第38話「最嘉とミイラ男」(改訂版)
↓京極 陽子&久鷹 雪白のカットです↓
https://kakuyomu.jp/users/hirosukehoo/news/1177354054892612224
第三十八話「
――同城の一室……
「
少しオドオドとした態度で、可愛らしい女性が報告をする。
彼女は丸く愛嬌のある瞳とおっとりした口元が特徴の、長い髪を後頭部で団子に纏めた可愛らしい女性だ。
――可愛らしい……
といっても俺よりも結構年上で、見た目では判断しづらいが彼女は確か今年で二十五歳になるはずだったか?
「……」
俺は久しぶりで直に顔を合わせる
島国”
その
「当分の間は警戒レベルを下げて問題なさそうだな……
――もぐもぐ
「あ、あの……私は?」
「ああ、
――もぐもぐ
「わ、解りました」
――もぐもぐ
――もぐもぐ……
「で……お前だ」
俺たちが結構真面目な会話をしていた横の席で、独り”もぐもぐ”と……
じゃなかった、”
「?」
「いや、キョトンとしたいのはこっちだって!……せっかく
――もぐもぐ……
「わた……ひの?」
――食べながら喋るなよ……行儀が悪い
「最初にそう言っただろ?お前の今後のために色々と決めることがあるって」
「もぐもぐ?」
「たから食べるのやめろって……ってか”擬音で応えるってどんな特技だ!?」
――たく、このお嬢様は……
俺は
それは彼女が長らく
当然、
こう見えて
「もぐもぐ……わたしは……”おいしいお昼ご飯があるぞ”って聞いたから……来た?」
そんな俺の考えを汲み取る事の無い
「確かにそうも言った。しかし、その前の俺の話は全く聞いていなかったのか?」
そうだ。俺は
そもそも”話し合い”の席を食事会にしたのだって、長期任務から久しぶりに帰郷した
――もぐもぐ、もぐもぐ……
「くっ……この食いしん坊め、確かに
全くマイペースの
――
これまた
「
忌々しい”忘れん坊さん”のために、
――もぐもぐ
――こ、こいつ……
「そ、それなんですが、実は帰還する道中で、それに関する情報を持つと主張する人物が王様に会いたいと……」
――
今回の招集はそこそこ極秘裏なんだが……
彼女を
「だれだ?」
俺はきな臭いなと思いながらも確認する。
「は、はい、身柄は押さえて……あ、あります」
――おお、ナイスだ!おっとりしていてもやることはやる、流石だ!
「
俺は更に詳細を聞く。
「は、はい、監視の下で、い、今は別室に待機させてあります」
「……」
――
「わかった、会おう」
俺の返答待ちであった
「畏まりました」
カチャ
扉を開けて、外に控えていた彼女の部下である
暫くして――
「お待たせ致しました、
「やぁ!やぁ!貴方が
「っ!?」
「!?」
――ザザッ!
「う、うわっ!!な、なにするんだい、子猫ちゃんたちぃぃっ!!」
即座に周りを固める
「申し訳ありません、ご主人様。ご指示あるまで妙な行動は控えるように伝えていたのですが……」
恐縮して俺に深々と頭を下げる
「いや、良い。この者が勝手に喋りだしただけだし、
「……偉大なる
――いや、怖い!怖いって!!
この
器用で気が利き、真面目でよく働くうえ、主への忠誠心も高い。
理想の
ちょっと融通が効かないというか過ぎて過激なところがある。
「そ、そうか?……まぁ今回は大目に見てやれ、それから拘束も解いてやってくれ」
「……
ちょっとだけ不満そうに正体不明の来訪者を一瞥した
――まぁな、ここには俺以外に
「……」
しかし改めて見るその男は……
特に変わった格好はしていない。
少し厚手の旅人用の物ではあるが普通の平服姿。
体格も平均的な成人男性ほどであるし、特に目立った殺気なども纏っていない。
「えーと、その顔のことは聞いても差し支えないのか?」
「?」
俺の問いかけに、ぐるぐるに巻かれた包帯から僅かに除く二つの目がキョトンと瞬く。
「お、王様、その者は過去に顔に大怪我を負って人にはとても見せられない状態らしいです……その、あの……害が無いかは確認済みですので……」
――なるほど、顔に大怪我ね……
胡散臭いが、
「わかった、ならそのままで良い。で……ええと、俺にどんな用だ?ミイラ男に知り合いはいないと思うが」
「あ、ありがとうございます王様、はい、こ、この者は……」
「あぁイイ男だね
――!!
唐突に、またも妙に”
「そうか?だがアンタに似ていても嬉しくはないなぁ……」
俺は
「……」
真正面から俺の目を見返し、ゆっくりとお辞儀する包帯男。
――中々どうして……たいしたタマだな
正体不明男、俺にはその男の包帯の下が”ふっ”と笑った様な気がした。
「申し遅れた、我が名は
「歴史学者?」
「はい、旅の歴史学者でガスよ……どこの国の者でも無い、農民でも商人でも兵士でもない、全くもって時勢に関与しない
――なんだ?急にふざけた口調?いや、そもそも存在自体が
俺は相手の態度に不快な感情を隠せない
「……って!
「もぐもぐ?」
「だから擬音で反応……ええいっ!そんなことはどうでもいい!俺のデミグラスハンバーグっ!!」
「?」
「不思議そうな顔してんじゃねぇ!この”泥棒
「……」
「……」
「うっ……」
――な、なに?皆その視線は……
いや別に勢いだって……
お、俺だって”泥棒
思わず出た俺の寒い言葉と共に、一気にアウェーな空気になる室内。
「いや、つまりな……」
俺は取り急ぎ言い訳を探る。
「ちょっとなに言ってるのかわからない?ねこしろ?」
しかし、それを許さない非情な
――こ、この女ぁっ!自分は棚に上げて”しれっ”とダダすべりの俺の揚げ足取りをっ!!
「その
そして追い打ちとばかりに、新参の
「しつこいわっ!このミイラ男、お前なに便乗して……」
「いえ、ですからぁ……その
「はっ?」
「?」
間抜けな顔で固まる俺。
俺のハンバーグを頬張りながら首をかしげる
「……」
そしてそれを固唾をのんで見守る面々……
「ですからぁ、
「…………はぁぁぁっっ?」
第三十八話「
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