第99話「怪人」後編(改訂版)
第五十九話「怪人」後編
「
この時、俺は……
ただ、俺の右足の”呪い”が……
同種の”呪い”に蝕まれる身として、俺には考えるだけでゾッとする話だった。
「”
そもそも俺には、理解出来ない超常現象みたいな事柄に構っている暇は無かった。
例えそれが自身の右足のことでも、解決策の手掛かりさえ見つからない事象故に放置していた。
「私が受けた”魔眼”の能力喪失は日常生活に別に害は無いけど、
「そうだったのか?……あの包帯グルグル巻きはちょっと前に
「……?」
俺は呟き、
「い……や……ちょっとまて?……あれ?」
「……
急に様子が変わる俺に、目前の美少女は不審な視線を向けていた。
「そ、そうだ……めぬき?……
俺は少々混乱していた。
「
「俺、会ってるんだよっ!!それも最近!くそっ、なんで今の今まで……」
「ちょ、ちょっと
――何故だ!何故今までそれに結びつかなかった!
「そうだ、性別も年齢も似ても似つかない……が」
――”不自然に顔を覆い隠した怪しい人物”
共通点はそれだけ……
たった”それだけ”なのに俺は、なんの根拠も無くそう確信出来る!
なのに……
今の今まで”記憶と思考”が全く繋がらなかった!
不自然なほどに……
「
「歴史学者?」
「あぁ、名乗って
理由なんて無い、ただ、そう思える。
「その……
「どこの国の者でも無い、農民でも商人でも兵士でもない、全くもって時勢に関与しない
その時の”
「”
「”
そして俺も”そこ”が気に掛かる。
――アナザーワン……”娯楽人”?それとも人間世界とは関わりを捨てた”世捨て人”?
自身は
「”
暗黒のお嬢様はその名が特に気になるようだ。
「名の通り、”生き馬の目を抜く”って、
世捨て人的な人物は、よくそういう”へそ曲がりな名”を用いて自身を騙る。
「そうね、でも私には別の推測もできるわ」
「……」
「例えば”
――幾星霜を経ても、どんな場所でも、お見通しってか?
「まさに”傍観者”。奴が言うように何者でも無いアナザーワン……益々、世捨て人染みてるって訳だな」
ご大層な名付けに呆れ気味の俺だが、暗黒の美姫は続ける。
「そして”
――っ!?
「盗む?奪還?一体誰から?おい、
暗黒の美姫、俺が知る”魔眼の姫”の唇から飛びだした”
「……」
そんな俺を眺めて、”
「
あの不審人物が、あのミイラ男が、俺達が過去に会った”布袋を被った幼女”ならば……
――なにかが、うっすらと繋がってくる……
気の遠くなるような大昔、世界を破滅へと導く”十二の邪眼を持った魔獣”を封印せし”戒めの指輪”
名称不明の勇者が災厄の魔獣”バシルガウ”を封印するのに使ったという”
――至高の黄金と苛烈なる紅蓮が重なる時、地上は焦土と化し
――聖なる明光と清らかなる青が
――斯くして、深淵の底に何をも見いだせぬ愚者は
”
気の遠くなるような大昔に世界を破滅へと導く、十二の邪眼を持つ魔獣を封じた”
そして”
宝石で飾られていないシンプルなリングは、そのものがそれぞれの物質で構成されていて、五対の指輪には序列がある。
序列一位……
序列二位……
序列三位……
序列四位……
序列五位……
更に指輪自体は存在しないが、序列外に”
”
――”
つまり、指輪がそれぞれ”魔眼の姫”の瞳を指すのなら、
五人で五対の指輪、プラス序列外の指輪は存在しないという”
それらを合わせて合計十二の魔眼。
これはつまり……行き着く先は……
それ以外考えられない。
名も無き英雄は魔獣から十二のうち、奪った十の邪眼を指輪に封印したという。
「
「……ええ」
「なら、それを阻止しようとするのは当然”
そこまで捲し立てた俺は、相変わらず他人事のように落ち着いた少女に思わず毒気を抜かれて言葉を止める。
「ふふ……あくまで推測でお伽話かも……よ、
「……」
――歴史?お伽話だろう?
それは、俺がこの件にずっと抱いていた考え方だった。
「現実味が出てきた……あんな”
――そう、”
「
俺はあの時のミイラ男を思い浮かべ、今更ながら背筋が寒くなる。
「あれはともすれば”
「
流石は
だが実際にあの男を目の当たりにしていない分、俺より危機感は薄弱だ。
「とにかく!”
「ふふ、ほんと心配性ね、急にお伽話に興味を……」
「
俺はそう言うと同時に踏み込み、暗黒の美少女の細い手首を掴んでいたのだった。
「……」
勿論、興奮のあまり”つい”だったが……
「そうね…………ありがとう
深淵の瞳の美少女は、
すっかり落ち着いた様子を見せる少女の美しい魔眼は俺を優しく見詰める。
「…………はる」
「……さい……か」
自然と俺達のシルエットは……そっと重なり……
――コンコン!
「っ!」
「ぁ……」
かけた途端、無粋なノック音でお互いが飛び退く様に離れたのだった。
「姫様。お待たせ致しましてすみません」
「え……ええ」
「それと……
――
―
大広間を急造の執務室に仕立てた部屋に、俺と
「先ずは、この度の我が姉の失態に対し寛大な処置を賜り
――そうだった、前に触れたこの
それは、この
それぞれ本名は、
「そう?……でも今は少しだけ赦したくなくなったかも」
「え?」
「?」
そっぽを向いた暗黒の姫様は、そんな子供っぽい事をボソリと呟く。
「おいおい……」
――気持ちは解る、俺も……だが、それは完全に八つ当たりだ
困ったように俺を見る二人の
「まぁ、それはともかく、先方も既に準備をしているだろうから、
「……」
そして困ったお嬢様は、今度はそう促す俺に恨めしそうな瞳を向ける。
それは先程まで俺達が気にしていた件とは別件の不機嫌さだ。
――いや……俺もアレだぞ、その……久しぶりに
「んんっ!」
希に見せる
俺と
「
そして俺は
それに言及して釘を刺す。
「解っているわ、ちょっと抵抗してみただけよ……状況に
――おいおい……嫌がらせって……
そして、そんな可愛らしい?反抗期を見せた後に、暗黒の美姫は
――
―
「……で、
急にガランとした感のある急造執務室で……
再び残った執務を続ける前に、一度気分を切り替えようと取りあえず残った
報告ではこの
なのに、
俺は今更だが、その辺の経緯がちょっとばかり気になっていた。
「あ、はい……隙を見て逃げて参りました」
――だろうな、状況的に……けど、
「
さりげなく聞いてみる。
「ふふ、
――勿論らしい……
「
そしてハッキリと、
「なるほど、一流の
「嗜みです」
「なるほど」
「……」
「……」
――な、わけねぇぇっー!!
「
「い、いや……なんでもない」
「はぁ?……そうですか」
――”しれっ”としやがって……この得体の知れない
「
そして机の上に積み上げられた書類の山……
既に最初の五分の一ほどにはなってはいるが、それに視線を移して
「いや、それよりも、
結構ハードな任務直後、俺はそんなことはおくびにも出さない女、
「はい、お心遣い感謝致します。ですがお気遣い無……く?……
予想通りというか、そう言った返事が返ってきた後、彼女は俺の言葉に入っていたその人物の名に引っかかった様子だ。
「
――多分、縄抜けの時に……
俺は
それが先程の話と結びついたのだ。
「……」
暫し俺の顔をマジマジと見た後、忍者
「流石は
少し驚いた
第五十九話「怪人」後編 END
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