第101話「紡がれる”想い出(かこ)”とその先の”試練(いま)”」前編(改訂版)
第六十一話「紡がれる”
「
――と
行き成りな発言の言葉の意味するところは至極単純明快。
血で血を洗うこの戦国世界で、
騙し討ちと裏切りが横行する非常な戦国世界で、
他人のために自らに
そんな酔狂な馬鹿者に生きる隙間などないという事。
「
――で、俺は答えた。
「その言葉は女として受けるには合格点だけど、この世界の男としては不合格だわ」
――こういう女だ
「あの時のお前は受け入れただろう?満更でも無かったように見えたし……」
「私には利益のある事だからよ、私の目的……”この世界を統べる”ためには助かるから
――”献身”……”利用”の間違いだろう?
とはいえ、いつになく彼女は挑発的だった。
”攻撃的”と言い換えても良い。
「まぁな、だがそれは俺の意志だ。別に他人にとやかく言われる……」
「”戦国世界”では致命的なのよ!私がもし
俺の言葉を遮るように
「……」
「……」
沈黙して見つめ合……いや、睨み合う二人。
「
だから俺は踏み込んだ。
真意を確認するべきだと思ったからだ。
「……私なら……今回、私が
「……」
その盤上に展開するのは……
俺が僅かばかりの
戦争に必要な情報、地形、敵味方の陣形、そこから予測できる両陣営の動きを全てロイ・デ・シュヴァリエの盤面に反映し展開させる彼女。
「良く出来てるな……」
俺は唸るようにそう言うのがやっとだった。
俺の通ってきた進路やその時の包囲網の状況……
本来、
得た情報の欠片から、こうも見事に再現できるのは
――
「
「……」
――なるほどね、しかし自身を
戦略的には確かにその通りだ。
その表現は
「貴方の人生は既に終わっていた……違う?」
「……」
――違わない
確かにそうされていれば俺に打つ手は無かった。
こうやって具体的に見せられると苦し紛れの反論も出来ない。
どう見ても、どう思考しても……詰みだ。
俺はその遊戯の盤面を凝視したまま押し黙るしかなかった。
何故なら、その盤面上では……俺は死んだのだから。
「
「だが俺は生きている」
――しかし現実はそうならなかった
俺はそういうなんとも無理矢理な反論をする。
苦し紛れの反論の余地さえ無い状況で、戦術や戦略の欠片も無い”結果論”をねじ込む。
「……そうね、だけどそれは、
――おおぅっ!なんて手厳しい意見だ
だがそれは的を射ている。
「俺ならいつでも処理できると……侮られているが故の
「……」
俺のおどけた言葉に、
「今回は運が良かっただけ、だから”今度”は……」
そしてその真剣な表情のまま……言葉を続ける。
「”今度”は?」
――あぁ、そうか……
俺はそのやり取りで段々と解ってきていた。
「そう、”今度”は……正しく処理しなさい」
「……」
そして俺は全て理解した。
何故に
何故に今更、俺に辛辣な言葉をぶつけるのか。
何故に……
こんなに苦しそうに俺に話すのか……
「
だから大丈夫だと、
俺は”そんなこと”はどうとでも乗り越えて見せると言葉にしようとするが……
「世界を統べようとする者にはそれは”必要”なのよ、解っているでしょう
「……」
先手を打たれて押さえ込まれる。
――”私は統べるわ、
かつて俺に語った彼女の至ろうとする場所。
――この状況に及んでも、
「……」
だから
そして、そんな
それは意図せずとも俺をこの
それとも……
「……」
感情薄く、同情、義理人情など微塵も介入する余地の無い合理的な冷たい策士の顔。
稀代の策略家、
――決して判断を誤るな!
――
「私の言っている意味が解るわよね?」
冷静沈着、冷酷無比、それは
表面的にはそうでも、悲しいかな、そうじゃ無いことが俺には解ってしまう。
――
「
だが、それでも俺は、念を押す彼女の、その助言を無下に払いのけた。
「それは一国の国主として判断をするということ?それとも……」
「……」
俺は答えない。
現在の俺には未だ答えが無いのだから答えようが無い。
――
そんな俺の瞳をじっと見詰めていた暗黒の瞳は、
「
「俺が決める」
「……」
「なぜ?
”泣いて馬謖を……”
説明するまでも無い。有名すぎる
「泣いてねぇ?泣くくらいなら最初から斬らなければ良いだろうに」
「さいかっ!」
珍しく声を荒げるお嬢様に、俺は
「解ってるよ、
「…………」
「確かにな、俺の目的が”世界の統一”とかならそうかも知れない、法を個人的理由で曲げ、身内にだけ甘い、秩序を欠く支配者なんかについてくる臣民はいないだろう」
「その……通りよ、温情と
――公平に”見せる”必要……”公平にする”では無く”みせる”か、正直で
俺は彼女らしい言い方に、不謹慎だと思いつつも少し頬が緩む。
「
そして
第六十一話「紡がれる”
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