第6話 「最嘉と食わせ者」(改訂版)
↓久鷹 雪白のイラストです↓
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第六話 「
”小国群”とは本州中央南部に位置する大国”
無論、俺の治める”
そして、この地方に多数存在する小国領、それらは三つの勢力に分類される。
一つ目は、大国”
二つ目は、それに反目する勢力、十二カ国。
そして三つ目は、どちらにも与しない独立勢力、八カ国。
俺の”
”
表向きは同盟関係だが実際は属領扱いされているのが実情で、領主と言っても、
「な?俺の言ったとおりになったろう?だからそろそろ……」
俺は馬上から俺を見下ろす、輝く銀河を再現したような
「……」
グイッ!
「いてててっ!」
後ろ手に縄で縛られた俺は、馬上にいる彼女の意思で
「って!……だからそろそろこの縄を……」
「……」
グイグイッ!!
「いてって!って!」
今度は逆方向に振られる俺。
「って!いいかげんにしろっ!
「良い加減に?」
「いやっ!違う違う!良い感じに調子をつけて引っ張れって言ってるわけじゃ無いっ!俺にそんな趣味は無い!」
「………………ざんねん」
理不尽に弄ばれることからは解放されたが、俺の上半身は未だ荒縄でグルグル巻き状態……真の自由とは言い難い。
「……あのな」
「なに?」
ーーこいつ、絶対楽しんでたよな?無表情だからって俺が気づかないとでも思ってるのか……ちくしょう!弄びやがって……
「おまえ覚えとけよ!いつか絶対、同じように縄で縛って”ひーひー”言わせてや……」
ーーザシュッ!
「うおっ!」
突如、俺の
「…………ぅ」
少し遅れてパラリと俺を拘束していた荒縄が地面に落ちた。
「なに?」
「………………なんでもない」
俺の足は据え物の
ーーいや……確かに多少セクハラ発言ではあったけど……あんまりだ
「う……えっと、とにかく、これで俺を信用するな?」
俺は自らの気持ちを持ち直させてから尋ねる。
「それはまだ……
ーーいや、お前が言うか?
俺は馬上から見下ろす見事な
ーーこの”白い天然美少女”め……白い天然……それって新発売の飲料水のキャッチコピーみたいだな……
「
ーーそうだろうなぁ
最終的には王都である
俺が考察するに、
ーー
勿論その大部隊の中には、
ーー次に、
ーー最後に、勢い込んだ敵を
どんなに精強な軍でも、どんなに大軍であっても……敵地で孤立し、本国からの補給と援軍を絶たれては戦いようが無い。
いや、
「……気の毒だが、
退路を断たれ、補給を絶たれ、帰郷の念に取り憑かれた
「……」
俺の言葉に馬上の
彼女の一見無表情な顔からは、
「
無言の
「わかってる……やっぱり
彼女の変わらぬ表情からは、やはり詳細な心情を読み取れない。
「そもそも、そういう密約だろ?」
だから俺は会話を続けたのだろう……
それは、少しでもこの少女の情報を引き出す為にだったろうか?
ーーコクリ
俺の言葉に静かに頷いた馬上の少女は、やはり感情を露わにしない。
ーーこの少女は一体……
自軍以外の
それらに対してどう思っているのか?
結局、この少女の薄い感情表現からは推測のしようも無いが……
「…………」
ーー俺はそれが……
「…………約束」
暫く間を置いてポツリと呟く
「そうだ、”
「……」
再確認する俺を見下ろす少女。
「お前が初めてだって言って……俺の話もそっちのけで嬉しそうにドリンクバーのおかわりを二十六杯もした時だよっ!」
「……っ!?」
ーーおっ?
続けて俺が放った言葉に、少女の表情に初めて反応があった!
「ちっ違うっ!!わたしがおかわりしたのは……二十四杯」
途端に彼女の白い頬が朱に染まる。
「…………いや、そこじゃないだろ」
やっと返ってきた”感情”という人間らしい反応だが、論点がズレズレだった。
「……とにかく、どっちにしてもお前が選ぶのは二つに一つだ!」
「…………」
そして仕切り直した俺の問いかけに、
「このまま……徹底抗戦してここで終わるか?それとも、さいかの策に乗って共闘するか?……でもそれは……」
あの時の”密約”に触れた俺の言葉に答えようとする少女。
「……そうだな」
俺は彼女の言葉を聞きながら多少申し訳ない事をしたと、同意する。
何故なら……
そもそも今の時点で俺が生きているのがその答えだ。
彼女は金曜日に、”
俺の策に応じた彼女は、俺同様に降伏した
ーー俺の出した条件
第一に
その代価は、
とはいっても、後者はあくまでも俺の見解であり推測に過ぎない。
なんといっても俺達、小国群連合軍は本作戦を知らされていなかったのだから……
結果的に俺はそんな不確かな情報で
勿論、俺の情報に信憑性を持たせるために……
開戦時の状況や現状、
「……わかった」
敵国”
それだけ口にした。
それは俺にすれば……一軍を預かる将の決断にしては簡単すぎる言葉だった。
「…………」
勿論そう説得するつもりの俺であったのだが、この拍子抜けな展開に俺は……
つい、彼女の端正な白い顔を暫くジッと眺めて固まってしまったくらいだ。
ーーやけにあっさりだな……罠か?
俺は一瞬そう疑う。
ーーいや、既に降伏して武装解除した俺達を罠にかける理由が無い
そして直ぐにそう思い直す。
警戒されにくくするため、信憑性を持たせるために俺は……
あえて自ら、この身どころか全軍の命運を無防備に晒したのだ。
「それは……今後の俺との共闘を了承したと受け取って良いのか?」
俺の問いに彼女は首を横に振った。
「ちがう、一部を認めて、わたしの隊は
「俺との共闘は保留で、それ以外の条件は飲むと?」
「今回の敵はあくまで
ーー言ってくれるな……
「……でも、せっかくだから”
不満な感情がつい顔に出ていたのか……彼女はそう付け足した。
ーー俺もまだまだだな……
「了承した、取りあえずはそれで良しとするよ……でも、良いのか?」
俺の問いかけは、”
このままでは
「……わたしにその権限は無いから」
しかし彼女の返答は実にアッサリしたものだった。
俺の趣旨をどう受け取ったのか?
自分は一介の将軍だから全軍の指揮権は無い?だから自分の隊だけそうする?
ーーいや、ちょっと違う気がする……もっと……なんていうか、こう……
「……」
探るように伺う俺の不躾な視線にも
ーーちがうな……これは駄目だ
今、俺が口にした言葉と態度は多少軽率であったかもしれない。
人にはそれぞれ立ち位置がある。
立場じゃなくて立ち位置。
自身がどうあるべきか?
それは自分が決めたものでも、他人が決めたものでも、場合によっては運命とか神様なんていう、あやふやなクセにそれでいて絶対的で難儀な輩が介入したものでも変わらない。
とにかく、自身がそうあるべき、”そうする事が自分”という自己確立だ。
それが俺が考える自己と他人との唯一の違いだ。
まぁ、変わらないとは言ったが、出来うることなら自分の立ち位置は自分で決めたいものだけど……
そもそもこの作戦は、利害の一致からお互いを利用しあう為であるし、それ以下でもそれ以上でもない。
人間の関係なんて、とどのつまり全てそういうものだろう。
ーー
ー
俺はファミレスでの経緯を思い出しながら、自身の頭の中で”鈴原
ーーそもそも
「…………」
俺の不注意で二度目であった質問に答えた少女は、今も同じ人形のような色の無い表情で佇む。
「…………」
それは……
彼女を戦の相手だと割り切っているはずの俺にとっても……
ーーなんだかとても寂しい空虚さだった
「…………えっ?」
小さく驚きを零す桜色の唇。
その時俺は、馬上の白い人形姫に右手を差し出していた。
「ここから先は一蓮托生だろ?」
「…………」
突然の俺の行為に彼女は無表情で”あるはず”の自身を多少忘れて……明らかに戸惑っていた。
「いいか
構わず俺は指し出したままの右手をグイと更に目一杯伸ばす。
「…………」
そんな柄にも無い馴れ合いを演出する俺の頭の中は……珍しく何も考えは無かった。
「………………さいか……は……」
ポツリと……
俺の名を呟きながら……
「喰わせ者だ……」
かなりぎこちなく……馬上から白い右手を差し出す少女。
「そうかぁ?」
「…………うん」
相変わらずの表情でそう呟いた
それでも”しっかり”と俺の手を捕まえていたのだった。
第六話 「
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