第91話「黄金竜姫」(改訂版)
第五十一話「
――本州東部を統べる大国”
”
遙か
それが現在にまで権勢を誇る東の大国、”
そして長きにわたる戦の末、群雄割拠の歴史の渦中で……
現在から十七年程前に、戦国史の始まりであった二大国家は歴史上でも希な融和的雰囲気であった。
益々混乱する”
――
――恒久的な平和のために?
残念なことに、それは
”
つまりは”
物事の善悪は兎も角……
そういう野望を秘めた二大国は、期間限定の和平を結ぶためにお互いの王家同士の婚姻関係を模索する。
候補は……
不幸な事にそれは長くは続かなかった。
どちらが先に約定を破ったのか?
それは今更論じても意味の無いことだ。
最初からお互いが利する為、野心を
そんな”
――そうして時は流れ……
長女の”
宿敵、
三女の”
こうなると、残るは”女王”の即位という方法が議論される様になるが、
それは王政に
それは言ってしまえば権力から一切隔離された”種馬”になるという事だった。
それだけして、そこまでして、東の大国、
以上の事から――
当時王位を継ぐ資格があるのは二人。
そしてその一人、
それは消去法的対処と見られても仕方の無い選出方法であったが、実際、
彼女の素質はその時点で既に多くの臣下に高く評価され、人となりも広く人民に慕われていたからだ。
物事の道理に明るく、聡く、公明正大。
そして日夜、人の上に立つ者としてその努力を怠らない真面目さと
”天は二物を与えず”……それは彼女には当てはまらない格言である。
そして天が彼女に与えたもうた最高の恩恵は、それらの才が霞むほどの恩恵。
それは――
彼女は未だ十四才という幼さにして、
――東の都に竜が生みし至高の秘宝有り
――
――華と佇み、鳥と奏で、風と舞い、月と輝く……
――叡智の
――
――
――果たして人々は
――
―
そっと白く繊細な指が触れ、男の鼓動は跳ねた。
「……」
「ほら、こっちの方がずっと良いわ」
少女の手にはごく普通の眼鏡。
素っ気ないデザインの、用をなさない伊達眼鏡があった。
「あのな……何度も言っただろ、それが無いと落ち着かないんだって」
「そうだ、ちょうど良いわ、ほらこれ?」
男の抗議が聞こえない様子を装って、微笑んだ少女はそっと眼鏡をテーブルに置いて男との距離をつめる。
「うっ……近い!近いって!」
少女は美しい黒髪を、耳の辺りで指で掻き上げ、そっと形の良い
「……」
途端に寸前まで騒がしかった男は黙り込み、
「ってぇぇっ!!絶対わざとだろぉぉっ
叫んだ男に、少女は”くすくす”ともう一方の指先で口元を押さえて笑っていた。
「あのなぁ、
ドクンドクンと落ち着かない鼓動を悟られぬように、右目が義眼の男、
「このピアス、誕生日に
男の抗議を全く無視したまま、形の良い
「…………」
白い首筋から
「…………すごく……似合ってる、可愛い」
というより、彼がその少女に対抗できる
それは幼少時からの二人の関係そのもので、彼はその関係を心地よいと思いさえすれ、否定しようなど考えたことも無かったからだ。
「……うん、ありがとう」
そして黒髪の少女はそっと頬を染めて、桜色の唇を綻ばせる。
こうやって、からかうようにして甘えてみせるのも彼が唯一の相手だ。
「
とはいえ、
「あぁ、分かってる、無理はしないって」
「……」
そう言って笑う幼なじみの顔を、見つめる少女の瞳。
その少女の美貌が極めつけは
澄んだ濡れ羽色の瞳の波間に時折揺れるように顕現する黄金鏡の煌めき。
神々しいまでに神秘的な双眸があまりにも印象的な彼女の”魔眼”。
「……
「心配性だな、
――無理はしない
そう言っていても
――
それは微笑む目前の幼馴染みの右目……
僅かに鈍い光りを放つ義眼が、その昔語りが証明していた。
「
美しき黄金の龍姫が愛しい男性を呼ぶ声から、いつの間にか甘い響きは消えていた。
「じゃ、行ってくる」
そういう視線を察したのだろうか?
「あ……」
「楽しみにしてろ
そうして幼なじみは眼鏡を装着した。
「眼鏡……無い方が良いのに」
少しだけ拗ねたように呟く少女に……
「言ったろ、俺はコレがないと落ち着かないんだよ」
彼は仕方無いだろう?と優しく笑って背を向けたのだった。
十二歳で軍籍に身を置いて僅か二年足らずで”
そうして四大国家の陰謀渦巻く戦場へと身を投じたのだった。
第五十一話「
(あとがきとか補足とか)
前々からちょこちょこと本作中に顔を出していた
穂邑 鋼くんと名前が出ていた燐堂 雅彌ちゃんですが
今回以降、本格的に参戦します。
二人の関係など本作ではそこまで詳しく展開しないかと思いますが、
気になるという方がいらっしゃいましたら是非、彼らが主人公の他作品
「黄金の世界、銀の焔」を読んで頂けたら嬉しいです。
「黄金の世界、銀の焔」は本作を執筆する為に書いた派生作品ですが、世界観などは
かなり違います。
そこは……なんというか今後の展開のネタバレになるのでアレですが、
まぁパラレルワールド的なモノと思って頂けたら幸いです。
本作より随分前に完結した作品ですが、今回「黒×白@ChangeTheWorld」にて、
本格的に「黄金の世界、銀の焔」のキャラが登場するということで、
番外編を書いていこうと思いました。
前作終了時の少し後、でコンパクトな話にしようと思ってますが、
どうなるかは解りません(汗)
読んで頂けたら嬉しいです。
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