第100話「二人の美姫」後編 (改訂版)
第六十話「二人の美姫」後編
「何を勝手に話を進めているっ!保証は?そんなあやふやな根拠でお嬢様を危険に晒すなんて事は出来ないっ!
「
俺に食ってかかる目つきの悪い少女を
他の二人と違い、少々感情を抑えきれない様子の乱暴な口調の少女。
それもこれも主人たる黄金竜姫を慕ってのことだろうが……
「うぅ……すみませんお嬢様」
――しょんぼり項垂れる少女の名は……確か、
前髪をキッチリと眉毛の所でそろえたショートバングの髪型。
小柄な体型であどけなさの残る顔立ちの少女は、客観的に見て可愛らしい部類に入るはずだが……
重度の近眼の様に眉間に皺を寄せた表情のおかげで、それとは対照的な無愛想で目つきの悪い少女という印象が強烈に残る。
そして、どうやら彼女は主君の護衛も兼ねた侍女という立場らしい。
「お前が出てくると色々ややこしくなるから黙ってろ」
「
「……」
――言われてみれば確かに、この目つきの悪い少女からは”武”の匂いがする……が
「
「なんだ?インチキ機械人形が無い今の貴様が私とやるのか?
「科学をインチキっていうな!この小娘」
――あと、
「小娘だとぉぉ!私の方が年上だっ!大人の色気ムンムンの……」
「はぁぁ?寝言は寝て言えよ、
遂には取っ組み合いを始める二人。
「……おいおい」
俺は場も弁えずじゃれ合う
「
――そうだ、
――その参謀が”妖怪”
あの野望の塊で
最早、失脚同然の
それに辺境の小勢力である黄金竜姫などは既に有名無実の張り子だと。
実際、俺達がこの先、
と、影ながら応援さえされる立場だ。
「……」
自分で考えていて多少情けなくなる話ではあるが、
つまり俺の戦略の基本設計は、相手のそういった思惑を利用する形で進めるものだった。
「
予想外の少女の乱入で、少しトッ散らかっていた場に、暗黒の美姫による澄んだ声が通る。
「そうだ、この機に俺達は
俺は
「……確かに、それが一番現実的ですね」
黄金竜姫、
――
同じ策を披露しても、その影響力の歴然とした差に俺は心中でうんうんと頷く。
「そうね……私に異存は無いわ」
そして、その稀代の名策略家、”
――お心遣い痛み入るねぇ……
「俺も異存は無いが……俺達の
「無論する。同盟国の強化は今現在の急務だからな」
というか、元々から
今回の
そこから
――そういう約束だったのだ
「けど、お前……
「四日だ」
――?
「明日世界が”
「……」
決定事項のように自信満々な俺の言葉に周りは黙り込み、
「まぁな、
「”りょうかい”じゃないだろっ!?ばか?バカなのかお前らは!そんな簡単に事が運ぶなら大軍は要らない!こんな
再び俺と
「きっ……ふぁ!きしゃま……ふぉっ……」
「ええい、お前は駄々っ子か!…………すまない、鈴原続けてくれ」
小柄な割にバイタリティー溢れる少女、
「と、とにかく、再び”戦国世界”に切り替わってから四日目以降、つまり、さらに次に”戦国世界”に切り替わった時点から
改めて確認する俺の問いかけ先は
「……」
――美しい……美しすぎる濡れ羽色の瞳
その宝石の中で波間に時折揺れるように顕現する黄金鏡の煌めき……
――おぉっ!
やはり魔眼の姫の
「ええ、鈴原
「……ふぉ……お、おじょうふぁ……まぁーー!!」
美しき主君の言葉に、まんま暴れ馬だった目つきの悪い少女はガックリ項垂れ……
そして、肝心の
「……」
その光景を坐したままで腕を組んで眺めていたが、顔色を覗う俺と目が合うとそっと視線を外した。
「そうね、私達もできる限りの支援は用意しましょう……とは言っても、今回は軍事的には役に立ちそうも無いけど……」
そして
――まぁなぁ、現状で
今回の戦で疲弊した
「……感謝します、
それらを十二分に察した
――なんだかなぁ……
俺はどうも”しっくり”こない従妹同士に多少のじれったさを感じ、ついお節介をする……
「えと、あれだ、”様”とか”殿”とか取りあえず止めにしないか?俺達は歳も近いことだし、当分は一蓮托生の仲な訳だし……」
そう言ってチラリと
「ん?……ああそうだな、俺も鈴原の事は鈴原と呼び捨てだしな」
独眼竜は即座にそう機転を利かした応えを返し、賛同の意を見せた。
「……そうです……そうね、
俺や
「……」
「……」
「……」
「ええ、お好きなように……
俺と
「ええ、ありがとう!
そして
――か、可愛いな……
純粋でど直球な笑顔に、思わずドキリと心臓が跳ねる俺だったが……
「
――っ!
小声で俺の名を呼ぶ
「……え……と……コレは違う」
よりにもよって、
「後で私の部屋に来て……
そうして、俺にしか聞こえない小声で、俺の危惧する内容とは全く違った言葉を囁いた
第六十話「二人の美姫」後編 END
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