第6話「狼と鷹」

 ――平和。

 その言葉を実現する為に、イマジニアは進化を遂げてきた。

 ヴァンパイアが存在するこんな時代で、独立し平和を維持いじするには、装備や医療は勿論のこと、様々さまざまな分野で発展する必要があった。

 待遇を良くすることで人材を募り、研究に多くの国費を投入してきた。

 人材が人材を呼び、そして、最新技術が生まれることで、更に研究者たちを呼んで、現在の要塞とまで呼ばれる国までになったのである。


「大きな妖気を持った者が、あと5分ほどでコチラに来ます!」


「ヴァンパイア用、対空追尾ミサイル用意、撃て!」


 一発のミサイルが唸りを上げ、ヴァンパイアに向かって飛んで行く。

 そのミサイルが、接触まで3kmを切った所で破裂すると、中から1000発の小型ミサイルが、妖気を感知する相手に襲い掛かる。

 しかし、エクリプスは動揺することなく長剣を抜くと、それをことごとく斬り払って、進路を変更しないまま一直線にイマジニアへと向かう。


 エクリプスの視界にイマジニアが入った頃、今度は壁面に配置された無数のレーザー砲が、エクリプスを狙う。

 しかし、レーザーは正確にエクリプスを捉えたものの、エクリプスが羽織はおるローブによって全て跳ね返され、傷一つ与えられないまま、審査エリア前の正門まで侵入を許してしまう。


「止まれ!」


 憲兵の指図に耳を傾ける事なく、黒衣の侵入者エクリプスは、堅く閉ざされた正門の前へと歩み出した。


「武器を所持したまま、入国させる訳には行かん!」


 前に立ち塞がった憲兵に、エクリプスは長剣を向け、


退かぬなら、斬る」


 異常事態を知らせる警告音が響き渡ると、横幅30mからなる鋼鉄の正門を隠す程に、憲兵が集まった。


「狼でも、群れるんだな……」


 兵達に聞こえたかどうかは、定かではない。

 その時、突如として門が開き、この国の王が現れる。


「狼王ウォレフだな、エクリプスの名において、貴様を狩りに来た」


 ウォレフは、憲兵達を門の中へ入るように指示する。


「俺には、敵が多い……人にも、ヴァンパイアにもな。だが、お前が俺の敵になるとは思わなかった。やはりハンターは、ハンターでしかないのか?」


「貴様は確かに、王として素晴らしい。殺すには、実に惜しいのも確かだ……だが、貴様の後は、どうなる? 良き王に成ると言えるか?」


「芽は摘むと言う訳か……ならば、ヴァンパイアを狩った後……人も狩るのか?」


「あの世で、その答えを待つんだな……月は満ちた、あとは欠け逝くのみ」


 風よりも速く襲いかかるエクリプスをウォレフは右の拳1つで弾き飛ばした。


「随分と舐められたものだな。人のままで、俺を狩れるとでも思ったか? ラズウェルドをった時は、そんな程度じゃなかったろ?」


「そんなに見たければ、見せてやる!」


 エクリプスは、心のおもむくままに妖気を解放した。


「ほぉ……その力で、カイルを狩ったと言う訳か?」


 会話に興味のなくなったエクリプスは、それに答えないまま長剣を振り出した。

 エクリプスの剣は速く、ウォレフに攻撃へ転じるこを許さない。

 防戦一方だったウォレフは、後方に大きく跳んで、間合いを開き、攻撃に転じるために構える。


「その程度で、よくカイルに勝てたな。今度は、私の番だ! よく見るがいい!」


 まるで突風のような妖気が、ウォレフの体から吹き上げていく。

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