第74話 ステラ・カンパネラ

ステラ・カンパネラ


初配信の待機所ができたよ~~~



ステラちゃんの初配信は今日の21時からだ。

ツイートンのステラちゃんのツイートにも1000を超えるいいねがついていて、個人勢の初配信とは思えないぐらい賑わっている。


現在の時刻は20時57分。

寧々はテレビでMetubeを開き、コンビニで買ってきたお菓子と飲み物お酒を机に置いてソファに座り、待機中だ。

コークハイの缶を二本、既に空にしていて、わくわく、と身体を揺らしながら楽しみにしている。

やや酔っ払い気味だ。


「もう直ぐ始まるよ」

「今行く〜」


寧々に呼ばれてソファに座ると、隣に置いてあったピンクのペンライトを2つ渡してきた。


応援上映かな?


寧々を横目に、スマホを見ていると時刻が21時になる。


21時に公開予定と書かれた待機所の画面に、一瞬ロードが入ると、配信が始まった。


淡いブルーのオーバーレイを使った配信画面。

左にはコメント欄があり、リアルタイムでコメントが流れている。

右上には現在の時刻が分刻みで表示されている。


だが肝心のステラちゃんはいない。


と、思ったらリンゴーンリンゴーンと鐘の音が鳴り響き、同時にぴょこん、と画面の下の方から桃色の髪が飛び出してくる。


ずぬぬ、と下からゆっくりと上がってくるステラちゃん。


やがて肩まで配信画面に映りきったステラちゃんは、可愛らしい猫口を開いた。


『鐘の音は、星がやってくるのを知らせる合図!その姿は綺羅星の如し!ステラ・カンパネラだよ~!』


コメント


:うおおおおお!!!!

:想像通りのお声だ……しゅき……

:口上かっこいい!



コメントが流れていくのを見ながら、桃色のペンライトを軽く振る。


『おー!思ったんよりたくさんの人がきてくれてるねぇ〜!みんな、ありがと~!』


ステラちゃんの関西訛りが混じった言葉が沁みる。


『今日は初配信ってことで、参考までに他の人の初配信をチェックしてたんやけどなんかみんな30分ぐらいで終わってる人多かったからうちもだいたいそんぐらいで終わる予定かな。今日は自己紹介メインでファンネーム決めとかあと軽い雑談、くえすちょん返しはまた次の配信でやるからどしどし送ってきてな~』



『じゃあ、さっそくプロフィール書いてきたから一緒に読んでいくよ~!』


マウスのクリック音がして、画面に全身の立ち絵とプロフィールが表示される。


名前:ステラ・カンパネラ


平行時空からこの時空の日本に飛ばされてしまったお姉さん。

フィジカルを活かしてボディガードをしていたが、クビになったため、VTuberに。

ドーナツの穴は見ないタイプ。


身長184㎝

体重※※kg


好きなもの:お金と可愛い女の子と自分


好きなVTuber:もちろんママ、あとは千虎ちとら 七瀬ななせちゃん。


コメント


千虎ちゃん好きなんだ……!

雀ちゃんとも一回、コラボしてたよね

好きなものが正直すぎるwww


『千虎ちゃんいいよね~、千虎ちゃんみたいな女の子が鬼畜ゲーをして苦しんでいる姿、いいよね~~~~~~!!!!!』


ひえっ……


コメント


:ひえっ

:やべえぞこいつ!

:流石、雀ちゃんに認められた女やでぇ……


『うちは可哀想は可愛い派閥じゃないんよ?でも、こう、千虎ちゃんみたいなひたむきな子が鬼畜ゲーで壊されながらも立ち向かっていく姿に、こう熱いものを感じるというか……』


いや、うん。わからないでもないけども。


『でも単純に女の子が苦しんでんのを見ると感情が昂るのはある』


コメント


:あるんかいw

:糸目長身お姉さんに、Sの属性が追加された……

:(正直わかる)


『わはは、じゃあプロフィールの続き表示するよ~』


好きなこと・趣味


友だちと遊びに行く

ボルダリング

ドライブ

釣り

キャンプ

現地調達料理

狩猟(狩猟免許取得済み)

DIY

アニメ鑑賞


「ま、眩しい……」


好きなことに書かれたあまりもの陽気さに、寧々が目を細める。

アウトドアに全振りしている好きなことに基本的にインドアの多い、私たちやコメント欄のみんなは慄いていた。


コメント


:アニメ鑑賞しか理解できることがなかった……

:すっ(心の距離が離れる音)

:陽キャだ!!!!!!!逃げろ!!!!!!!



『お、コメント欄がなんやおもろいことになってるな~!安心してほしいんやけど、うちはオタクに優しいお姉さんやで』


コメント


:ならいいか‥‥…

:こわくない?


『うんうん、こわないこわない、取って食ったりせんから出ておいで~~~』


ステラちゃんの話の回し方とリスナーたちの連携に笑みが零れる。

初配信なのにステラちゃんとリスナーさんたちの距離感もちょうどいい感じだ。


『でも、実際、釣りもキャンプもドライブもボルダリングも狩猟もDIYも全部テーマにした作品結構あるやろ?意外とやってみたらたのしいってこともあるかもしれんよ?』


コメント


:でも俺たちは可愛くないしな……


『それはそう』


コメント


:草

:急に辛辣なのやめてw

:wwwwww


『まあ冗談は置いといて、チャレンジする機会あったら専門家や経験者の指示に従って危なくない程度にやってみればええよ。無理やったらそんときはうちが慰めてあげるわ』


コメント


:ちょっと、教習所行ってくる

:キャンプ用品の必要って書かれてたやつ、全部一括で買った

:釣り用にクルーザー買った


『なんかストッパーがぶっ壊れてるリスナーさんもいるんやけど、まあそんなぶっ壊れナーフ待ったなしのリスナーさんたちの名前をアパート共有の庭にビオトープを作りながら考えました』


コメント


:ちゃんと迷惑なやつじゃん

:リスナーを3/1/1バニラにしていけ

:ビオトープに住んでもいいですか?


『ビオトープの優先順位はメダカさんやからダメでーす』


コメント


:メダカ>リスナー

:ビオトープにアメリカザリガニとミシシッピアカミミガメを放っといた


『ちなみにその二種を逃がしたり放ったりするの違法になったから注意な〜?えっ、初配信でリスナーから法律違反者が!?』


コメント


:草

:開けろ!特定外来生物市警だ!

:ごめんて


『わはは、話が進まんから、そろそろリスナーたちのファンネームを発表してくよ~!その名も~~~~』


コメント


:ワクワク

:wktk

:ワクワク



───破壊者だがーデストロイヤーだがーです。


コメント


:は?

:なんて?

:はか……えっ?


『破壊者だがーデストロイヤーだがーやね』


コメント


:だがーって†?

:つまり破壊者†デストロイヤー†ってコト⁉

:ステラちゃんのリスナーやめます


「だがー」

配信とコメントを見ながらゲラゲラと笑っているとペンライトを十字にしてこちらを向く寧々。


もしかしないでも酔ってる?


可愛いからいいけど。


『えっ?被りないように考えたんやけど、不評?』


コメント


:被りないっていうかかぶりないっていうか……

:そこまでしないでもあんまり被らんよw

:ステラ・カンパネラのファンネーム 破壊者†デストロイヤー†は面白すぎるでしょwww


『えぇ~、ならみんなで考えよ~』


コメント


:†鐘の音†

:†星友†

:†星の破壊者†


『みんな、短剣符好きやね~。厨二病さんなん?』


コメント


:お前が始めた物語だろ!!!!

:†怒†

:†顔#†


『でも、†を使うのは唯一無二っぽくていいね~』



『んー、よし、今度こそ良さそうなの決めた!リスナーネームは†星の友†、ど~?』


コメント


:あり

:破壊者†デストロイヤー†じゃなければなんでもいいかも・・・


『ということで、うちのファンネームは†星の友†に決まり!あとはFAファンアートタグとエゴサ用のタグとかも作りたいんよね~』


コメント


:エゴサ用こそ、破壊者†デストロイヤー†でいいのでは?


『ほんまに?』


コメント


:やっぱなしで……

:†星の友を見てる†とか

:†星友観測†は?


『†星友観測†はいいね~!決定!』


『最後にFAタグだけど、†星友観測†に則って†星友観測絵日記†とかどう?』


コメント


:良い!

:良さげ

:†あるし被りもなさそうだしね



『じゃあ、今日決まったのはこんな感じやね』


ファンネーム

†星の友†


エゴサ用のタグ

†星友観測†


FAファンアートタグ

†星友観測絵日記†


『よ~し!これで決定やね~!』


くぅ~~~、とおそらく伸びをしているような声が配信に乗る。


時刻はちょうど21時30分。


ステラちゃんが終わる目安にしていた時間だ。


『じゃあ、今日はそろそろお別れやね』


「いかないで」

隣の酔っぱらない女児がペンライトを振りながら言う。


コメント欄もだいたいそんな感じで、幼児がいっぱいだ。


『わはは、みんな今日でうちのこと多少は好きになってくれた感じ?』


コメント


:マジで好き

:伸びる気配しかしない

:これにはママも星まで届くぐらいに鼻高々


『ふふん、そんな†星の友†たちに朗報があるんよ』


コメント


:おぉ……?

:まさかテレビアニメに?


『そうそう、うちがアニメになって放送!……ってちゃうちゃう。次の配信の予定はなんとなんと明日の19時、どう?朗報やろ?』


コメント


:うおおおおお!!!!

:†朗報†

:†全裸待機†


『じゃあ、配信はこの辺で、みんなおつカンパネステラ』


コメント


:語感気持ちわるっ!

:†おつかんぱねすてら†

:†おつStella†


配信が終わる。

それと同時に、雀がツイートをする。



下切 雀


えっ、うちの娘の配信おもしろすぎっ・・・!?チュン



雀のツイートに同意するようにいいねがたくさんついていく。


そして初配信を終えたステラちゃんも雀に返信した。



ステラ・カンパネラ


@Suzume_smgr

自慢の娘になれるようにがんばるな~


下切 雀


†††


雀はステラちゃんに三つの†を残して、こてん、と私の肩にもたれかかってくる。


そして直ぐにすやすやとした寝息が聞こえてきて、思わず笑ってしまった。


私はそんな寧々を起こさないように、テレビを消して、寧々の寝息を聞きながら初配信の反応を眺めていた。


______________________________________

†今回の話、書いててすごく楽しかったです†


久々に名前が出た千虎ちゃんが登場する話は2章37話です。


コメントの書き方変えてみました。

こっちの方が良さそうなら過去話のコメントの修正頑張ります。

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