第80話 飼い主さんといちゃいちゃするチュン!あとくえすちょん読みと近況報告(2)

「R18タグは棲み分けするために必要なものだから必要チュン。餌の中にもチュンたちの叡智なイラストを描きたいって人もいるチュン」


「……いや、描く人は検索除けとかして描いてるから必要ないと思うんだけど」


実際、観測してたりする。

ありとあらゆる検索除けをされてツイートンの海を漂う飼い雀のイラストは私の秘蔵ブックマークに保存されている。


「で、でもタグがあることで描いてみようかな、って人も増えると思うチュン!」


「つまり?」


「もっとわかりやすいところで、飼い雀のぬめぬめな絵を出してほしいチュン!」


『やっぱりえろ雀じゃねーか!』

『雀ちゃん、ネットにそんなに聡いわけじゃないから……』


「そうチュン!配信を始めるまでSNSとか全然やってこなかったチュンから検索除けとかされたらよく分からないチュン!」


「あはは、雀はあんまりSNSとかやってこなかったから難しいかもね。そういうときは絵文字の組み合わせでCPを表してたり、CP名をアルファベットにして『あかさたな』だとしたらakstnとかで表現されてたりするよ。あとはその人たちをフォローなり、リストに入れるなりして、RTとかから新たなる人を探したりするってのが基本的な手段かな」


『やめろやめろ』

『ひえっ……ゆるして……』

『ころしてくれ』


「ちなみに飼い雀でやってるってわけじゃなくて、昔ハマってたアニメの2人でそういう感じで探してただけだよ」


嘘だ。ぜんぜんやってる。


「……まあ、でも、そうだね。一応、私たちは半分は生モノなわけだから、嫌な餌の人もいるかもだし、タグをつくるのはいいかもね」


隣でツイートンの検索欄に『kiszm』で検索を掛けていた寧々は、ややバズってる飼い雀のやや叡智な漫画を見て、満足気だ。


「そうとなったら今直ぐ作るチュン!案とかあったらどんどん送ってきてほしいチュン」


「ちなみにだけど、飼い雀限定のR18タグなの?」


「個人のやつは飼い主さんの脳が心配チュンから今回は飼い雀だけチュン」


「ぐうの音も出ません」


『草』

『軽率に脳が破壊される飼い主さん』

『逆もしかりなんだよなあ……』


R18タグねぇ……

雀のFAファンアートは#チュンアートで、私のFAはか絵ぬし。

飼い雀のFAは#飼絵雀だ。


思いつかないなぁ、と思っている相手に、雀の餌のリスナーさんの大量のアイデアがコメントに流れてくる。


その中で、いいなと思ったのはこの2つだ。


『飼絵ろ雀』

『飼絵雀春画』


「飼絵ろ雀と飼絵雀春画は良さげだ」


「チュンはえろ雀じゃないチュンから後者が良さげチュン」


「ははは、まあ、確かに後者はシンプルだし結構良さそう」


『めちゃくちゃ乾いた笑いで草』

『飼絵雀春画、確かに良さげ』

『個人的には飼絵ろ雀は直接的すぎておもろいから好き』


リスナーさんのなかでも賛否両論ではあるけど、やや春画のほうが支持率は高めだ。


「じゃあ、今からチュンたちの叡智なイラストは飼絵雀春画に投げるチュン!RTはできないチュンけどいいねはするし見るチュン!」


ツイートもしておく。


下切 雀 @Suzume_smgr


配信で飼い雀のR18タグが決まったチュン!


#飼絵雀春画

今日からはチュンたちの叡智なイラストはこのタグをつけてくれたら嬉しいチュン!


下書きを寧々に見せると目を通して、こくりと頷かれた。


「決まったタグをツイートしたチュン!」


「無理にこのタグ使う必要はないからね。見られたくない!って人もいるだろうし」


そう付け加えて、次のくえすちょんを確認する。


次のくえすちょんは私も気になっていたものだ。


【ステラちゃんとのコラボの予定はありますか?】


「あるチュン!だからこのくえすちょんを確認した後すぐにステラちゃんに連絡したチュン!コラボ日は都合がつかなくなることもあるからいったん伏せておくチュン!」


『了解です』

『たのしみ!』

『ステラちゃんとかいう新人なのに話まわすの上手すぎてちょくちょくデカい繋がり増やしてる新進気鋭』


ステラさんはこの前、千虎ちゃんと配信していたし、色々な個人勢と繋がっていて、企画に呼ばれたりしている。

その企画には結構な大物Vもいたし、なんならそのVと雑談配信していたりで、人脈の広げ方が爆速だ。すごい。


「凄い娘を持ってチュンも鼻高々チュン」


『ステラ・カンパネラ:うちも最高のママに生んでもらえて鼻高々やよ~!』


『草』

『ステラちゃんもようみとる』

『親子てぇてぇ』


「でもこの場合、チュンがママならパパはモデラーさんってことに……?」


「軽率に私の脳を破壊しようとするのやめようか」


「がはは」


『山賊笑い草』

『雀ちゃん、最近飼い主さんの脳にダメージ与えるのプチブームになってるから……』

『なお逆は許さない模様』


「ははは、逆は許すつもりないチュン」


スン、となった声がする。

寧々の方を見るとハイライトの消えた目で私を見上げている。


「ひえっ」


『今の雀ちゃんの声、ぞくぞくした』

『雀ちゃんが横見てるのは飼い主さん見てるのかな』

『ひえっ、ヤンデレ雀だ・・・!』


「まあ、飼い主さんがチュン以外に興味を持つなんてありえないことチュンけどね」


『飼い雀てぇてぇ』

『たすかる』

『てぇ……てぇ?』


……まあ、これからも寧々のことを嫌いになるなんて絶対ないんだろうな。

そんなことを思いながら、雀の言葉に乾いた笑いをもらす。


でも真意は伝わったのかそうでないのか、寧々は満足そうに鼻を鳴らした。


◆◆◆


「じゃあみんなおつずめ~!」


時刻は23時半、今日はいつもより長めの定例会議だった。


別れを惜しむたくさんのコメントが流れていき、寧々が配信を切る。

それをちゃんと確認して、寧々は私の膝によいしょと乗ってくる。


「どうしたの?」


「それ聞く必要ある?」


「ないねぇ」


膝を乗るぐらいでわざわざ許可を取る必要のないぐらい、普段から膝を私有地としている寧々が私に頭を預けて、ツイートンでエゴサをする。


寧々の心地の良い匂いに包まれながら、寧々のエゴサが終わるまでのんびりと胸を貸していた。

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