第4話「Rewrite」
「撃て、フェリオス! 全ての妖気が
そう泣き叫ぶグレイスに、冷ややかな視線を送るフェリオス。
確かに神気を変換しているようだが、泣くほど
まぁ、いいだろう。
親父には、お前一人で叱られるんだな!
久しぶりに、自身が持つ最高の技を繰り出せる喜びを噛み締めながら、フェリオスは詠唱する。
フェリオスの右手に広がる火球は、徐々に熱量を増し、ジリジリと周りの物を焦がし始めた。
「いくぜ、ドラキュラ! 俺のブレイズは、太陽よりも暑いぜ!」
グレイスは、ブレイズの攻撃範囲から、否、鷹也から逃げるように雲の高さまで上昇する。
放たれたブレイズは、鷹也を中心にして、海岸沿い2キロを一瞬にして蒸発させた。
「親父は、見ている筈だ! ブレイズを止めないということは、間違いなくアイツが標的だったということだ。お願いだ、早く終わってくれ!」
そう言って、自分の仮説が間違いであって欲しいと、震えながら両手を合わせ、瞳を閉じて祈ったその時、何者かに肩を掴まれる。
驚いて振り返れば、そこに居たのはグレイスにとって――絶望だった。
「今まで、ご苦労だったなグレイス」
グレイスの声にならない悲鳴は誰にも届かず、
突然、現れた大きな神気に気付き、フェリオスは空を見上げれば、翼の無くなったグレイスが堕ちてくるのが見えた。
「グレイス! ん? 何だアイツは……お、親父なのか?」
遠くに見える父らしき男は、自分の知っている年齢とは明らかに違って見えた。
――今は、そんなことよりも、落下するグレイスを!
グレイスを助けるべく、翼を広げたその時、何者かに背後を取られた。
それを察したフェリオスは、背後を取ったのはドラキュラ(鷹也)だと思い、渾身のバックナックルを放つ。
だが、その右拳は軽々と受け止められた。
「な、何で親父が?」
掴まれた拳を離そうとするが、クロノスがそれを許さない。
「なんなんだ、親父! 離せ! 離せよ!」
必死で腕を振るも固く外せない、そして、次第に力が抜けて行く感覚。
「な、なんだ? や、止めろ! 何故、俺から神気を奪う!」
フェリオスはクロノスに、鋭い後ろ蹴りを放ったのだが、掴んだ右手首を
「くそがー!」
神気が奪われるに連れ、更に若返って行く父を見て、フェリオスは遥か昔に聞いた、腹違いの兄の言葉を思い出した。
それは、父に逆らい、自分が処刑した、兄の最期の言葉。
――お前も、お前も、いつか親父に喰われるぞ!
「ケ、ケイオスの言った事は、本当だったのかよ! それだけ若返ったんだ、神界の使徒全ての神気を喰らったな? 親父!」
迷ってる暇は無いな。
フェリオスは、覚悟を決め、詠唱する。
「ブレイズ!」
1800万度の熱が二人を覆ったのだが、それでも、手は離れない。
「お前に熱耐性が有るのに、
「何故だ? 何がしたい?」
「それをお前に、教える義務は無い!」
いいぞ、話に乗ってきてた。
ドラキュラが目覚めたのを親父は、未だ気付いちゃいない!
「どうせ殺すんなら、冥土の土産に教えろよ」
「お前の浅はかな悪知恵に、気付かんと思うか?」
そう言って半身ズラすと、そこから伸びてきた鷹也の右腕によって、フェリオスの胸が貫かれた。
こうして、
鷹也は、フェリオスを貫いた腕を外し、クロノスに対峙する。
クロノスは、顎に手を当て、小首を傾げた。
「うん? まだ、足らんな……」
「何を言っている?」
「試してみるか……」
そう言うと、クロノスは手を
すると、一瞬にして鷹也の姿が消え、着ていた服がその場に落ちた。
「さぁ、アンデッドのDNAよ、再びその身を戻し、神気を高めよ!」
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[補足]
父(神)の名前については、少し悩みました。
クロノスにすると、速攻で『時を司る神』と解るネタバレだからです。
だから、違う呼び方のカイロスにしようかとも思いましたが、
「いや、逆に神話好きにはキャッチーなのではないか?」と思いw
クロノスのままで、行く事にしました。
さて、物語が、心の中の台詞だったものを口で言ってたり、逆だったりと、少し前と違うのは、クロノスが干渉し歴史が書き換わったということです。
ですので、そう言う意味での「Rewrite」というサブタイトルなのです。
再び、ヴァンパイアとして、書き換えられる。
次回「リライト」
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