第4話 「最嘉と純白の連なる刃」(改訂版)
↓京極 陽子&久鷹 雪白のカットです↓
https://kakuyomu.jp/users/hirosukehoo/news/1177354054892612224
第四話 「
呼び出された屋上で
俺が連絡した時、鈴原
こういう時、向こうの世界と違い、文明の利器は非常に重宝すると思う。
こういう物が向こうの世界でも使えたら……なんて誰もが考えてきた事だろう。
「…………」
それは
俺の側近といえる人物は、主に
どちらも優秀で頼りになる忠臣である。
しかし、若干の問題が無いわけでも無い。
それは……まぁ、直ぐに解るだろう。
ーー俺の側近は有能だが……
「でだ、
俺は、俺を捕らえた敵国の将、
「ら、ラブレター貰ったんですか!
で、今回の件、俺が
それを聞いた後の、”一つ年下で可愛らしいながら大人っぽさも感じさせる黒髪のショートカット少女”、鈴原
「いや違うって、これは敵国の……
「それは……その、理解しましたが……あの」
モゴモゴとハッキリしない様子で恨めしそうに俺を見る大きめの黒い瞳。
あの戦の時の顛末と今日の経緯は、かいつまんで話した。
ある程度は作戦だった事と、今からその続きに取りかかること……
基本、頭の回転の速い
「でも……女性から手紙を貰ったのは事実で……」
「…………」
ーー本当に俺中心だな……
俺は軽く溜息を
「!」
それを見た
「だから
「い、良いんですか?」
「まぁな、そもそも作戦内容を
だが、それによって
「……それは……は、はい……」
ばつが悪そうに目を
「…………」
ーーいや、ホントにそんな大層なものじゃないって……
「……」
「……」
ーー拝啓
ーー平素は格段のご厚情を賜り、厚くお礼申しあげます。
ーーさて、この度は先の戦にて捕虜となられた鈴原様におかれましては、是非に拝聴致したい案件がございます。
ーーつきましては、勝手ながら本日、早朝に屋上にてお待ち申し上げております。
ーー時節柄、皆様のご健勝とご活躍をお祈り申しあげます。
ーー敬具
ーー十月二十日
ーー鈴原
「…………」
「…………」
「おかしいです……これ」
「だよな……やっぱりおかしいよなぁ」
手紙の内容を読み終って暫く
ーーそうだ、俺も最初は我が目を疑ったものだ……
けど、相手とは初対面みたいなものだし、あんまりツッコむ所じゃないのかなぁ……とか気を遣ったりして流してたけど……
ーーああっ!こんな事なら思いっきり、ツッコんでおいたら良かったぁっ!!
ーーくそっ!ストレスたまるなぁぁー!
てか、
”皆様のご健勝とご活躍”って敵の陣営の繁栄願っちゃ駄目だろう!?
ーーけど、もし
しかるべき時にしかるべき”ツッコミ”を出来なかった欲求不満でモヤモヤしている俺に、黒髪ショートカット少女は”うんうん”と同意して頷いてくれた。
「そうですよ!差出人は女性なんですから、文末は”かしこ”ですよね?」
「ってそこかいーー!」
俺の”ツッコミ”は、かなりの周回遅れで
「……?」
「いや、もういい……というかこれで
不思議そうな顔をする
途端に俺のポケットの中で、クシャクシャになる手紙。
ーーこれが俺のせめてもの復讐だ……
「これで
「はい!私の
「…………頼むから……会話をしよう、
ーー俺の側近は有能だが……問題があった
「……?」
「と、兎に角、
「は、はい、承知致しました」
未だ不思議な顔の
ーープルルーーカチャ
「鈴原だ。さっきの件だが……ん?なんだ?……なんか後ろが騒がしいけど……!?」
「
スマートフォンのスピーカーから聞こえる、通話先の状況に異変を感じた俺、そしてその反応を見て、隣で
「……ば、ばか!お前なんで教室に居るんだよっ!……はぁ?
ピッ!
俺は通話を切ると、雑に
「
「いや……こっちは俺が何とかする、
大きめの瞳をパチクリさせる
「あ、
ーーダダダッ
ーータッタッ……
ーータッ……
最初は勢い込んだものの、直ぐに速度を落とす俺の足。
ーーくっ……感情に囚われてちょっとばかり無理をしすぎたか……
結局、俺は校舎二階の二年の教室が並ぶ廊下を少しだけ早足で歩いていた。
最初は確かに走っていたんだが、ものの数秒でこのザマだ。
まぁ、俺自身が一番
その後、俺は心持ち熱を帯びた右膝辺りに違和感と少々の鈍痛を感じながら、何とか一限目後の休憩時間内に目的の教室前に到着していた。
「……」
ーー案の定だ……
ーーザワザワ!
「あの馬鹿……極秘裏にって事を知らないのか……」
これでよく諜報活動なんてしようと思ったものだと、呆れながら俺はその教室内に居る
ーーよっ!ーーはっ!ーーこのっ!
興味本位の野次馬達をかき分けるのは、今の状態の俺には中々の苦労だ。
「
「ばか!失礼だろ!それより
「ねぇねぇ学校で分からない事があったら私に聞いてよ、私結構顔が広いんだよ」
「…………」
ーー大人気だな……
いや、それも当然だろう。
転校初日から一切登校していなかった謎の生徒が突然現れた。
しかもその人物は超のつく美人で……
諜報活動なんて目立たないのが大前提だ。
ほんと、素性隠す気あるのか?こいつ……
「…………」
で、当の本人はと言うと……返事をするどころか愛想笑いもしやしない。
いや、人形のように感情の無い顔でただ座っているだけだ。
ーーはぁ……
俺は頭を抱えながら、野次馬と化した学友共をかき分け、
「おい……お前なんのつもりだよ!」
「……あっ……さいか」
現れた俺の姿に、緊張感の無い声を上げる純白の美少女。
途端に”おおーー!!”と、どよめきが上がる。
ーー返事しただけでこれかよ……天然記念物並の有り難さだな
「”あっ、さいか”じゃない!……だ・か・らぁっ!なんで授業受けてんだって聞いてんだよっ!」
「…………?」
俺の苛立ちを抑えきれない問いかけに、暫し思考する
「……」
「…………………………がくせい……だか、ら?」
席に座ったまま、少し小首を傾げた
”おおっーー!!”
再びどよめきが上がる。
ーーぐっ……やりにくい
俺は目前の
(とにかく来い!交渉のセッティングは出来ている)
「……」
(でも、もうすぐ二限目の授業が……)
ーーぷちっ!
何かが俺の中で切れた。
ぷにっ!
「ひゃっ!」
俺は彼女の白い頬をつねり上げたのだった。
戦場で恐れられる武人、
おぉぉぉぉーーーー!
その様子に今までで一番の歓声が上がっていた……って、もういいわっ!
「いいから来い!くそ、おまえとはトコトン話し合う必要があるようだな!」
マシュマロのように柔らかく滑らかな手触りを密かに堪能しつつも、俺はそれを誤魔化すように声を荒げていたのだった。
ーー
ー
ーー自己嫌悪だ……
ーー柄にも無い事をした……
今はまだ目立つわけには行かない。如何に
早々に彼女を連れて学校を出た俺は、肩を落として”とぼとぼ”と歩いていた。
ーーなのにさっきの俺の行動は何だ?
ーー目立ちすぎる彼女を抑えに行って……これじゃあミイラ取りがミイラにだ
俺はそんな事を考えながら、俺の後ろをついてくる少女の
「
「?」
ーーあれ?
振り向いた俺はある違和感を感じた。
「おまえ……いま、笑ってなかったか?」
「……」
俺の後ろを二、三歩離れて歩く
ーーいいや確かに笑っていた……というか微笑んでた
ーーいったい、なんの……つもりだ?
腑に落ちない俺は、もう一度彼女の端正な顔をマジマジ見るが、彼女はもう普段通り、少し感情の薄い人形のような澄まし顔で歩いている。
「…………まぁいい」
少し気にはなったが……俺は
「…………」
「…………」
その後、俺と
ーー
ー
目の前には、全国チェーンのファミリーレストラン”ゲスト”の入り口。
「…………」
そして、その有名なオレンジ色の看板を物珍しそうに見上げる
「意外だと思うだろうけど、場所は
ーー?
ーーなんだ?えらい熱心に看板を見ているが……ファミレスの看板がそんなに珍しいか?
「おい、
俺の怪訝な視線に、彼女はなんでも無いと頭を振った。
「…………」
間抜けにも思わず見蕩れる俺だ。
「…………ううん、行こう」
その時、俺の耳に入った彼女の声は……
気のせいかも知れないが、彼女には珍しく弾むように軽やかな響きだった気がした。
第四話 「
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