第3話 「最嘉と虜囚生活」 後編(改訂版)
↓久鷹 雪白のイラストです↓
https://kakuyomu.jp/users/hirosukehoo/news/1177354054892613273
第三話「
「おおぉぉーーいっ!聞いてないよ!それっ!!」
「うん、言ってないから」
もの凄くスッキリした顔でそう返す純白の美姫。
「言ってくれっ!そういう重要なことはっ!」
アッサリ事も無げにそう答える少女に、俺は先ほどまでの余裕はどこへやら、見苦しく取り
「……そうなの?重要?」
「お前にとってはそうじゃなくても俺にとっては重要なんだよっ!」
「解った、次からは気を付ける」
「じゃなくて!だから明日死んじゃう俺には次はないんだって!!」
ーーな、なんなんだ……この娘は……感情と思考に問題アリアリだろっ!!
「…………」
「……おい」
「…………」
「なんとか言ったらどうだよ……お……」
「”鈴原 さいご”は……わがまま……」
「って!?もう名前が先に終着点なんですけどぉぉっ!!」
「?」
ーーぬぅぅ!!
ーー欠片の悪意もない純粋な
俺は少々意地になった。
「いいか、”
「……」
対して純白の美少女はピンとこない顔だ。
「ああ、
「…………それは、なんだか……主旨が違うと……思う?」
「同じだよっ!お前美人だから”そんな感じ”の
「…………」
不思議そうに小首をかしげ俺を見る
「……な、なんだよ!?」
輝く銀河を再現したような
「………………鈴原
「おっお前が言うなっ!!」
俺は相も変わらず、縛られて
ーー
ー
ーーっていう、後半は全く不毛でしかなかったやり取りが、昨日、木曜日の夜に向こうの世界であった出来事だ。
「昨日の今日で接触してくるとは見かけによらず勤勉だな、”
「…………」
俺の軽口に、振り向いた純白の美少女は、
私立
「なんだ、
白磁のように肌理の細かい透き通る白い肌。
白い肌を少し紅葉させた頬と控えめな桜色の唇。
整った輪郭には、それに応じる以上の美しい
俺に気づいて屋上のフェンス際で振り返った少女のサラサラと流れるプラチナの長い髪が、朝の光を受けて
「……鈴原……
胸元を碧のリボンで留めた紺色のセーラータイプである
「で、用件は?」
俺はポケットから出した白い封筒をヒラヒラさせながら、少女に改めて尋ねる。
「……鈴原
ーーほぅ……そうきたか
俺は予想外……と言っては若干失礼だが、彼女の意外な鋭さに少し口元が緩む。
「さてねぇ、確かにそういえば、昨日は木曜日で今日は金曜日、今日から世界はこっち側に切り替わるんだったなぁ」
俺はわざとらしく、この世界の住人なら全員が知っている常識を、さも今思い出したように口にする。
「……」
相変わらずの起伏の無い表情。
しかし確かに警戒をした
ーーまぁ当然と言えば当然か
実際、俺がこの少女、
俺達の処遇がどうなるにしても、領主という身分の手前、即刻処刑と言うことはほぼ無いだろう。
これが戦場でなら、討ち取られて終わりだが、降伏という形ならある程度時間が稼げる。
正直、翌日処刑なんていう”乱暴な事態”は計算していなかったが……
それでも、こうやってこちら側の時間を有効活用することにより、次に世界が切り替わる週明けまで三日は時間が稼げる。
「この学校に私が潜入しているのも知っていて?」
一向に返答しようとしない俺に、彼女は次の質問をする。
ーーそうだ
ーー知っていた
こちらの世界を利用しての諜報活動はよくあることだ。
普段から領地内に目を光らせている俺は、敵国”
だから、一ヶ月程前から腹心の
「まあね……」
「…………わたしはこの学校に籍を置いていただけで一度も登校したことがないわ……それに……わたしを知る人間は敵方にはまだ……」
「……」
ーー確かに
数ヶ月前に、ただ転校して来て、その割に一度も学校には通わず、本来の仕事もしないでフラフラ……
ーー何もしないのだから”危ない橋”を渡ることも無い。
ある意味見つかりにくいと言えばそうだが……
そもそも、なにしに来たんだよ?こいつ……
こんな変な奴に合戦前の諜報活動を指示する”
俺は他国の事ながら頭が痛くなる。
ーーそれに……”わたしを知る人間”……か
姓名不明、年齢不詳、性別さえわからない……ただ対峙した敵は尽く葬られ、凄まじい剣技の伝説だけが残る、
他国が解っていることは、その武将の異名が”
「どうして?……鈴原
ーーどうして?それは、本人のお前がノコノコと
俺は、実際にこの
一見ボヤッとしたお嬢様だが、その所作には只ならぬ雰囲気がある。
一流以上の剣士にはそういった独特の空気があるのだ。
因みに俺が最初にこの純白少女を隠れ見たのは……
センター街の自動販売機前でジュースを買うのに二時間近く悩み……挙げ句の果てに操作方法が解らずに半べそで帰って行った時だった。
「…………おいおい」
あ、後は今までの情報を総合し、裏付け調査を行い、最終的には俺が判断した。
そもそも”
最終的には俺が情報を入手できたのだから、本人が思っているより
ーーまぁ、両方だろうな
「俺が聞きたいのは、交戦相手の情報収集にどうして”
「……」
呆れ気味の俺の逆質問に、途端に口を紡ぐ少女。
「答えたくないか?こっちのことは根掘り葉掘り聞こうとするのに勝手だな」
「っ!そんなこと……鈴原
「握ってない!」
「っ!?」
俺の立場でこんな強硬な反論などは思っても見なかったのか、思わず黙り込む純白少女……
「いいか、
「…………」
大人に叱られた子供のように、黙り込んでしまう少女。
ーーうっ、らしくなかったか?……つい熱くなってしまったようだ
「と、兎に角、交渉しよう、その為に俺にこんな手紙を出したんだろう?」
意識した俺の穏やかな問いかけに、
ーーそうだ……俺は解っていた……会えさえすれば必ず交渉の余地はあると
「さ、さいか……もし、……もし、私が会いに来なかったら……どうしてたの?」
ーー?
ーーあぁ……この場合の”会いに”はこっちの世界ではなくてあっち側、俺が投降して、戦が終わった後にって事だろう
「さぁなぁ……その時は……」
「
「さてね」
第三話「
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます