第100話「二人の美姫」前編(改訂版)
第六十話「二人の美姫」前編
「
俺の前で優雅に微笑む、
――
腰まで届く緑の黒髪はゆるやかにウェーブがかかって輝き、白く透き通った肌と対照的な
――さすが
彼女以外全てを無価値に貶めるほどの美貌を所持する暗黒の美姫は、
「
――対して”
艶のある長く素直な黒髪がなんとも美しく、軽く会釈した時に眉にかかった前髪がサラサラと流れ輝いて優雅にゆれる。
透き通った透明感のある肌と整った輪郭、可憐で気品のある桜色の唇。
高貴さと清楚さを兼ね備えた比類ない容姿の美少女だ。
「……」
その
――あっ
その時俺は一瞬で察した。
――”
きっと
実際、
俺はチラリと、目前の
「……」
――なるほど……
どうやら俺の見る限り、”
言葉の通り、運命により敵国同士となった離れ離れの血を分けた身内……
その
――たく……
――自分だって最初の挨拶の時に”我が居城”とか”かました”クセになぁ……
つい数時間前まで
新たに”新制
出席者は……
新制
正統
――そして……そのどちらの勢力でも無い俺だ。
「……では、条約の手続きを」
ごく簡単な挨拶が済んだところで、俺同様に
「……」
――まぁそれはともかく、これほどの美姫達が……ねぇ
間違い無く”
俺はその眼福といえる光景に、自らが画策した結果とはいえ心中で小さくガッツポーズをしていたのだ。
――ナイス俺!グッジョブ!
「……」
「……」
そして対面で……
”黄金竜姫”と呼ばれし
――”さっきの勝負、今回は引き分けだ”……と
甲乙つけがたい美貌の二人。
俺はそんな感想を抱きつつ、条約文書に目を通す”黄金竜姫”をここぞとばかりにマジマジと見ていた。
「……」
――澄んだ濡れ羽色の
その宝石の中で波間に時折揺れるように顕現する黄金鏡の煌めき……
神々しいまでに神秘的で印象的な
――間違い無い
大方の予想通り、
――”
「……条約内容は理解しました」
「
「……」
「……」
一瞬、絡み合う”黄金”と”暗黒”の
漆黒のそれは、一言で言うなら”純粋なる闇”
恐ろしいまでに
黄金のそれは、澄んだ濡れ羽色の波間に時折揺れるように顕現する黄金鏡の煌めき。
神々しいまでに神秘的で印象的な”黄昏”に染まる黄金の
不世出の美姫二人による至宝の
その一瞬、場は静かなる緊張感でまるで時が止まったかのようであった。
「ええ、異存はありません」
「そう……」
唯々向き合って座っているだけなのに……なんて美しい空間なんだ。
俺も、その他の者達も多分同様にその場に憧憬の視線を……
――ガッ!
「うぉっ!」
”
――っ!
――!?
そして、俺の上げた無様な悲鳴は悪い意味で場の人々の注目の的だった。
「うっ……いや、あの……」
皆の視線が痛い……
いや、何故このような事態になった?
それは……
”黄金竜姫”の美しく整った桜色の唇がそっと動いて肯定を示し、その仕草に思わず
――そう、何者か……
「……」
大仰な椅子に腰掛けたまま、何食わぬ顔で背後に立つ俺の
――
この場の状況と空気では、俺は真犯人の名を上げることも出来ず、痛みに
「……あの?」
「後はこの”
整然とした姿勢で座ったままの恐ろしい美少女は、不思議そうな顔をする黄金竜姫と
――あ、悪魔め……
「鈴原……様?方々に早く説明を」
恥ずかしさと痛みと……
俺は憎々しい視線を目前に鎮座した暗黒姫の後頭部に向けていたが、同じく
――ちっ……誰にもバレずにこんな器用な事が出来るなんて
”白鳥”……優雅に泳ぐ美しき鳥の代表たる白鳥も、水面下ではバタバタとヒレの足を忙しなく動かしているという……
「鈴原様!方々がお待ちです、お早く!」
「……っ!」
更に俺を急かす、顔面の右半分をほぼ全て隠した巨大眼帯女。
女は一応これが正式な場所だと言う事で、他国の王たる俺に様付けで言葉の上では丁寧に対応してはいるが……
「……」
しかし俺はしっかり聞いていた。
――”貴様、早くしろっ!首から上が無くなるぞ!”
と……
その女が物騒な脅し文句を小声で囁いたのを。
「す・ず・は・ら・さ・まっ!!」
「うっ!解ったって……はぁ……」
俺はなんだか色々と諦めて項垂れ、そのまま
「……」
二人の美姫が挟むテーブルの横に、これ見よがしにケンケンで進み出るが……
「ふっ……」
――この……意地悪い笑みさえこんなに可愛く無ければ!……くそ……
「ま、先ずは自己紹介だが、俺は
心中複雑ながら、確かに話を進めないといけないと、若干左右のバランス悪く立って自己紹介した俺に、二人の美姫だけでなく場の全員が注目する。
「取りあえず現状、
――
場の面々は沈黙で肯定を返していた。
「そして”
俺はテーブル上に”
「“
俺は”
「我が
――
俺の言葉を受けて難しい顔で地図を睨む面々だが、やがて黄金竜姫の後ろから一人の男が半歩ほど前に進み出る。
「つまり……
言葉の主は
「しかし……それはつまり大国二国の挟撃に晒されるという事でもあるのでは無いだろうか?東西から押し寄せられたら
更に、
「……なるほど、尤もな見解だ」
俺はそんな二人の意見を受け、地図上の指をそのまま西の
「だが、俺の予測では
「……」
「むぅ……」
俺の言葉に二人は微妙な表情を見せながらも反論はしなかった。
「なら、話を続けるが、
「まてぇぇーーいっ!」
――っ!?
そのまま説明を継続しようとした時だった、
第六十話「二人の美姫」前編 END
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