王覇の道編
第41話「臨海の三羽烏」(改訂版)
↓最嘉と壱と真琴、スリーショットです↓
https://kakuyomu.jp/users/hirosukehoo/news/1177354054892613288
第一話「
小国群のひとつ
そこに大国
「それで、攻め入った
黒ずくめの鎧の上に鎖を編み込んだマントを羽織った男は、雨でも無いのに頭にはマントや鎧と同じ黒い三角の笠をかぶっている。
「はい、”
黒笠の男は、右手に握った拳大の黒いケースをクルクルと弄って部下の報告を暫く聞いていた。
そして……
「総兵力八百余……大将は
「
部下の反論を受けて、黒笠男はジロリと笠の影から鋭い目を光らせた。
「
「し、
乗り気で無い上司に男はなおも食い下がる。
「ふん……
しかし、それでもどうにも乗り気にならない黒笠の男。
「
部下の再三の催促に、黒笠男、”
「いや、しばし……もう
そう言って”
――
―
――至高の黄金と苛烈なる紅蓮が重なる時、地上は焦土と化し
――聖なる明光と清らかなる青が相見える時、その”
――斯くして、深淵の底に何をも見いだせぬ愚者は
”
「それで?大昔のお伽話を持ち出して何を説明するつもりだ」
俺はそう
「流石は賢人と名高い
――歴史?お伽話だろう?
坊主の見え見えの
――
その”とある”山中に我が
「そう怪訝な顔をなされますな、拙僧は単に我ら仏法僧の本願をお話したまで」
首元に大きな数珠を幾重にも巻いた僧侶姿の中年は、地べたに直に尻を着いて
「本願?
「然り!しかし、その為にも災厄の元凶に対する備えは第一の目的となり得るのですよ……ははっ、我らは五百年も昔、そう、この世界が引き裂かれるよりもずっと以前からそれに取り組んできたという訳でありますなぁ」
――世界が引き裂かれるより以前……
――”
「それでですなぁ……この件に関する関連情報を収集したり、処理したりと……まぁ、そういったことも仏法僧の大事な仕事でありまして……」
「それはご苦労なことだが、
話が長くなりそうな気配を受け、俺は強引に口を挟んでそれを阻止する。
「いやいや、あくまでも可能性の話としてお聞きしているだけですよ、お気になさらず」
しかし、坊主は全く意に介さないようだ。
「……そうか、なら、俺には期待に添える回答は無いな」
「……ほぅ?」
――っ?
実の無い話を早く切り上げたいばかりの俺の回答に、一瞬だけ緊張感の無かった坊主の
「ですかぁ?……ならば
そして今度は俺の眼が殺気に光る。
「い、いやっ!これは失礼……撤回致しますっ!……どうか今の言葉はお聞き流しください!」
殺気を余すこと無く溢れさせた俺の尋常ならざる視線に、慌てて禿げ頭を下げる中年坊主。
「……」
――
「お許しください
「……で、俺達、
「左様でございますっ!!」
慌てた坊主は
「……」
――あくまで、宗教国家”
「しかし、俺は特定の宗教に肩入れするつもりは無いぞ、布教活動はルールさえ守れば、どの宗教がどうしようとも介入するつもりは無い」
「無論です、信仰の自由は我々も望むところ……ただ、近年の”
小国群のひとつ、”
だが、近年の宗教国家”
――で、窮する”
そうだ、
「……ああ、だな」
俺は解った解ったと
――
「そろそろ本題に入れよ、”
本来の方向に話題を戻す俺に、安堵の表情をした坊主は再び緊張感の無い笑みを浮かべて話し出す。
「小国群がひとつ、
俺の目前に
禿げた頭をペチペチと叩きながら得意げに講釈をたれ始めた。
「
「ははぁ?
話の腰を折られた坊主は、またもや大きく口を開けて馬鹿笑いする。
「……」
俺は陣中に設置した簡易椅子から立ち上がった。
カチャリ
すぐに
「おぉぅ?
「”
どうにも話が長い相手に俺は行動で示す。
「いやはや……確かに……しかし、それには”
「……」
俺は目の前の坊主の言を聞きながら陣の外に目をやった。
「
「そろそろだ……」
「は?」
「だから、そろそろ……その条件は満たされるって言ってるんだ」
「……??」
坊主は不思議そうな顔で俺を見上げていたが……
「り、
冗談だろう?とばかりの顔で坊主がそう応えかけた時。
――ダダッ!
陣幕のすぐ外側で伝令兵の駆け込む足音が響いた。
「報告致しますっ!ただいま”
「っ!?」
そして
「報告っ!!”
立て続けに入る吉報に俺は満足して頷く。
「……で、今度はお前が働く番だぞ、
言葉途中であった坊主は、なんとも言えぬ
「はは……ははは……」
やがて笑い声を漏らす。
「はは……ふっ」
そして坊主はあんぐり開けていた口から乾いた笑い声を響かせたかと思うと、打って変わってなんとも鋭い視線を俺に向ける。
「……」
――ほほぅ、この生臭坊主……なかなかの……
「はっはっはっ!いやはや……」
俺が目前の男から異質な価値を読み取った瞬間、その相手はまたもや緊張を緩めて再び大声で笑っていた。
「……」
――あくまでも……”のらりくらり”か、食えない”なまぐさ”だ
「流石は飛ぶ鳥を落とす勢いの
「……」
――”
俺と
”
と……それは置いて、
「お世辞は良い、それより……」
ペシリ!
俺が改めて催促をする前に、大雑把な口元に屈託無い笑みを浮かべた坊主が、見事に禿げあがった頭を叩いて良い音を響かせた。
「そう言う事で在るならば無論ですよ!
大層な返事を放った坊主は、酒壺を脇に抱えて颯爽と立ち上がって、ザシッザシッと陣幕の外へ歩いて行く。
「……」
「
控える部下の言葉に、俺は去って行く坊主の後ろ姿を見据えたまま頷く。
「無傷で敵城が手に入るならそれに越したことは無い……駄目でも
――
―
そして、大見得を切って
「宜しかったのですか?
質素な袈裟に質素な草履履き、そして使い古したボロボロの刀を腰に差したボサボサ髪の極々有り触れた男が問いかける。
――あの話題、”
そう釘を刺す自分と同じ僧侶姿の男に、
「俺はなぁ……困難なら困難であるほど、その試練は”人の力”で乗り越え無くてはならないと思っている。その辺りが
事も無げにそう言って笑う中年僧に、問いかけたボサボサ頭の男はあからさまに呆れた顔をする。
「……そこまで?あの
男の言葉に
「あ?あぁ……なるほど!……ふむふむ、そういう訳であるかぁ……拙僧……俺は……あの男を買っているのか?……ははっ、うむ、納得いったっ!!」
それを聞いた男は、あそこまで踏み込んだ話題をしておいて、それが意識した行動では無かったとでも言うのだろうかと、傍らで心底呆れる。
「うむ、それはさておき行くぞ、
しかし、そんなことには一切構わず、そう言った破戒僧、
第一話「
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