第94話 一夜明けて
下切 雀 Suzume_smgr
気づいたら、猫ハウスが酔っぱらって記憶を失くした人と、記憶は朧げにあるけど二日酔いで頭の痛い狗猫雀がいる謎の空間になってたチュン
『返信』
猫神 雫 Nekogami_shizuku_atplus
雀ちゃん水取ってきて~~~!
下切 雀 Suzume_smgr
自分で行くチュン
◆◆◆
「じゃあ、朝ごはん作りますね~」
「あ゛~い゛」
見事に二日酔いでダウンしてる3人。
結構な深夜まで宴は続いていたらしい。
ダメージが比較的少ない私は、死屍累々な有様の3人を横目に、掃除をしている。
「冷蔵庫のなか、好きに使っていいからね~」
「はーい」
私の次ぐらいにダメージの少ないわんへさんだけど、それでも起き上がる気にはなれないらしく、クッションに顔を埋めている。
卵焼きとみそ汁でも作ろうかな。
日本の朝ごはんってやつだ。
朝っていうにはもう11時過ぎで遅い気もするけど。
___ふふーん、ふふふーん
リズム良くネギを刻み、自然と鼻歌が漏れ出す。
料理は好きだ。
何かを仕上げるための工程が全部繋がって一つの料理になるのが気持ちいい。
もちろん、美味しいって食べてもらうのも好きだけど。
部屋にみそ汁の匂いが漂い出したとき、のそりと、スマホ噛り付き虫になってた寧々が起き上がってきた。
「お腹空いた」
「もうできるよ。ご飯ついでくれる?」
「あい」
「私も手伝うよ」
「あ、わんへさん。大丈夫ですか?」
「ありがとう、彼方ちゃん。やっとマシになったよ。雫はまだ沈んでるみたいだけど」
片付けた机の上に卵焼き、みそ汁、白ご飯、ふりかけを並べる。
「雫、ご飯できたよ~」
「あい……食べる……」
ベッドからのそのそと起き上がった猫神様はまだしょぼしょぼした目で、座った。
「じゃあ、いただきます」
わんへさんの音頭を機に、いただきますと手を合わせて、朝ごはんを食べる。
まずは卵焼きを一口。
うん、美味しい。
「いつも通り、美味しい。ありがとね」
「美味しいよ彼方ちゃん」
「美味しい……頭痛いけど……」
みんなにも好評なようで安心する。
にしても大人数の朝ごはんなんて久々な気がする。
温かいご飯のおかげだけじゃない温もりを感じながら、自然と笑顔がこぼれた。
「じゃあ、私たちはそろそろ帰りますね」
時刻は午後1時。
そろそろお暇の時間だ。
「昨日はありがとね、彼方ちゃん」
「いえ。こちらこそ、最初に私に相談してくれてありがとうございます。嬉しかったです」
「これからは最初は私に相談してほしいけどね~」
猫神様の言葉に、わんへさんが視線を逸らす。
嬉しかったけど、それはそうだと頷いておく。
「ばいばい、また夜にね」
「夜?」
「うん、雫ちゃんと今日コラボの予定だったから」
「タフだね~」
わんへさんの言葉に同意する。
すごい元気だ。寧々が高校生だったときよりも元気だ。
「彼方ちゃん、また遊ぼう」
「はい、また遊びましょう」
たぶん、私はわんへさんが、沙雪ちゃんだったって知ったときから少しだけ前よりも一歩引いた位置で接してしまっていたと思う。
こればかりは仕方がないというか、しょうがないというか……
でも、やっとまた私はわんへさんという一人の友だちと一緒に、過ごせたような気がした。
手を振って、別れる。
隣には寧々がいて、二人の姿が見えなくなった辺りでその手が私の手をぎゅっと握った。
「……うわきもの」
「えぇ……」
手の温もりと一緒にとんできた冷たい刃に、変な声が漏れる。
「冗談。でも、外でお酒飲むときは言って。彼方は危ないから」
「でも最近というか今回はちょっと自重できてた気がしないでもないよ?」
「記憶ないのに?」
「……うぐぐ」
なんか猫神様が、わんへさんに指輪をおねだりしてて、いつか渡すみたいな言質を取ったことだけは覚えてるんだけど。
「私が来た後、二人の前で私を抱き枕にしだしたりと暴れてた」
「うっ、それは申し訳ないと思っており……」
「いいよ。私も今日じゃないけど、この前、酔っぱらって彼方に凄いことしちゃったし」
「すごいこと……?ちなみになにを……?」
「んー、内緒」
私の問いに、寧々は悪戯気に笑った。
その笑みに見惚れてしまったのは惚れた弱味というのだろう。
まあ、寧々にならいいや。何をされても。
赤くなった頬が寧々から見えないように、私はぎゅっと寧々に体をくっつけた。
______________________________________
遅れました。
次回からVTuber下切雀としての2年目が開始します。
次回投稿は金曜か土曜。
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