第42話「蝙蝠の城」(改訂版)
第二話「蝙蝠の城」
「
「ああ、
俺は目前の、
「それよりどうだ?
俺の問いかけに、目前の真面目そうな男は頷く。
「はい、流石は
機知に富み、行動力に優れ、人心掌握に精通した
「ところで捕らえた敵の将、
そして俺が新たに
「
陣幕を勢い良く捲り上げ、黒髪ショートカットの美少女が意気揚々と入って来る。
「って……!!なんで
「……」
「くっ、ぜ、ぜったい私が先だと……一番乗りだと……」
――おいおい、一番乗りもなにも、
なにがそんなに悔しいのか?
普段は優秀でキッチリとした性格の常識人である鈴原
「……失礼しました、我が君。
「ああ、ご苦労だったな……まぁあれだ、
俺は右手を挙げて
「は、はい!
途端に瞳をキラキラさせる
「なぁぁにが”良い物”だ!ケッ!戦の行軍の最中に石拾いなんか始めるとは……
――!?
聞き慣れない声に、俺と
「チッ、
荒縄でグルグル巻きに縛られた仏頂面の男が、陣幕の直ぐ入り口で二人の
成人男子としては身長は低い方だろう。
しかし、拘束された荒縄からのぞく大胸筋、上腕二頭筋の異常な発達、短く屈強そうな首……
筋肉達磨という表現がぴったりと当てはまる小男だ。
「あれが……
頭に浮かぶ該当の人物名を挙げた俺は、目の前のショートカットがよく似合う黒髪美少女に尋ねる。
「はい、
ニッコリと微笑んで応えた少女は、自身の腰の後ろ辺りに装備した二本の特殊な形状の短剣に手をかけながら、陣幕入り口の小男の元へ歩み出す。
「おいおい、”
俺は慌ててそれを止めていた。
――
俺の側近、鈴原
「そうですか?承知致しました、我が君」
直ぐさま足を止め、振り向いて俺に一礼する
「……」
――
「我が君の寛大なお心に感謝しなさい下郎、さぁ、ひれ伏しなさい」
直後、その笑顔を一転させた美少女は、拘束された小男を冷たい瞳で見下ろし、そして両脇の兵士に目配せする。
ガシッ!
「ぐっ!ぐぅぅぅ……」
「……」
こんな感じで、俺に暴言を吐く様な輩に対しては、多少やり過ぎ感のある
「それで、
それに多少呆れていた俺に、
「あ、ああ、そうだったな……えっと、そうそう、捕虜となった敵将、
「どうやってですか?」
「それは……」
少し要領を得ない俺の問いかけに、
「はい、私の方は……
「こちらも同様です、敗北した後はあっさりと降りました」
――なるほど……
”
「
「ああ、解った、大体な」
俺は不思議そうな顔のままの
「なんにせよ、そろそろ”
そして、目前に並ぶ二人の側近、
――
―
険しい山越えを経て
そしてこの二つのルートを押さえた先に存在する”
「約定を
数人の兵士に押さえつけられた僧侶が一人。
一段高い主座の前に立つ初老の男に、尋常ではない剣幕で詰め寄っていた。
「そう言われるな、
白髪頭の髪を後ろで束ねた初老の男は、自身にくってかかる坊主を覇気の無い困り顔で眺めて答える。
「しかし!
何も納得できないと、坊主は更に食ってかかる!
「解ってくれぬかよ、
「なれば、それこそがっ!それこそが、
「……」
白髪の男が眉間には更に深い溝が刻まれ……
その男、この城の主である”
「この坊主を……
「に、
途端に両脇から兵士達に腕をひねり上げられ、捕縛される
数人の
場には命令を出した
「
難しい表情でそう言い放つ
「承知……この後は我が主の提示した策を用い、
――口元を黒い布で覆った、
所作には一分の無駄も無く、音どころか僅かな空気の乱れさえも無い。
それは、唯立ち上がっただけだというのに、この男の会得した体術が尋常で無いと言う事を物語っていた。
「……」
黙って頷く”
「
会話の内容にそぐわぬ抑揚のないトーンで淡々と話す忍びの男。
「承知しておる、
「……」
「まだ何かあるか?……
流石に苛立った口調になる
「…………いえ、ご武運を」
――
―
「ふん、言われんでも解っておる……信仰を蔑ろにした儂にはもう、これしか道は無いのだからな……」
黒い影が消えた
白髪初老の人物はそう呟くと、残った数名の護衛兵に目配せして人払いをした。
「…………」
そして人の気配の無くなった場所で……
他人により”策略”が既に幾重にも整えられた
四十八家の一氏、
「我が家の存亡は……鈴原……
第二話「蝙蝠の城」END
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