第110話「動乱の幕開け」―新政・天都原―(改訂版)
↓京極 陽子のイラストです↓
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第七十話「動乱の幕開け」―新政・
同じく自領である”
そしてこの地は
「
「
口々に出兵を催促する部下の声に、
男はウンザリだという
「
上官のその態度に、せっついていた一人の部下が立ち上がる。
「それはあくまで本軍としては動かぬという方針っ!!我らが地からは
しかし、興奮気味に力説する部下の姿にも、この地の領主である男は変わらずやる気無い顔で、出兵を指示する気は毛頭無いようであった。
「……」
――出世欲かよ……確かにそれは俺にも大いに在る!……が、だ……
やる気無い領主は部下の意図に同意しながらも乗り気でない。
その男は基本的には締まりの無いニヤけ面で緊張感も無い。
だが戦場で時折見せる鋭い眼光は、それに反して戦士そのものでもあった。
「
部下は鼻息も露わに再度、出陣を迫って来る。
「ばぁか、なに焦ってやがんだ、お前?先日、
ひとつ前の大戦……
”
寡兵であるにも拘わらず、果敢に城を攻めて僅か数時間で制圧に成功すると言う離れ業をやってのけた。
「
ニヤけ顔だが眼光の鋭い男、
つまり、この”
既に
あくまでも軍の将校で、“十剣”という呼称は唯の名誉にすぎないのだ。
だが今回、本人も予期せぬ大手柄で領主という地位を新たに得た
そういう大出世だった。
そして更には……
今回、部下が言うように
「
その手柄の大きさなら、貴族階級としても爵位が上がる可能性は高い。
――そうすれば、それこそ前述の二人との差も幾分縮むだろうが……
と、そんな邪念が湧かない男ではない。
つまり、欲深い
――だが、しかし……今回の
それはあの”
――ならやはり……仕込んでいたのだろう……な
黙り込む
そうは言っても野心多き男は、未だ心のどこかで手柄を諦めきれずに付け入る隙を再確認してしまうのだ。
――いつ?
――我が
――それとも……
――いいや、あの手並みの淀み無さなら、
――城を放棄した時……あの空城の計で一部を燃やした時からかもしれん……
その方法には到底考えが及ばないが、城攻略の見事さからそう考えるのが妥当で、そんな恐ろしく周到で狡猾な策士にあえて挑むなど……
そして、やはり何度思考しても、
結果、なるべく楽をして出世するのが信条の
「
「
だから
「
決断を迫っていた部下達は、一斉に誰だ?というように顔を見合わせる。
その光景に
「おいおい、お前らなぁ……戦場での情報の逐次更新は必須だろ?それを堂々と怠るってぇのは、揃いも揃って自殺志願者の集まりかよ」
「
「う!確かに、そういえば……」
薄っすらとだが軍内に流れる噂を覚えていた部下の一人が手を打つ。
「し、しかし、その
「ばぁか……はぁ……マジかよ……
――っ!!
だがその一言で、見苦しくも未だ自らの意見に
「た、確か、そ、そういえば、何年も前に……
「
そしてようやっと、その真実に思考が追いついた
「……」
――たく……無能者共め
「それからなぁ、その
「なっ!!なんとっ!」
「あの……
そして
「……」
――
それだけ”
更には西門で数倍の敵軍、
極めつけは
最強国
あの”魔人”
とんでもない手柄の数々だ。
一つの戦で成すには馬鹿げているほどの手柄。
これでは全くの無名だった”
――ドン
一斉に浮き足立つ部下達を前にして、
――その名が畏怖され、ともすれば一人歩きしている現状では、それを相手にして
「……たく、どうせこれでは、
さも不満そうに、プイと横を向いたのだった。
――
―
「姫様、それで
銀縁フレーム眼鏡をかけた、出来る秘書風美女の問いかけに、
「そうね、なにが”私達もできる限りの支援は用意しましょう”だ、”今回は軍事的には役に立ちそうも無いけど”とか言って、”
問いかけた銀縁フレーム眼鏡の美女、
「あの稀代の智将、
「どうかしら?あの”喰わせ者”の本心なんて私にも分からないわ」
部下にそう答えながらも、
「では、もしかして”
「そうね、そちらは完全に
――彼女らの言う”
という事であったが、実のところそれは話半分だと
それは果たして彼女の読み通りで……
今回の
――”
敵がその”名”を過度に警戒するあまり反撃を躊躇し思考に偏り無駄に過ごす、逆に
”
名に怯えた敵が実際には無い脅威に無為な時間を費やして勝機を逃す。
それは
「個人の名を以て行う”
”
そして、今回の”
あの大戦時に敵前では終始顔を包帯で覆っていた”
――そして流石は”
”空城”に二の足を踏まぬほどの愚者の存在の可能性……
それは彼の想定内で、そういう人物を
しかしその火計は見た目の派手さとは逆に燃やすのは門の一部のみ。
急造で仕上げるには人材も資材も時間も足りなかったのであるからそれは仕方が無かったのだが、見事にそれを
その派手さ故に、その時も、その後の
その後に混乱に乗じる形で
そして――
――
”喰わせ者”
「だから
「
そして
「
「ええ、
「確かに
更に
「そうね、
”私の為”と”仕方無く”更には”渋々”を強調する所は、
「……けれど
「……えっ」
そして、口調を変えた
「ふふふ……”王覇の英雄”……
「……ひめ……さま?」
ガラリと雰囲気が変質する”暗黒の美姫”
それは恋慕に浮かれる少女の熱い瞳では無く、また愛する者を包む穏やかな瞳でもない。
「……」
そう……それは……
”
第七十話「動乱の幕開け」―新政・
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