第66話「城壁の外」前編(改訂版)
第二十六話「城壁の外」前編
「しかし、これはどうしたものか」
天を突くような二本の直角な角を生やした特徴的な造りの兜を被った武将が、腕組みをしながら渋い顔で立っていた。
――
”
「
平野に陣を構えた軍の将は、目の前の城壁を見上げ思案に
――ザッ
「…………
いつの間にか後ろに立っていた男、鋭い眼光を宿した、長めの黒髪を雑に
「……」
細身であるが引き締まった体つきで、
――
そして
「あの”
「…………そうか、
そう言い捨てる
「ふん……共同戦線のための客将と
――
さても、さても……直近の問題は後ろの男で無く前の城門……
この堅城の東側を守備していた砦を攻略した
「どぉぉうしたぁぁーー!?
高く
その東門城壁の上から兵を引き連れた一人の老将が、
見た目の年齢ではあり得ないほどの”迅雷が如き”怒声をまき散らしていた。
「我と思わん者は今一度、我が守護するこの城壁に挑んでみてはどうだぁっ?ハッハッハァァーーッ!!」
かなり年月を重ねた人物であるが……
立派すぎるほどの大柄な体躯を誇り、顔中が
「ぬぅぅ……言わせておけば、弱小の
胸の前で組んでいた両腕の二の腕部分をプルプル震わせて、二本角兜の
砦を突破し、そのまま勢いに乗って
「
「確かに、城壁という地理的優位を頭に置いても……忌忌しいがあの老将は噂通りの難敵と認めざるを得ないか……とは言え、敵を褒めてばかりもおられまい、
二本角兜の
「そうですな……このまま力押しというのは直前の戦で
「あれは確か……
「左様、
「ふん……で貴殿は
先ほどは
「そうですな、攻めるのは本隊の……
「……」
そしてそれは
”
だが、野望でのしあがった父、
だからこそ、実際の戦には
”
お飾りである総大将の手足として……
それが武人たる
聞けば、
「ふ……ん、
だが生来の武人気質たる
「そうですなぁ……本隊が到着するまでこの状況を放置して、敵に余裕を生ませるのは頂けないかと」
そして、頃合いを見計らって
それは
ここまでの武功を、努力を……例え王の嫡子だからと、横から
何より勇敢に戦い負傷している兵士達、死んでいった兵士達にも申し訳が立たない。
こう言った心理が働いた状態の
「…………」
そういう仮面の軍師が歪んだ笑みに、
確かに有能ではあるが、少しばかり歪んだこの策士の思考を。
この黒仮面の軍師は
自身の策が
「兵力に劣り、守りに徹するしかない相手には心理的な余裕が無い。つまり
互いの性格を知りつつも、互いの相性を良く思っていなくとも……
二人の八竜はそれでも発した個々の利益のため、利用し合う。
「……それは?」
それ故、
「先の戦で捕らえた敵将の無様さを晒してやるのはどうか?」
案の定、黒仮面の軍師は卑劣な策を巡らせていた。
「…………」
しかし二本角兜の武将は無言で却下する言葉は発しない。
それは現場指揮官としての責任のため。
「都合の良いことに”容姿の優れた年頃の女”である事であるし、このような策には持って来いと言えるだろうかと」
共に命懸けで戦っている部下に対して正統な対価を与えられるよう、手柄を奪われる訳にはいかないという責任に、提示された卑劣な策に
「なるほどな……尤もな策であるな」
この時、一軍の将である
そして、結果として軍師である
――
それは……
その準備を指示する為であった。
第二十六話「城壁の外」前編 END
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます