第1話「決着」
「我が名は、エクリプス。
メイヲールは、自分を
それは、自我が芽生えた時より、自分より強い者など、この世に存在しなかったからだ。
手を振れば終わる、そんな相手ばかりで、同族でさえも同様だった。
ドラキュラを500匹狩った時でさえ、ただ害虫を駆除したような、つまらない闘いだった。
やっと出会えたと思った相手(カイル)も、十分楽しめることの無いまま、
心行くまで、力と力の勝負がしてみたかった。
メイヲールは、ずっと好敵手を望んでいたのだった。
しかし、それは自分が圧倒的優位な立場であってこそだと、初めて思い知らされる。
次第にそれは、屈辱よりも死への恐怖へ変貌し、それがすぐ傍まで来ているような錯覚にさせられた。
かつて、アルベルトに封印された時でさえ、死への恐怖など感じてはいなかった。
だが、目の前のエクリプスと名乗ったドラキュラが、そうさせているのである。
自分の攻撃は確かに捕らえている、しかし、拳に殴った感触が僅かに伝わってくるものの、手応えが感じられない。
更には、
メイヲールは、得体の知れない気味の悪さに、困惑し、恐怖した。
このまま押していけば、コイツを葬れる!
鷹也は、手応えを感じていた。
ハッキリとした理由は解らないが、メイヲール並の再生力が備わり、攻撃も押している。
闘いの中で得た、技が自分を優位に導いている。
ふと気づけば、闘いに高揚している自分に気づき、そのせいなのか、不思議とウォレフを殺された怒りは、無くなりはしないものの、
疲れを見せた時が、勝負だ。
実際、メイヲールの5倍以上動いている鷹也の方が、体力の消耗は激しいのだが、まるで皮を剥ぐように身を削られる精神的な疲労はピークに達していた。
再生能力は在っても、痛みが無い訳ではない、仮にメイヲールの攻撃が当たっていたならば、痛みを忘れるほど高揚していたのかもしれない。
混乱が混乱を呼び、メイヲールの動きを大きくさせた。
鷹也を狙ってるのか、城を破壊したいのか、他者で判断できなくなるほど、大振りになる。
それを鷹也は見逃さず、左膝から下を斬り落とした。
焦ったメイヲールは、まだ左に居る鷹也へ、大きく拳を振り下ろしたが、それもまた、感触のある手応えの無いもので、振り切った分だけ隙が生まれ、右腕まで斬り落とされる。
メイヲールは、
鷹也も逃がすまいと、それを追いかけたが、メイヲールはそれを嫌うように、残った左手と羽根で竜巻を起こし、城の中へ吹き飛ばす。
その時、陽の光がメイヲールを照らす。
ソウダ! 城ヲ壊セバ! 太陽ニ!
メイヲールは幾つもの竜巻を起こして、城を破壊し尽す。
これによって大きな二つの妖気は、この星を包み、世界中で激しい警告音を鳴らすのであった。
再生能力が同じであれば、陽光による損傷よりも、再生速度の方が速いのは同じである。
最早、冷静な判断が出来なくなっていた。
そして、鷹也にはアルベルトのローブが在る。
迫り来る鷹也に恐怖しながら、連続で竜巻を繰り出す。
それは攻撃するためというよりも、自分から離したいがために起こしたような物だった。
竜巻の間を擦り抜けるように、近づいて来る者に恐怖しながら、泣き叫ぶ。
「何故ダ! 何故、燃エ尽キヌ!」
駄々っ子のように、手足を振り回すメイヲールの両翼を斬り落として、地上へと叩き落した。
「剣ダ! アノ剣サエ、奪エバ……」
考えが口に出てしまうほどに、混乱していたメイヲールの目の前へ、鷹也は剣を放り投げた。
剣しか見えていないメイヲールは、それに
「何処ダ!」
「終わりだ!」
その声は、胸元に存在し、見下ろした時には既に遅く、発光する右手を携えたエクリプスは、その拳を振り切って、胸を突き抜けた。
心臓を壊されたメイヲールは、再生能力を失い、陽の光によって焦がされ、死の恐怖に怯えながら、燃え尽きた。
「終わった……」
精も根も尽き果てた鷹也は、その場に仰向きに倒れた。
久しぶりに、鷹也は太陽を直視した。
ヴァンパイアに成ってから、太陽を直視したのは、これで二度目。
カイルとの闘いで太陽の暑さを知った、あの時以来だった。
ローブは着ているものの、久しぶりに太陽の暖かさを思い出していた。
「ん? なんだ? 鳥か? 違う!」
白き衣、白き翼を携えた、二人の青年がゆっくりと舞い降りて来た。
なんだ、こいつら?
妖気は一切感じられないのに、危険な感じがする。
その危機感で、立ち上がった鷹也に対し、一人の青年が拍手をしながら近づいてきた。
「まさか、メイヲールを倒すとはな。お陰で、仕事が一つ減ったよ」
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あたんら、一体、何者なんだ?
我々自身、種族的な名前を付けてはいないのだが……お前らは、我々のことを神と呼ぶぞ。
次回「使徒」
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