合計100話到達記念閑話 とある雀の餌から見た飼い雀

黎明期と違い、VTuberが多くの人々に認知されだした昨今、私にも推しができた。


下切 雀ちゃん。

一緒に住んでいる親友の飼い主さんとの仲良しで、卓越したゲームセンスを持っている。

声も可愛くて、トークも最初に比べたらどんどん上手くなっている。


そんな雀ちゃんたちのことが大好きで、私は雀の餌になった。


そして今日は、日曜日。

いつもの週末定例会議の時間だ。


だけどその日はちょっと様子が違った。


時刻は18時半。

夕方17時のアニメを見て狂って、夕飯を食べて、Metube見ながらだらだらとしている私に、一件の通知がとんできた。


『飼い主さんの休憩所がライブ配信を始めました』

飼い主さんが時折、配信をしてくれるチャンネルで、作業配信はどこからか珈琲の匂いがしてくるような、落ち着く喫茶店にいるような、そんな感覚に陥ってしまう。


なんだろう?

定例会議は20時からのはずだけど……


配信タイトルは『定例会議の準備』


「こんばんは~」


配信を開くと同時に、飼い主さんの声がイヤホン越しに耳に届く。


今日も推しの声が脳に響いて気持ちいい。


「今日の定例会議、告知通り、セサクやるんだけど、ちょっとしたドッキリを仕掛けようと思ってね。少しずつ作ってたんだけど、そろそろ完成しそうだから枠取ったんだ」


『それ、雀ちゃんにバレない?』


「雀はまだ寝てるから大丈夫。19時半ぐらいに起こすけど、20時の枠でネタバレとかしないでくれたら嬉しいな」


『雀ちゃんがこの時間に寝てるの珍しい気がする』


「17時に一緒にアニメ観て、心壊して暴れてそのまま寝込んでる」


『草』

『ある意味、日曜を満喫してるw』

『察した』


察したし、その気持ちを理解できるからうんうん、と頷く。


「まあ、それも理由の一つだけど、昨日長時間配信やってたでしょ?」


やってた。

なんなら見た。


雀ちゃんの昨日の配信はFPS配信だった。

スポーツ系のFPS、新シーズンがやってきたEpexでのフルパ配信で、面子が猫神様、まほろちゃん、雀ちゃんの3人で、VTuberでFPSって言ったらこの人たち!って面子だったので同接も夜遅くにとんでもないことになっていた。

シーズン開始が2時からで、そこから集まって9時間ぐらいはやっていたと思う。

きっと、飼い主さんとアニメを見るために無理やり起きたのだと、優秀な雀の餌である私は推測する。


「私も朝起きてちょこっと見てたんだけど、良かったね~。特に眠気が限界に達したあとの謎のテンションでのほわほわ空間が最高だった」


わかる。


わかる!!!!!!!


あの3人だと基本は雀ちゃんがツッコミ役なんだけど、みんな脳がとろけだしてからは全員がボケ兼ツッコミでボケが渋滞していたし、互いが互いに言ったことが伝わらなくてはにゃったりして、こっちはずっと抱腹絶倒だった。


コメント欄の雀の餌も、分かり手が多い。

すごい一体感を感じる。今までにない何か熱い一体感をってやつだ。


「まあだから今、ねむねむすずめみたい」


『添い寝はしましたか!?』


……はぁ


流れてきたコメントに、クソデカため息が漏れる。


飼い雀に限らず、VTuberというのは半分は生モノだ。

供給を得て、私たち餌たちがてぇてぇするのは、構わない。

だけど、こうやって添い寝だの同衾だのちゅーだの、コメントに書き込んでしまうのはいかがなものか。


めんどくさいオタクである私が眉間に皺を寄せて、腕組みをする。


「今日はしてないね~」


今日は!?


今日はってことはしてる日があるってコト!?


めんどくさいオタクをしっし、と手で払い、どこかへ行かせる。


こうなると話は変わってくるってもんだ。


でも、こうならない場合も多いからそういうことを言うのはやめるんだぞってことで、コメント主には心の中で、めっ、てしておく。


「これじゃ、ちょっと語弊があるか……酔っぱらってソファで一緒に寝てるとかはあるけど基本は別々の部屋で寝てるよ」


飼い主さんと雀ちゃんは互いに親友って言い合ってるぐらい仲良しだからそれぐらいはあるか。


もし、酔っぱらってなくても一緒に寝ていたりしても配信であんまり言えないだろうしな……むしろ二人の関係性ならもっと先へ行っていてもおかしくは……


頭の中のやばいやつが顔を覗かせてきたので、自分にも、めっ、ってしておいた。


「じゃあ鯖に入るね」


ワールドクラフト。

通称はセサクで、定例会議ではちょこちょこと、2人でやっているゲームだ。


雀だった雀ちゃんは、今はルリカケスというカラフルな鳥になってるし、アホロテトカゲだった飼い主さんはブッシュバイパーというドラゴンみたいでかっこいい蛇になっている。


飼い主さんの分身がベッドという名の木を降りて、縄張りで飼育しているネズミをパクリと一呑みしながらカメラを動かす。


「作ってるの、一応あれなんだけど見えるかな?」


んん……?

山の上に何か建ってる?


『雀……?』


それは、雀だった。

雀ちゃんではなくて、冬毛でもっさもさの雀だ。


「ちょっと近づくね」


飼い主さんが、手に笛を持ち、吹くと甲高い鳴き声が響き、ばさばさと音が聞こえてくる。

視線を向けると、やってきていたのは飼い主さんの縄張りに住んでいる大きな鷹だ。


名前は見た目の通り、オオタカで飼い主さんは食料と引き換えに、オオタカをタクシーとして運用している。

その大きな足で蛇である飼い主さんが掴まれ、空へ浮かび上がる。


鳥が蛇を捕食するために、足で掴んで空を飛んでいる様子そのものだが、飼い主さんはこの移動手段が気に入っているらしい。


暫しの空の旅を楽しみ、目的地につくとその巨大さに思わず、おお、と声をもらしてしまった。


染色した羊の毛や木や石ブロックなどで作られたややデフォルメされた巨大な雀。

奥行もあって、尾までも完全再現だ。


『でっけぇ雀だ!』

『いつの間にこんなのを……』


「セサク好きだから空いた時間とかでのんびり作ってたんだよね~。中もあるんだけど、それは雀が来てからにするから一緒に楽しんで。この配信は外の部分を少し補修したり修正するからみんなの意見聞かせてね~」


任せてほしい。

美術はずっと3だったけど、やる気だけはある。


「あ、雀が起きてきたときにネタバレはしないでくれた方が嬉しいな。ビックリさせたいから!」


当たり前だ。

そんなことするやつがいたら、ぱんちしてやる。


「ここら辺、個人的に納得いってないから変えたいんだよね~」


飼い主さんは雀のお腹の部分、冬毛のふわふわしたぽっこりお腹を変えたいらしい。

正直、今のままでも良いと思うけど……


「素材がね~、もうちょっとふわふわ感を出したいんだけど」


『今、何使ってるの?』


「今はアルパカだね~~」


話についていけなくなったからwikiを頼る。


どうやらセサクにも現実と同じように毛によって質感が全然変わるらしい。


『カシミヤかモヘア使いましょう』


カシミヤ、モヘア、聞いたことあるような言葉を検索にかけると、高級繊維って出てくる。

カシミヤはカシミヤ山羊の毛で、刈り取られた毛から産毛だけを選別したもの。

モヘアはアンゴラ山羊の毛で、選別された産毛らしい。


「やっぱそうなるよねぇ~。モヘアは一応、確保したんだけど数が足らないからアルパカとかアンゴラウサギとか混ぜつつ、良い感じにするしかないか~」


『アルパカを下地にして、モヘアとアンゴラで見た目は結構良くなりそう』


「センスが試されるね~」


私も、話についていけないけど自然とキーボードを叩く。


『がんばって』


何のひねりもない単純な言葉だ。

だけど、それは飼い主さんに届いたようで、「頑張るね」と言ってくれた。


コメントは多くあって、でも、がんばって、と一番最初に打ち込んだのは私で、つまりこれは私のコメントを見ての言葉のはずで……だからだから、その、なんというか……


目を瞑り、俯き、両手を握り、腕を小刻みに上下に動かす。


うれしい……!


普段、コメントなんて全然しないから、味わうことなかったけどコメントが届いて、反応してもらえるのって、こんなに嬉しいんだ。


でも私は自制ができるオタクなので、この流れでハマったりはしない。


あくまでややROM専を貫く。

なんだこいつとかなんだこのコメントとか思われたくないから。




「かんせーい!」


約1時間程度、飼い主さんとコメ欄有識者との作業で、無事巨大雀オブジェが完成した。


「じゃあ、雀を起こすから、いったんこっちの配信は切るね」


配信が切られる。

今頃、飼い主さんが雀ちゃんを起こしてるんだろうか……その光景は正直見てみたいけど、見れないのが逆に良いみたいなところもある。


定例会議の開始まではあと30分ほどだ。


私は急いで財布を持って、コンビニへ行く。


定例会議に必要なものはカロリーだ。

ちょっぴり贅沢ないつもは買わないフラッペとかを買って、定例会議に備える。

これが私の雀の餌としてのてぇてぇに備えるルーチンだった。


◆◆◆


「はじまったチュン……、週末定例会議の時間チュン」


マンゴーフラッペとシュークリームを机の上に置いて、待機していた定例会議が今週もはじまった。


雀ちゃんは寝起きだから、ちょっぴり声が低い。

ダウナー気味の雀ちゃん、すこだ……


「飼い主です。今日はセサクしていくよ~!」


「なんか飼い主さんのテンションが高いチュン……チュンは聞いての通り、スーパー寝起きチュンので声がやばいチュン。ほんとは膝乗り雀の予定だったチュンけど、2人プレイなのと、寝起きであんまり飼い主さんにぼさ気味の髪見せたくないチュンから自室からのプレイチュン」


「気にしないのに」


「チュンが気にするチュン」


『寝起き雀ちゃんの声すき』

『乙女雀心だ』

『飼い主さん元気だ。明日休み?』


「いや、仕事ですね」


スン、と飼い主さんの元気が消える。


落差にけらけらと笑ってしまった。


「この社会人、本当に大切な用事以外で有給は使わないから上司に怒られたって前言ってたチュン」


「有休はある程度、残してた方が柔軟に動けるから良いと思うんだよね~、雀だって、私に休んでほしいときに休めなかったら嫌じゃない?」


「チュンがお願いしてるのに、飼い主さんが休まないなんて、そもそもありえないチュン」


「否定しづらいなぁ……」


飼い雀が脳に染み渡る。

いずれガンに効くやつだ。


「今日は告知通り、セサクをやっていくチュン。飼い主さんに誘われたからチュンけど、今日は何する予定チュンか?」


「ふっふっふ、とりあえずinしよっか」


「何か企んでるチュンね……とりあえず入るチュン」


ロード画面が入り、2人がセサクの世界に降り立つ。


2人の愛の巣、もとい巣穴にスポーンする2人。


雀ちゃんが嫌そうに養殖してる虫を食べている。


「……なんか、もう既に何か見えてるチュンけど」


虫をつつき、満腹度を回復する雀ちゃんの視線が木の向こうの巨大な雀を捉える。


「近づいてみようか」


「わかったチュン」


雀ちゃんが飼い主さんを抱えて、飛び上がる。

さっきは鷹をタクシー替わりにしてたけど、雀ちゃんがいれば移動は二人一緒にできる。


「近くで見たら思った以上に大きいチュンね……!これ、飼い主さんが作ったチュン?」


「うん。私たち、巣はあったけど簡易的なものだったでしょ?だから家を作りたくてね」


「え!?これ、家チュン!?」


えっ!?家!?


雀の姿をした巨大な建造物は家だったらしい。


「まあまあ、入ってみてよ。一応、外も作りこんでるんだけどまずは中を案内したい」


「これ、入り口はどこチュン?」


「くちばしに隙間があるでしょ?あそこがドアになってるんだ」


「へぇー!」


雀ちゃんが飼い主さんと一緒にくちばしに入る。

ドアを開くと、木造の玄関が二人を迎えた。


外観は特殊だけど中は凄く綺麗で、作りこまれているように見える。


「わ、綺麗チュンね」


「でしょ?まずはリビングから案内するね」


飼い主さんの先導して、雀ちゃんがついていく。


リビングには、雀ちゃんや飼い主さんが止まれる木と、葉っぱで構成されたソファが置かれている。

小さな水槽には、熱帯魚っぽい色とりどりの魚が泳ぎ回っている。

光源として置かれているランタンは大きな鬼灯で、淡い光を放っていて、良い雰囲気だ。


「飼い主さん、家の模様替えしてるときもそうだったチュンけどこういう才能あるチュンね」


「え?ほんと?ありがと」


嬉しそうに笑う飼い主さん、可愛すぎる……!


「右の部屋は貯蔵庫で、マウスとかミルワームとかが冷蔵庫に入ってるよ。あとこっちが寝室だね」


飼い主さんが左の部屋に向かう。


部屋を開けると、鬼灯のランタン、そして大きいベッドが鎮座している。

天蓋つきのクイーンサイズの大きなベッドがあって、枕が二つ置いてある。


同衾だ!


ランタンの色は淡いオレンジで、常夜灯みたいな感じになっている。

そういえば前、常夜灯じゃないと寝れないって飼い主さんが言ってたのを思い出す。


「寝室もいい感じチュン!ベッドも前に一緒にいったホテルみたいチュン」


!?!?!?!?!?!?!?!?


ホテル!?!?!?!?!?


天蓋付きのおっきなベッドがあるホテル!?!?!?!?


そんなのそういう用途のホテルしかなくない!?!?!?


「一応言っておくけど、突然の泊まりでパッと泊まれるところがそこしかなかっただけだからね?」


「そもそも毎日同じ屋根の下で寝泊まりしてるチュンからね」


「そもそも女子会とかでも使うって聞くし」


「だから仲良しのチュンたちが泊まってもおかしなことはないチュン」


そういう問題じゃないんです!!!!

例え同じ家で寝泊まりしてようとも、そういうホテルに行くのは一定のラインが存在するわけで、大人数で女子会みたいなノリならまだしも、2人で行くってのはそれはもう、心の底では許してると同義では!?!?!?


頭の中のやっかいオタクが悲鳴を上げている。


「そもそも何かしてたら話題に出さないと思うチュン」


それはそう。


「まあ、ご飯食べて一緒にドラマ観て寝ただけだから、話すこともあんまりないんだけど」


「飼い主さんに抱き枕にされちゃったチュン」


ミッ!

声にならない、喉の奥から搾りだした奇声が漏れる。


いや、ベッド1つだから一緒に寝たのは分かるけど、抱き枕に……!?

飼い主さんも否定はせずにははは、と曖昧に笑ってる。


「飼い主さんはいつも抱き枕使ってるチュンから、眠りにくそうな飼い主さんのためにチュンが抱き枕になってあげたチュン!」


『軽率にてぇてぇをするのでリスナーは死んでしまいました。あーあ』

『公式がFAファンアートを優に飛び越えていく……』

『飼い主さんがいつも抱き枕抱いて寝てる情報助かる』

『えっ、今日はこの配信で好きなだけ飼い雀を食べていいのか!?』


ああ、しっかり食え。


おかわりアーカイブ鬼リピ必至な配信だ。


この話だけでたくさんうめうめ出来る。


「まあ事実ではあるけど、ちょっと恥ずかしいかも」


「最近、飼い主さんの恥ずかしそうな顔を見るのがやや癖みたいになってるチュン」


わかる。

恥ずかしそうな飼い主さん、めちゃくちゃかわいい。

でも、飼い主さんが一転攻勢したときの雀ちゃんが慌てたり、恥ずかしがるところも好き。


ビジュアルだけだと、飼い主×雀ちゃんに思われるけど、雀ちゃん×飼い主さんなところも結構あったりして、左右固定派の餌たちには申し訳ないけど、結構リバな雰囲気のカプって認識はある。

だから私は平気で左右を入れ替えるし、気に食わない人は自衛してくださいって感じだ。


「私は雀の恥ずかしがる顔みたいんだけどなぁ」


「そのチュンはSSRチュン!」


「えー、アンコモンぐらいじゃない?」


「なにをー!」


じゃれあう2人。

これだけでご飯どころかパスタもいける。


「あと、最後に見てほしいものがあるんだ」


「今度は何チュン?」


「まあまあ」


飼い主さんに先導されて、階段を上り、恐らく、雀の頭の部分にあるであろう扉が開けられる。


雲一つない晴天に照らされ、雀の頭にのぼった雀ちゃんと私たちの目に映ったのは、文字だ。


『雀、いつもありがとう。大好きだよ』と書かれた色んなブロックを合わせて作られたであろう文字。

巨大な山も使って書かれた文字はこの雀の頭の上、いちばん高い位置じゃないと見えないように工夫されているように見える。


「ありがとうなんて普段、あんまり恥ずかしくて言えないからこういうときに伝えようかと思って、へへ……」


言っている途中で照れてしまった飼い主さん。


雀ちゃんは無言で、視点も動かないことから、たぶんマウスも動いていない。


「えっ、ちょっ、雀っ!?」


飼い主さんの焦った声が聞こえてきて、どかっ、と何かが倒れる音がする。


「チュンも、飼い主さんのこと大好きチュン!」


飼い主さんのマイクから、雀ちゃんの声が響き、飼い主さんがくぐもった声を上げる。


これって、飼い主さんが雀ちゃんに抱きしめられてるって認識でおけ?


今日は雀ちゃんと飼い主さんは別室だったっぽいから、雀ちゃんが感極まって、飼い主さんのもとへダッシュした、と……


……いい加減にしないと、死ぬぞ私が。


口角が上がりまくった化け物になってる。


大好きチュン~~~~!と飼い主さんに愛を伝える雀ちゃんに飼い主さんはくすくすと笑い声をあげる。


「知ってる」


ぎゃああああああ!!!


内心叫びながら、口では大きく息を吐きだす


死んでしまった。明確な死だ。


断末魔を上げて、ダイイングメッセージとしてツイートンにこの配信のURLをリンクして、呟く。


身内の餌たちも奇声や断末魔を上げて、転がっており、タイムラインは死屍累々となっている。



「飼い主さんへのラブが限界突破しちゃったチュンから今日はそろそろ終わるチュン」


「まあ、予定ではもともと早めに終わるつもりだったからね」


「裏でガチプラベいちゃいちゃタイムチュン」


「明日早いんでねまーす」


時計を見る。

気づいたら始まってから1時間と20分が経過していた。


え、時、とんだ?


「じゃあ、みんな、おつずめ~、飼い主さんに抱き枕にされるチュンのFA楽しみにしてるチュン~」


「あはは、おつずめ~。また来週ね」


『おつずめ~~~!』

『最高でした!』

『おつずめ!』


コメントが爆速で流れていく。

私もおつずめ、と打ち込んで、ツイートンではなく、液タブヘ向かう。


しがない木っ端絵師だけど、今日のてぇてぇを今のうちに描いておかないと、という使命感に駆られて、筆を進めた。


◆◆◆


「寧々、おやすみ~」


時刻は0時前。

本来ならもっと早く寝るつもりだったけど、編集作業してたらもうこんな時間だ。

リビングでスマホを片手にVTuberの配信を見る寧々に声をかける。


「あ、彼方。ちょうどいいところにきた」


寧々がスマホを持って、とてとてとやってきて、その画面を見せてきた。


「今日のやつだ」


「うん、はやい」


画面に映っていたのはイラストだ。

既にいいねとRTがされているそのイラストは、飼い主が雀を抱き枕にしている様子で、今日の定例会議で話したものだった。


2人、幸せそうにすやすやと眠る姿が可愛らしい絵だ。


「今日も抱き枕になろうか?」


寧々がスマホを片手に、悪戯っぽく言ってくる。


うーーーーーん、正直魅力的な提案だけど、明日も仕事だし「また今度ね」と頭を撫でた。


「おやすみ。寧々」


「うん、おやすみ。彼方」


言葉を交わし、数歩歩く。


そしてちゃんと言葉にしてなかったな、と立ち止まった。


振り返ると、同じく振り返った寧々と目が合う。


「いつもありがとう。寧々」


「こちらこそ、ありがとう。彼方」


思っていることは同じようで、伝え合い、くすりと、2人笑い合った。


______________________________________

VTuberになった親友と一緒にがんばる話、合計100話到達しました。

応援、コメント、★、レビュー、いつもありがとうございます。

励みになっています。


これからも『VTuberになった親友と一緒にがんばる話』をよろしくお願いします。



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