第11話「最嘉と黄金の時」(改訂版)
↓最嘉と壱と真琴、スリーショットです↓
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第十一話「
「週明け、世界が切り替わり次第に直ぐ出陣だ!
「……無理ね……こちらにも準備というものがあるわ……」
横柄な物言いで命令する男に対して、立派な応接セットに足を組んで座った女が気怠そうに返答した。
「ほう、先の
「……」
続けて侮蔑的な言葉を重ねる男にも、変わらぬ無気力な表情の女は、静かに
「黙りか……ふん、
チクチクと相手の痛いところを突く、高級スーツ姿の男は、
この
「……私は知らないわ……関係無い、現にこうやって
無礼極まりない態度をとられてもなお、特に憤慨する様子も焦る様子も無い、相変わらず気怠そうな女の方は、
それは、
そもそも向こうの世界では、小国とはいえ名目上は同盟国である。
また各国の当主はこちらでは管轄地の代表であり、その他の人間も似通った感じで相応の身分であることが殆どだ。
つまり、こちらの世界と向こうの世界は、文化や文明レベルに相違があるとはいえ、密接に関係しており、捉え方によってはほぼ同じと言っても良いだろう。
大きく違う点は、向こうは野心と謀略が
こちらは表面上は各国代表による合議の下、平和な自治が維持されている近代国家。
とはいえ、二つの世界は密接に連動しているのも事実であることから、向こうでの勢力図の塗り替えはこちらにも直ちに影響されてくるし、向こうの戦での生死はこちらの生死でもある。
では、その逆、
――それは……
「ほう?あくまでも白を切ると……」
「もういいわ、この案件は一旦保留としましょう」
同じ室内、二人のやり取りを暫く傍観していた少女が会話に割り込んだ。
腰まで届く降ろされた緑の黒髪はゆるやかにウェーブがかかって輝き、白く透き通った肌と対照的な
――
目の前で、呼び出した相手を勢い込んで追求中の
「……っ!」
尊大な態度をとっていた傍若無人な男、
ほんの僅かの間であったが、それでも長年見知った従妹の瞳には彼でさえ心を奪われる。
「ちっ!」
そんな自分に対してか、
そう、
対峙する物を
恐ろしいまでに
「……」
「ここで確たる証拠も無しに
お嬢様らしく華奢な線の少女にしては、意外と豊かな膨らみの前で腕を組んだ彼女は、暴走気味の
「出来るのか?」
「……ええ」
そんな彼女の表情を察することも無い
「なら、直ぐに呼び出せ!」
「時期が来たらそうするわ、それよりも今は
「……ふん、まあいい、俺は俺のやりたいようにするだけだ」
「……」
無意味なやり取りに呆れたのか、形の良い
理解してはいたが、
「
こうして
そして、当の
結局のところ、事態は
ーー
ー
「良いのですか?」
二人が去った応接室で、一人ソファーに腰をかける
「王位継承権第一位、次期当主たる
「それは……」
困り顔の老人を余所に、テーブル上で湯気をたてるカップをそっと手に取る少女。
「……まぁ、ある程度、手は打ってあるわ……効果の程は分からないけど……」
「え?」
手は打ってある?こんなイレギュラーな事態に?
老人は驚いた顔で主君の顔を見る。
「考え無しのああいう手合いは、背後を突っついてやるしかないわね……」
その時、彼女付きの老家臣、岩倉が確認したのは……
彼自身が入れたロイヤルミルクティーをいつも通りの澄まし顔で口に運ぶ、類い希なる美少女の姿だった。
「……」
少女の静かな”奈落の
「うん、合格」
彼女の瑞々しい紅い唇が一瞬だけ年相応の少女の綻びを見せるが、それは直ぐに横に結ばれた。
それはそれ、この時、彼女の比類無き頭脳は、既に策の修正に向けて動いていた。
ーー
ー
領主、
「
俺達の軍を前に、
「領都にある
俺の隣に控える副官、
なるほど、
敵がそれほど大軍では無いとみて一応の抗戦を試み、上手くすれば時を稼いで本国、
一見ご都合主義のどっちつかず、敵味方どちらにも評価されない下策にみえるが、その実、上手くいけば
俺達は
そういう事情を見越して、敗残の将だといって雑には扱われないだろうという目論見の上でのこの方針だろう。
”
その足下を見た
――なるほど噂に
「戦わずして勝つ……懐柔は不可能のようですね」
「俺はそもそも戦わずして勝とうとは考えていない。これっぽっちの兵力で震え上がる輩に城主なんてものが務まるわけが無いしな」
「……しかし、この城の守り……一筋縄ではいかないようですね」
なるほどと、
「……今回は、時間は向こうの味方だ、こっちは
そう言いながらも俺の脳裏には、
――焦るな……
――焦るな……
――あせるな俺……焦りは全ての終焉の始まりだ……
俺は隣に控える
「ゆくぞ!
第十一話「
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