第85話 1周年記念配信(2)
「ということで2人目はツユキちゃんにきてもらったチュン」
「雀の餌のみなさんこんばんは。雀さんと一緒にファンマイ縛りプレイをするという夢が叶いそうでウキウキのいつも通りの
『いつも通りの露木ちゃんだ!』
『いつも通りかわいい!』
『いつも通りのファンマイジャンキーきたな』
「チュンはまだ死にたくないチュン」
「大丈夫です。死ぬときは一緒なので!」
「こわい……」
「というのは冗談ではないのですが、まあ置いといて。雀さん、1周年おめでとうございます!そしてあらためてお礼を言わせてください」
お礼?
そう首を傾げた私に、ツユキちゃんは咳ばらいをする。
「あの日、露木静を救ってくださり、ありがとうございました。雀さんがあの時、来てくれなかったらもしかしたら露木静はこの場には居なかったかもしれません。誰にも見つけてもらえなかったかもしれません。大きなイベントにお呼ばれすることも、たくさんの友だちができることだって。きっとなかったでしょう。だからあらためてこの場を借りて、自分の想いを伝えることを許してください。初めて会ったあの日から雀さんは私のいちばんの推しです!大好きです!」
ツユキちゃんの言葉に、固まってしまう。
あの時はきっとツユキちゃんの無謀な初配信の日で、それを柄にもなく助けようなんて思ってしまった。
結果ウケた。だけどそれは結果論でしかなくて、後悔のようなものもあったと思う。
だけど、私の行動で、露木静という一人のVTuberを救えたんだと彼女は言ってくれた。
「嬉しいな……」
自然と口は開いていた。
面と向かっての感謝や好意は少しこそばゆいけど。
『てぇてぇ・・・』
『雀ちゃんが露木ちゃんに凸したんだっけ』
『コメント欄も荒れも荒れてたからマジで雀ちゃんが救世主だったんだよな』
『素の雀ちゃんというか、今の噛みしめるみたいな嬉しいなでオタクは死にました』
「ありがとうチュン!チュンもツユキちゃんのこと大好きチュン!」
「えへへ、大好きなら一緒にファンマイしてくれますよね……?」
「ははは」
「空笑いやめてください」
「長丁場になるチュンから後で一緒にスケジュールの調整するチュン」
「しゅき……」
『秒で落ちとる』
『しゅき草』
『やだ雀前』
「じゃああらためて凸してくれた人に質問を用意してるチュン。第一印象を聞くのは野暮チュンね。下切雀としたいことはまあ分かってるとして……あれ?チュ、チュンの会話デッキが……!?」
「たった2つで……!?」
「冗談チュン。ツユキちゃんには下切雀にやってほしいことを聞きたいチュン」
「やってほしいこと……やってほしいことですか。私としては雀さんがのんびり配信をしてくれるだけで嬉しいのですが、そうですね。しいて言うなら……甘やかしボイス?」
「甘やかしボイス」
「配信でいいので雀さんに甘やかされたいです。朝起きるの辛いときとかは起きろ~ちゅんって甘い声で囁かれたいです」
「甘い声で」
『固まってて草』
『カラカサ:私も甘やかしたい』
『雀がオウムになっちゃった』
あ、カラカサママだ。
有名なイラストレーターさんでツユキちゃんのママだ。
ツユキちゃんを溺愛していて、ツユキちゃんの配信に常にいることで有名だ。
にしても甘やかしボイス……
羞恥心との戦いになりそうだ。
「……熟考させていただくチュン」
「楽しみにしてますね!」
うぐぐ、そんなに楽しみそうな声を出されたらいつかやらないとなやつだ。
「あ、そうだ。私、ファンマイ以外で雀さんとやりたいことがあったんですよ」
「なるほど?」
「題して関係性コラボです」
「関係性コラボ?」
「はい!私とカラカサママ、雀さんと飼い主さんみたいなV以外で独自の仲良しを持つ人で集まって、対談みたいなことしたいです」
「ほぅ、面白そうチュンね!」
「まだしたいなぁって段階ですけどもしすることになったらぜひご一緒にしたいです!」
「わかったチュン!」
「ではそろそろ私はお暇しようと思います!雀さん、あらためて1周年おめでとうございます!」
「チュン!ツユキちゃんもありがとうチュン!」
「いつも通りの露木静でした!」
ぽろろん。
ツユキちゃんが通話から抜ける。
「というわけでツユキちゃんにきてもらったチュン!大切なVの友人チュン!概要欄にチャンネルへのリンク追加したチュンからまほろちゃんもツユキちゃんも登録してない人は登録するチュン!」
『既に登録してた』
『します!』
『露木ちゃんかわいかった』
「そうチュンそうチュン、ツユキちゃんはかわいいからみんなもぜひファンマイで初見殺しに発狂してる動画も見てほしいチュン」
『草』
『鬼畜雀出たな』
『あの時の声で全部に濁点ついてる感じで好き』
ちなみにMetubeで露木静と検索に入れるとサジェストに発狂が出てくる。
ファンマイの初見殺しモブ三本の指に入る『王家の墓守』
甲冑を着た騎士の姿をしているモブは、裏にまわってバックスタブを入れると何故か自爆してプレイヤーのHPを9割削ってくる悪魔のようなモブだ。
ただでさえ硬いのに正面から戦わないといけないクソモブと呼ばれる存在だ。
ツユキちゃんは王家の墓守の初見殺しに引っ掛かかり、爆発の衝撃で奈落に転落してせっせと稼いだお金の全てを失った。
悲しい事件だったチュンね……
「さあ次の方がきてくれるみたいチュン。次はチュンの中で若干ライバル意識のあるあの人チュン」
通話に入ってくる鷲宮の文字。
「こんばんは。
「私もいますよ~」
「え」
通話鯖に表示されているのは鷲宮さんだけ。
だけど別の声が聞こえてくる。
つまり鷲宮さんと一緒に誰かがいる……?
『これ、千虎ちゃんじゃない?』
コメントの名探偵の言葉に、頭脳がフル回転する。
確かに思い出してみればさっきの声は、鷲宮さんと仲良しの
つまり導き出される答えは……!
「え!同棲!!!!」
「何言ってるのよ……」
「どどどどど、同棲違う!ます!」
『百合雀』
『ガバ百合判定雀』
『女同士の関係性は全て百合へと収束する』
「冗談チュンよ。でもあれ?同じマイクから声がするってことは鷲宮さんの家に千虎ちゃんがいるってことじゃない?雀は訝しんだ」
「普通に千虎が家の電気料金払い忘れてて電気止まったからうちに泊まってるだけよ」
「それは普通じゃないチュン……」
『千虎ちゃん、支払い忘れがち』
『マジで一人暮らしに向いてないタイプ』
「まあまあまあ、いいじゃないですか。細かいことは」
「殴るわよ?」
「暴力はんたーい!」
仲良しの会話に、ニコニコになってしまう。
『雀ちゃん、あからさまにニコニコしてて草なんだな』
『ちゃんとオタクしてて好きだよ』
『この2人の仲良しに口角が破壊される』
「じゃああらためて自己紹介お願いするチュン!」
「Virtual Gamers@プラス所属の格ゲーマー、鷲宮 梅雨よ。雀の餌のみんな、今日はよろしくね。そして雀さん、1周年おめでとう」
「雀の餌のみんな!今日も千虎は生きてるぞー!長時間配信なら私に任せろ!鬼畜系VTuberの千虎 七瀬だよー!今日は雀ちゃんの1周年をお祝いにきたよー!おめでとー!」
「2人ともありがとうチュン!」
3人目と4人目は人生ゲーム大会で、猫神様と一緒になった2人がきてくれた。
______________________________________
少し短め。
次回更新早め。
軽率百合判定はオタクの
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます