第21話「最嘉と緑茶とサイダー」 後編(改訂版)
↓京極 陽子&久鷹 雪白のカットです↓
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第二十一話「
――仲が良いね、さいかとあの……まこと?
俺は背後からの聞き覚えのある声に、冷めたコーヒーに口をつける寸前でゆっくりと目をつぶっていた。
「いつから聞いていたんだ?
「別に……」
俺の背後に立っていた人物は……輝く
「……おい?」
俺は視線をやり、自然とツッコミの声をあげていた。
何故ならそこには……
胸の前にこれでもかと多種多様なドリンクの注がれたカップを積載したトレーを両手で持った天然純白美少女、
「とても主君と家来の関係には見えなかった……なんか変」
しかし彼女は、俺の声を普通に
「おまえな、ドリンクバーはお代わり自由だが一回にコップは一つだぞ」
ならばと……俺もツッコミを継続してみた。
「さいかは話をはぐらかすのがヘタだね……部下との馴れ合いはあまり良いとは言えない」
――よく言うな、俺の質問は、はぐらかす気満々のクセに……
俺はそう不満に思いながらも、このままでは会話が一向に進まない事から、大人な俺は譲歩する事にした。
「
「……」
――俺を見つめる
――幾万の星の大河の
「……さいかの大切なものって……
――大切なもの?
少し長い沈黙の後、
そうだった、確か”
――”「それは、やっぱり……大事なもののため?」”
その言葉が、あの時の
――”「…………そう」”
そういった素っ気ない返事だったのを……彼女には珍しく、少しだけ
確かにあの時の
いや、いつも変だけど、特にあの時は……
「さいか?」
いつまでも返事を返さない俺に
「そうだな……けど
「当然じゃ無い、そんな事を本当に実践している領主なんていない。もっと大きい目的を果たすための駒……だから大切にもするけど、それはもっと欲しいものを手に入れるための道具だから」
「えらく
「さいかは
――こういう時……鋭いよな、こいつ……
「誤魔化していない」
「誤魔化してる!自分を!……だからあんな危険な事をするんだ」
――危険……
多分、この間の
ただでさえ数少ない手勢を三つに分けた……
確かに、これに関しては
けど……
「
「違う!そうじゃ無くて……わたしが言いたいのは……」
「……」
――解ってるよ……解っているから誤魔化したんだ
「さいか、なんかおかしいよ……なんか歪んでる……そんなんじゃ絶対に死ぬ……」
――ははっ、同じようなことを昔、
「わたしには理解できない……なんか……きもちわるい……」
――おおぅ?今日は結構、雄弁だな
「俺だって理解できないぞ、
とは思いつつも、俺も反論を試みる。
「!?」
「おまえ、さっき
「……態……度?」
急に変化球を投げ込まれ、
「
「……それは……さいかのこと……気に入って……」
改めて俺の言いたい事に気づいたお嬢様は……
慌ててそう答える
「嘘だな、それは無い」
「……」
だから俺は確信した。
いや、表現がいまいち適切で無いか?
なにかに対して……絶対的な不安を抱いている……
これの方がシックリくるな。
「お前が俺に?どういう経緯で?少なくとも今の状況ではあり得ない。
「そ、それは……」
あからさまに不安な表情になる
俺は徐々にだが
彼女の
人形を演じているのだろうか?……だが、人形になりきれていない。
自ら感情の無い人形になりたくてそうしているのか?
それともそうならざるを得なかった過去を持つのか……
どちらにしても俺は……この時点で深入りしまいと思っていた
「
「……」
積載量オーバーのトレーを両手に立ち尽くしたままだ。
「……さいかは……歪んでる……きもちわるい……」
そして、美しい眉間に影を落として、再びそう
――あくまでも自分の事には黙りか
なら……
「おぉ、こんな美少女に面と向かって”きもちわるい”は中々に
「っ!?」
なら俺は、あくまで不敵に……不真面目に……対応するまでだ。
「…………」
……俺の悪いクセだ。
何故か敵意や嫌悪をあからさまに向けられると、逆に笑ってしまう……
いや、
逆境に強い、場慣れしてるといえば聞こえが良いが、何のことは無い。
少しばかり捻くれているだけだ。
「
「……」
そう自認して、多少罪悪感が沸いたのか……
俺はフォローを入れる。
「今後、
「っ!」
予想しない言葉だったのだろう。
――ははっ……ほらな?
俺は思わず間抜けな表情を晒す
彼女の
こういうところで、良い意味で人形になりきれていない。
多少趣味が悪いかも知れないが、俺はその少女の反応がとても心地よかった。
「なんだ?やっぱり”きもちわるい”か?」
そして、驚いた顔のまま、坐した俺を見下ろす少女に問いかける。
「わたしたちは……敵同士、一時的に利害が一致しているだけ……だから今は協力関係なだけ……
所々、たどたどしいながらも、
「そうだな……」
俺は今回の共闘で、目の前の
意外と
「敵だ、さいかと……わたし……だったら!……だったら……やっぱり、きもちわ……」
「大切な”もの”は守る主義なんだ……」
「っ!」
普段が普段なだけに貴重だしな……って、これは趣味が悪いか。
「俺はその前に、こうも言ったぞ……ここから先は一蓮托生、同じ目的を持つ者同士は握手するんだって……違うか?」
揺れる
白い銀河が頼りなく瞬く美しい
「……わたしは……わたし……」
「……」
――あんまり虐めすぎるのは良くないな……
正味の所、今回は……まぁ、こんなものだろう。
独り勝手に、そう区切りをつけた俺は……
ガタッ!
腰を上げ、相変わらず立ち尽くしたままの
「あっ……」
不意を突かれ、驚く
「お、これは、
そう言いながらも、承諾も取らずに一口頂く。
「おっ、むむっ……なんか……案外いけるな……
「……」
そして勝手に評価までする俺を恨めしそうに見る
「まぁ、あれだ……
「……」
どうやら少し調子に乗りすぎたかも知れないと、俺は軽くフォローを入れてみるが……
「そう思い詰めるなって、お前は俺の行動が理解出来ず気持ち悪いかも知れんが、俺達がこうやって付き合っている限りはいつか解り合える時も来るんじゃないか?」
「付き合って……ない」
相も変わらず、
「いや、そう言う意味じゃなく……」
「さいかはっ!」
「ん?」
――コトッ
なにか言いかけてから、
「さいかは……やっぱり、食わせ者だ」
ここに来て……負けじと言葉に変化をつけ、
「……うぅ」
だが、残念ながらあまり上手くない……
というか、こう言った遊びのあるやり取りとかは馴れていないのだろう。
言った後も、
「おまえ、そんな顔もするんだなぁ」
「っ!!…………う……うぅ………………ばか」
輝く
第二十一話「
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