3手罪 飛車は10時に使え

「また負けたのか…?」

男が心配そうに俺の顔を覗き込んだ。


「性に合わなくてね」


ただの負け惜しみだ。

八百長でもなんでもなく、

純粋に棋力不足である事は

誰の目から見ても明白だった。


「わかってんのかよ!?

お前、次負けたら…」


「あぁ、プリズンに逆戻りだ」

俺は最大出力の笑顔を男に向けた。


「次のお前の標的は…マジかよ…!?」


「心配するな。勝つさ…きっと。」


「どこからそんな余裕がでるんだよ…」


「よく言うだろ?

飛車は10時に使え…って」


本当は自信なんて全くなかった。

あるのは敗北に対する

この上ない恐怖。


それでも戦うしかなかった。

この時は-


そして、

さらに四年の歳月が流れた。

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