第111話「動乱の幕開け」―臨海1―(改訂版)
↓”暁”世界地図その3↓
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第七十一話「動乱の幕開け」―
様々な人々が行き交う活気ある往来に立つ豪華な商家に旅人風の男が共を一人連れ、訪ねてきた。
その男は小間使いに軽く挨拶するとこう言った。
「
旅人の来訪を受けた小間使いは暫く男を門前に待たせた後、少し時間が経った後に慌てた様子で出てくると、そそくさと
――宗教国家”
この商業都市の豪商が一人で在り、商業組合の筆頭でもある”
「長旅お疲れ様でした、
入室した男が会釈をしてから腰を下ろすまでの一連の行動を見終えた後で、既に部屋中にて、これもまた上座を避けてその前の右側……
つまり、今さっき坐した
「いえ、こんな姿で失礼……少しばかり窮屈だったものでね、
「……いいえ、ボチボチですよ」
そして、それを受けて、こちらも再び頭を下げる五十代半ばほどの商人は、目前の来訪者の後方を少しだけ興味深い視線で見ていた。
「ああ、そうだった……」
端正な容姿の旅人はその視線の意味を直ぐに察する。
それは彼の趣味と実益を兼ねた護衛兼秘書と言える存在で、
それが今回に限って、むさ苦しい黒ずくめの男……
直ぐに商人の視線の意味を察した
「……承知」
黒いマントと雨でも無いのに頭にはマントや鎧と同じ黒い三角の笠を身につけた風変わりな男。
その黒笠男は
「この男は
商家を訪ねて来るには多少違和感のある鋭い目つきの男に興味の目を向けていたこの家の主人、
「これはこれは……
その説明だけで何かを察した
「護衛して頂いておる
その命令に従い、小間使いは直ぐに姿を消して、再び現れた時は一人の男を連れて部屋に入ったのだった。
「……」
その男は、成人男子としては身長は低い方。
しかし衣服の上からでも分かる、大胸筋、上腕二頭筋の異常な発達と短く屈強そうな首といい、筋肉達磨という表現がぴったりとはまる小男だった。
「やぁ、
厳つい表情で
「で、準備は勿論整っているのだろうね、
機知に富み、行動力に優れ、人心掌握に精通した
時に温和に時に非情に……
工作任務から外交の下準備までそつなく
「勿論、既に万端整っておりますとも。後は
笑顔で応える
宗教国家”
「して、その
「ああ、こっちは
直ぐさま
「なるほどなるほど……私共にも調査依頼されていた”魔眼の姫”関連の……」
――っ!?
そしてそこまで言いかけて、
「……いや……なにも」
彼ほどの海千山千の大商人でも蒼白になる冷たい気配。
それは相変わらず笑顔のままの
「
「……」
些細な事にも目端が利くのは商人たる所以だろうが……
「我が主は情の深い名君ではあるが……時に”このカミソリ”よりも何倍も切れる……恐ろしい御方だから」
それを見届けた”カミソリ
――
―
――”
「首尾は……上々のようだな」
俺は読み終えたばかりの文に二、三の印を書き込んでから、肩に留まっていた
バサッ!バササッ!
抜けるような晴天に、木の葉の如く幾度か舞ってから――
少し小振りではあるものの歴とした猛禽類、大空の覇者は悠々と眼下に海原を見下ろして飛び立ってゆく。
「……
そして……隣にて、遠慮がちではあるが確実に何か言いたい事がありそうな顔の、黒髪ショートカット美少女が俺に声をかけてくる。
「
俺の応えに少女はゆっくりと首を横に振った。
「
”そうでは無い”と再度俺に問いかけようとする
「
”
「で、ですが、
何度も何度も……事ここに至ってまでも、繰り返される彼女の確認。
俺の決定に
「……」
ジッと覗き見る俺から僅かに視線を逸らす美少女。
――どうもな……そういえば
と、一応、俺なりに心当たりを
大体、戦の規模の大きさからドッシリと構えて矛を交える事になるであろう、
味方や奪取する領土の被害を極限まで最小に抑える……
なにより勝利するためにも今回の作戦は”兵は拙速を尊ぶ”を地で行か無ければ成らない。
”閃光将軍”の異名通り、
――それを念頭に置いての
「
「それは……確かに……ですが……」
「?」
いつもより全然歯切れの悪い
――やはり
とか、一瞬、またも先程の考えが
俺は俺で、実はその本当の理由を
それは……
”魔眼の姫”に関する俺の懸念だ。
近代国家世界での交渉の折、
それもあまり良い感じでは無く……
あの時、
――
自分が興味の無いことにはトコトン無頓着な
そんな彼女だから真相は分かりかねる。
「……」
まぁどちらにしても……”魔眼の姫”という事案は今や俺の中では最重要案件だ。
そんな最深の注意を必要とする状況で、”魔眼の姫”たる序列三位の”
――
あの未知の脅威相手には、慎重に慎重を期しても慎重すぎると言う事は無いだろうしな。
「あの、
考えに浸っていた俺に、
「……」
――ええと……どういうことだ?
どちらの戦が重要か?
無論、そんなのはどちらも重要に決まっている。
――というか、なんだその質問は……
俺は
「い、いえ……ですから……功績の大小と言いますか……その……私と……あの……
そして、そんな俺を見上げる黒髪ショートカット少女は、
持ち前の大きい瞳を潤ませながら頬を染めて……
「あの……いいえ……なんでも……ないです」
言葉尻を”ごにょごにょ”と消え入るような声で濁して完全に
「……」
――全く解らん、なんなんだ?
俺は
「…………
ガチャ!
――!
と、その時、船内へと続く扉が開かれ、
「先生、もうすぐ予定の海域に到着致します、陣形の最終的なチェックをお願いします」
それは参謀の
「……そうか、わかった」
タイミング悪く聞きそびれたが……
「……」
――まぁ、多分この様子なら俺が聞いても答えなかっただろうな
俺はそう答えを出し、そしてその小さな疑問は特に問題にせずに忘れた。
「そうだな……これから取りかかる二つの戦、これらが我が
すっかり気持ちを切り替えた俺は、自然と腰の愛刀、
「……はい、我が君!」
「全力を尽くします!」
――
英雄に事欠かないこの群雄割拠の戦国世界で、それら超大国を
――
俺は海の向こう、そういう戦国絵巻の堂々たる舞台である
「さぁ、前人未踏の頂きへと挑んでみようか!」
第七十一話「動乱の幕開け」―
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