第15話「Quod Erat Demonstrandum」
「さて、そろそろ本題に入ろうか? 僕に何が聞きたいんだい?」
「君に、平和へ導く為のアイディアを聞くことは?」
「アウトだな。それは僕が考える平和であって、必ずしも求められている平和とは言えない。仮に、僕が全ヴァンパイアの滅亡を提案したら、君は受け入れるのかい?」
「矢張りか、一つの案として聞いてみたいというのなら、どうだ?」
「確かに、それならグレーゾーンと言えるが、この部屋には今、ヴァンパイアしか居ない。仮に、僕が人間の滅亡を唱えたら?」
すかさず、レオンが異を唱えた。
「それは無いです、断固反対します!」
「今のが極端な例だったのは認めるが、結局は、この部屋の世界の中での平和に過ぎない。違うかな?」
「アルベルト、君の言う通りだ。君を話に混ぜた事によって、自分の考えが変人の理屈でないことを理解できたよ」
「それでは、その変人の考えを聞く前に、クレアを連れて来てくれないか? 先程も言ったように、此処には人間が居ないからね」
「否、あの……クレアさんには、
「何故だ?」
レオンは、アレスターがクレアの父母を殺害した事を明かした。
「いいかい、レオン。君のそれは、優しさではなく、同情だよ」
「同情……ですか……」
「決断したのは、クレアでは無いだろ?」
「そ、そうですが……」
「君の思いやる気持ちも解らないでは無いが、それだとクレアは、前に進めない」
「前に?」
「あぁ、そうだ。今、クレアを癒すのは鷹也しか居ないだろう。しかし、鷹也は行方不明で……」
そう言ったところで、アレスターが会話を
「ちょっと待て! イマジニアに居るエクリプスは、何だ?」
「影武者さ」
「あぁ~、言われちゃったよ」
「バウアー、レオンもだが、何故、隠す必要がある?」
それをアレスターが、代わりに答える。
「エクリプスが居ないとなれば、人間界は混乱し、イマジニアは崩壊するだろうな。ヴァンパイアの侵攻も始まる、と考えたのではないか?」
「その通りだ。そうなれば、大きな
「アレスター、君の事だ。もう判っているのではないか?」
「あぁ、エクリプス=鷹也で、憶測が確信に変わったよ。俺の親父を殺したのが鷹也と言われ、俺を撃てなくなるんだ。そうなると、此処へ来た理由が説明できない」
アレスターを撃てば、それは亡命をカモフラージュにした暗殺目的となり、逆に撃たなければ、鷹也から離れ、亡命して来た理由が無くなる。
「また、クレアがトータルエクリプスに狙われる意味も無い筈だ、大量破壊兵器の指示は、鷹也であるエクリプスがすれば良いのだからな」
「ご明察」と言って、アレスターに拍手を送るアルベルト。
「矢張り、あの時、言わなければ……」
「レオン、それでもアレスターなら、数日も掛からない内に答えを出したよ。それにね、レオン、もう人間側にエクリプスの必要が無くなるんだ」
「どういう事ですか!」
「忘れたのかい? 僕に兵器を依頼する場合、設計図が無ければ作れない」
レオンは、その言葉に青ざめる。
「設計図は在るんだよ、対ヴァンパイア用中性子爆弾の設計図がね」
「なんだと!」
アレスターは、脇に立っていた執事に指示する。
「リヒャルト、各国王へ伝達」
「待て! アレスター、まだ時間は在る」
「お前に依頼する前に、作業に入っていたとしたら、いつだ! いつ完成する!」
「僕の計算では、あと三ヶ月だ」
「おいおいおいおい、計算機が狂ったか? イマジニアは、地上の六割を占めてるんだぞ! 開発場所を三ヶ月で、探し当てろってか!」
「目星は、既に付けてある」
「目星だ? ふざけるな! 俺は、全てのヴァンパイアの命を預かっている王だ! 100%で無ければ、お前の指示は受けん! リヒャルト、各王へ伝達、
その時、執務室の扉が勢いよく開いた。
「待ってください!」
クレアの声は、まだ震えていた。
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タイトルを『Q.E.D.』と略せば、解る人も多いかな?
そう、証明の終了です。
「最早、話し合う時間も、価値も無い!」
「は、話し合う、か、価値は有ります!」
「どんな価値だ?」
クレアが出した、答えとは?
次回「平和という名のベクトル」
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