第58話「不協和音」(改訂版)
第十八話「不協和音」
「反対です!」
「…………」
俺は両肘を玉座の肘掛けに置き、口元の前で両手を組んだ格好でその人物を見据えている。
「
声の主は、
俺の側近中の側近で、今回の
「
「…………」
そもそも俺もそのつもりで今の状況を作り出したのだから。
――しかし……
「分を弁えよ、
玉座脇、俺の隣に控えていた黒髪ショートカットの少女が、段下の
「意に反する?いいや考え違いをするな鈴原
「
「…………」
「…………」
段上、段下で繰り広げられる二人の剣幕に、居並ぶ諸将達もただ言葉を呑み込み狼狽するしかない。
「
「忠臣?……
「もういい、
俺はそこまでだと言わんばかりにその口論を制していた。
「は、はい!……我が君」
「…………」
再び顔を上げた表情は、まだ言い足りなさげだった。
「……」
「……」
そして、玉座の間に控える諸将も重い沈黙の中、俺の発する次の言葉を待っていた。
――
「
俺は話しながらも考える。
――そうだ、一刻一刻と変化する状況には柔軟に対応しなければならない
――しかし今の俺は本当に
答えは否だ。
俺は……鈴原
ただ、
その想いを叶えるため、後付けで理由を取って付けているだけなのだ。
「……では、
――それだけの価値……
「
「ならば矢張り、ここは
――全く以てその通りだ……
――二の句が継げない
俺の取ろうとしている行動には、
ひとつは、今から駆けつけて間に合うのか?という事。
これは、正直もうどうにもならない。
二つ目は、現状で四大国が上辺だけとはいえ協力する大軍勢に、
勿論、
大国達の仮初めの連合になんとか付け入り、上手く協力関係を崩して……だろうか。
――並大抵では無いな……相手がどの大国だろうと現状の俺には相手に示せる代価が無い
そして最後に……
つまり新参地域の領主や武将がここぞとばかりに反旗を翻し、決起しても全くおかしくない。
というか、新参で無くても沈む船から脱出しようとする者がいても当然だろう。
――だからこそ、
「
ガタッ!
俺は
「!?」
「
「しかしっ!」
「黙れ
俺の横に控えたショートカットの黒髪少女が、すかさずそれを一喝する。
「…………」
というか初めてだろうな……
不承不承だというのがあからさまに見て取れる態度で一応は頭を下げて控える。
しかし俺はあえてそれを見なかったかのように続けた。
「強大な相手が攻めの一手を打つというのなら受け手に回るのは不利でしか無い!そして今後何らかの手を打つために鍵となるのが
「…………」
俺は諸将に向けて啖呵を切るが、
「
「はい、この
少女の言葉に俺は頷く。
「では、俺は道中、
「…………」
「
「…………承知……しました」
そして、
「…………」
玉座の間の空気は重い。
俺の側近である
自らの側近中の側近であり、俺の旗揚げ以来の功臣である
――彼をここまで”なおざり”にする俺に諸将が疑問を抱くのはごく自然だろう……な
「
立ち尽くしたままの
ついそちらに視線を向けてしまっていた俺に、
「ああ……この
「は、はっ!」
俺の指名を受けた、白髪頭の髪を後ろで束ねた初老の男、
「一応言っておくが……これは決定事項だ。我が
「…………ははっ!!」
ビシリと空気が張り詰め、玉座に控えた将兵達は新旧問わず頭を深々と下げたのだった。
――
―
玉座の間を後にした俺……
――今はこうするしか無い……
空気の思い玉座の間に残る諸将……
特に
――!?
入ろうとした俺の前に、一人の女性が膝をつき深々と頭を垂れていた。
「どういうつもりなの?……
――
有能故に俺自らが
「
「?」
彼女の言葉の意味が解らず不思議な顔をする
「…………」
「…………
俺の言葉に女性は、平伏した頭を更に深々と下げた。
「ご慧眼、恐れ入ります」
俺はそうだ……
この
勇猛果敢で知られ猪突猛進な一面はあると聞くが、中々の良将らしいとも聞いていた
それはつまり、何者かが
そう考えると、
「”
「そこまでご存じでしたか……本来”
俺が他国の間者かも知れないと警戒していた事を彼女なりに感じ取っていたのだろうが、それが
「それで?」
「はいっ!改めまして……私は、
――”
――なるほどそういえば、
「鈴原
「余計な事は良い、それより
――そうだ、俺は万が一が起こったときを考えて、
「
「勿論、ご一緒させて頂きます!」
第十八話「不協和音」END
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