男は訪ねてくるし……」
去り際に一言そう言って”引き籠もり
「変な男?」
「……」
俺と
こんなド田舎の山中に
「ああ、なんでも
そして
第七十二話「動乱の幕開け」―臨海2― END
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