第21話「最嘉と緑茶とサイダー」 前編(改訂版)
↓京極 陽子&久鷹 雪白のカットです↓
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第二十一話「
「そうだ、
――プッ
俺は通話を切るとスマートフォンをテーブルの上に置く。
「
俺の正面に座った、清楚で可愛らしいながら大人っぽさも感じさせる黒髪のショートカット少女が話しかけてくる。
俺は頷くと、目の前に置かれたホットコーヒーを一口飲んだ。
「
今度は俺の問いかけに、ショートカットの少女は眉を
「あのひと、どれだけ飲むんですか……ほんとに」
呆れ気味の少女の名は鈴原
少し前に同じ事に呆れた経緯のある俺は苦笑いを返しつつも、もう一度手に持ったコーヒーカップに口をつける。
――ここはファミリーレストラン”ゲスト”
「
「
俺が話題に出した工作部隊責任者の名に、
「では、
――ほぅ……
俺は頷いて、簡単に説明することにした。
「
「でも間に合った?」
「……いや、違うな」
「?」
「役に立つには立ったが、
「……」
俺は説明しながら考える。
今回も目的を達したのだから全て自身の手柄にしておけば良いものを、こうやって第三者の存在を報告してくる辺りは、馬鹿正直というわけで無く、客観的に周りを分析できる、
「今回の戦の首謀者は、
北伐軍は、その”
「俺は、
「では、今回の
――本当に
「そうだ、といっても、ちょっと
「
俺は時折それに照れ臭くなるときがある。
「いや、といっても、言った通りまだまだ準備不足だった。人心の掌握に長けた
「では、それを手助けしたのは?」
――そう、ここで
「さあな……だが、憶測だが同じ様な考えを持って間者を仕込んでいた者がいて、同じような策を練っていて、同じような次期に同じような事を発起させようとしたが、同じように準備不足で……なら
俺の見解を一通り聞いた後、
「………………
俺は頷く。
「だろうな」
「……」
いや、と言うよりも
「そんな顔するなって、結果的に今回は助かったわけだからな……」
「だからですっ!間接的にでも、あの女の助力で自分の命が長らえたなんて」
それは結局、俺に起因する。
俺と
「そう言うなよ、俺はどういった経緯でも
「……さ、
途端に仏頂面だった頬を赤らめて
――まぁ
「……」
そして、そんな満たされたような
俺の中で引っかかっていた事が頭を
「おまえ……死ぬ気だっただろう?」
「……!」
――いや、今更その事に触れるつもりは無かったんだ
もう済んだことだし、俺を
なにより
それだけで良しとして、今更蒸し返してお互い気まずい思いをすることは無いと。
そう考えていたはずだったのに……
「お前、昔言ったよな?無能な
「……」
申し訳なさそうに
「朝に道を聞かば……か、
「っ!」
何故その事を?と言うような表情で
「……」
俺はポケットから出した一枚の紙を、ぴらぴらと
「それは……え?……え」
「律儀だな
「……ぅっ」
「あ、俺に届けた奴を恨むなよ、お前が学校で落としたのを偶然俺が預かったってだけで、悪いとしたら勝手に中身を見た俺だ」
「
問いかけに俺は頷く。
「っ!」
そして
「で……だ、
俺は多少の罪悪感を感じつつも、追求する。
「わ、私は真理なんて……私は
――
これは、ざっくり言うならば……
朝にこの世の真理を得たならば、その夜に命を落としても本望というような言葉だが……そもそも、死んでも良いというよりも、逆説的にそれだけ真理を得ると言うことは難しいという……
「……」
いや、目の前で
――ふぅ……
俺は心の中で溜息を一つ
「磯の上に
「……?」
唐突な言葉に、
「何を手に入れても……一緒に分かち合える相手がいないと意味が無いってことだ」
「……」
俺はぶっきらぼうに意訳するが……
さすがに面と向かってこれは照れるものがある。
だからだろう、俺は視線を
「……」
「……」
「え、と……
「さ、
「う……」
この恥ずかしさは……さっきの比じゃ無い。
今回は発端が俺だけに……な?
「……」
「……」
というか、
いやいや、決して違うぞっ!
俺はそういう人間達とは一線を画する……
「……すみません、私、調子にのって……素敵な主人なんて……」
俺が黙り込んだためか、
「いやそれくらい、べつにかまわな……」
「あっ!」
――なんだ?
直ぐにフォローしようとした俺の言葉を遮る
なんだか彼女の大きめの瞳がキラキラと輝いている気がしないでも無いが……
「えっと、
――うっ……もしかして?
「なんだか”素敵な主人”って言い方、結婚しているみたいですよね!ね、ね?新婚?新妻みたいな!あっ、すみません!また調子に乗って私ったら……そのつい、っていうか結婚って
「……」
――おちつけ……落ち着け
支離滅裂すぎるぞ……
ってか、親戚なんだから姓が一緒なのは珍しくない!
結局のところ、
「そ、それで
――ルルルルルッ!ルルルルルッ!
「!」
そんな
「そう言えば……
俺はその電話の相手に察しがつき、これは”渡りに船”とばかりに説明的な言葉を口にしていた。
「……」
――ルルルルルルッ!ルルルルルルッ!
「早く……出た方が良いぞ
俺は固まった
「…………ちっ」
――って、舌打ちかよっ!?
――なんか
――ルルルルルルッ!
「
――
「ああ、わかった。そもそも俺がお前達に頼んだ事だしな、行ってこい」
俺は色々ツッコミどころを
――ルルルルルッ!
「では……その……次は
「おう」
――ルルルルルルルッ!
「……」
「……」
――ルルルルルルルルッ!ルルルルルッ!
「
「は、はい……では……」
――
―
ーカランカラン
そうして
「早く出てやれよ……
独り
「仲が良いね、さいかとあの……まこと?」
「……」
俺は冷めたコーヒーに口を付ける寸前で、背後から聞こえた声にゆっくりと目をつぶった。
「いつから聞いていたんだ?
第二十一話「
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