第59話 絶対負けてやらない
3日間のスクリム、総合戦績だと私たちは5位。まほろちゃんたちは7位とまあまあな結果だった。
つよつよVの集まる大会だからこんなもんだと思う。私もこういった大会に出るのは初めてだから少し緊張してあんまり力を出し切れていない感じもある。
チュンたちの戦い方は基本的に誰とも被らないマップの隅っこに降りて、武器やアイテムを揃えて、円の収縮と共にゆっくりとポジションをとっていく。
やむを得ない戦闘以外は出来るだけせずに、命を大事にしていくようなムーブをしている。
所謂外ムーブとか言われるやつだ。
さっさと漁って良いポジションを確保する中ムーブをするチームが多い中で、これを選択したのはこっちの方がポイントを多く得られて得だと思ったからだ。
中ムーブが多くなる大会で、外ムーブの利点は物資の潤沢さと既に起こっている戦闘への介入のしやすさにある。
ただ利点だけじゃない、欠点もある。
例えば入る場所がなく最終的に限界なポジションを選択しないといけないことがある。
そして入るポジに先客がいた場合にそのまま戦闘になってしまうこと。
一長一短なのは間違いない。
もし外ムーブのチームが増えてきたら中ムーブに切り替えようとも思ってた。
だけど増える様子はないから、このまま本番も外ムーブになるだろう。
そしてまほろちゃんのチーム、降りる場所、こういった大会では誰とも被らないところに降りるのが普通だ。
そこをランドマークともいうが、まほろちゃんのチームのランドマークは私が降りる北北東の集落の正反対、南南西の町だ。
セーフゾーンにもよるが、基本的に最後のほうにしか出会えない。
だがスクリムの神視点の映像を見るに、中ムーブで出会った敵は倒していくという戦闘意識の高いムーブをしている。
でもきっとそれが出来るようになったのは、私が育ててしまったメア博士のおかげだ。
カバーがとてつもなく上手くなってる。
いや、味方の動きを見るのは前から得意だったからきっと、意識してカバーするようにしているんだと思う。
そのおかげでまほろちゃんも伸び伸びと戦えているし、逆も然りで、相変わらずショットガンを持って室内戦を行なっているメア博士へのカバーがすごい。
良いコンビだ。
「強いですね。1位のチーム」
「強いチュンね……」
プロゲーマーVTuberの
彼ももちろん参加している。プロゲーマーだけあってその実力は随一だ。
「でも、知っているチュンか。とある法則を」
「法則ですか?」
「そう、スクリムで戦績が良かったチームは本番は勝てない!って法則があるチュン!だから1番人気で1番強くてもこのチームは1位じゃない!チュンたちが優勝するチュン!」
「確かに5番人気ぐらいは良い感じに伏兵で、紐にもちょうどいいんですよね」
「えっ、何の話?」
「こちらの話です」
「じゃあ今日はそろそろ落ちます。明日のために英気を養うのと、今からアニメをリアタイするので」
「おっけーチュン。チュンは配信されたら続き見るチュン」
「分かりました。また語り合いましょう。では」
「また明日チュン!」
ツユキちゃんとの通話を切り、ぐっと伸びをする。
そして今日もスクリムのアーカイブを見返す作業に入る。
明日は勝ちたい。
正直、ここまで思考し続けてゲームをするのは初めてでそれだけ消耗も激しい。
だからこそ、勝ったときは嬉しいし気持ちいい。
これが優勝だとどれほど気持ちいいだろうか。
私はそれを経験してみたい。
「勝たせてもらうチュンよ。まほろちゃん、メア博士」
思わず口をついて出た言葉に、苦笑しながら4時間にも及ぶアーカイブを見始めた。
◆◆◆
そして迎えた本番。
本配信では解説件司会の猫神様が、饒舌に話している。順位によって貰える賞品もあって、正直欲しいものばかりだ。
「ついに本番チュンね」
「10時間寝たので無敵です」
ツユキちゃんも元気いっぱいで頼もしい。
ツユキちゃんもここ数日でだいぶ上手くなった。キーマウ操作は慣れが大切で、だからぎこちないのは仕方がない。
だけどそれ以外のことをしっかりと吸収してやれるようになっている。
きっと慣れたらもっと強くなるだろう。
でも、それは未来の話で今日は違う。
だからチュンがしっかりリードしなきゃだ。
気合を入れるためにミュートにして自分の頬を叩いた。
『じゃあ、これからはチーム紹介をしていくにゃ!』
試合開始前のチーム紹介が始まる。
私たちはチーム1、トップバッターだ。
チーム紹介では、私たちの顔と私とツユキちゃんの紹介が紹介された後に猫神様が2人がいるディスコに入ってきて、リーダーが意気込みを言うことになっている。
『________雀ちゃんと露木静ちゃんのデュオ!チーム名『雀の止まり木』のお二人にゃ!』
「こんばんはチュン!」
「こんばんはです」
『雀ちゃん!いつ聞いてもキュートな声にゃ!じゃあさっそくだけど今大会の意気込みをお願いするにゃ!』
意気込み。
そんなものは決まっている。
「勝つチュン!優勝はチュンたちのものチュン!」
全チームへの宣戦布告だ。
全部勝って、優勝する。
それ以外、必要ない。
『おお!情熱的な言葉ありがとうにゃ!では失礼するにゃ!』
『続いて次のチーム!________』
画面は次のチーム紹介へ移る。
「緊張してきました……」
「ゲームに集中すれば緊張も直ぐに解けるチュン!」
「そうですよね。今日は雀さんの止まり木になれるように頑張ります!」
ツユキちゃんと雑談をしながらチーム紹介が終わるのも待つ。
チーム紹介が終われば、5分ディレイが配信に追加され、今回のルールなどがおさらいが動画でされて、試合が始まる。
本配信ではそろそろチーム紹介が終わろうとしている。
そしてついにみんなが既に準備完了を押している待機画面が切り替わり、ロードに入る。
はじまりの合図だ。
「じゃあ、全力で頑張るチュンよ!」
『はい!勝ちましょう!』
VTuberたちの祭典が始まる。
◆◆◆
私たちがエアシップから降りるのは北北東の集落。
いつも通り、この集落に2つある2階建ての建物を分かれて漁り、物資を揃える。
この時に鞄が見つからないと少ししんどい。
「アサルトありました」
「了解チュン。チュンも見つけたチュン!」
5.56mmの弾を使用する、このゲームでもっともメジャーなアサルトライフルを装備する。
「次の円を確認してどう動くか決めるチュン」
「了解です。周りの警戒をしておきます」
最初の1分が経過するとマップに円が表示されて、さらに一定時間が経過するとその円の範囲外にいるとダメージを受ける。
そのダメージは時間が経つごとに上昇していき、第五収縮目、最後の小さな円では、外に一瞬出るだけで体力の半分以上が持っていかれる。
そして最終的には円が閉じ切るが、だいたいそうなるまでには終わる。
まあ、バトロワゲームのお約束のようなシステムだ。
室内で伏せてマップを開き、次の円を確認する。
最初の大きな円は中央に出ており、この集落はぎりぎりで円からは外れていた。
「こっち側なら徒歩で移動したいチュンね」
「それなら西側からまわっていきましょう。東からだと鉢合わせることが多かったので」
「そうするチュン。んー、だいたいこの辺に入るイメージで行くチュン」
マップにピンを差すのは、円の隅にある小さな小屋だ。
一旦はここに止まり、次の円を確認次第動きたい。
車とか乗り物も欲しいけど、外ムーブの私たちはそんなに必要がない。
めちゃくちゃ円が離れたりしなければ、大丈夫だ。
「了解です」
ツユキちゃんと移動する。
足音を響かせながら、木々の生えた丘を走るが、敵の気配はない。
というよりほとんどが中ムーブでこちら側に外ムーブをするチームがいないから序盤の接敵は無しに等しい。
目的地につくと、また2人で閉じ籠り、マップを開いた。
「こっち側ならラッキー、反対方向に円がズレたらめんどくさいチュン」
「そういうのフラグって言うんですよね知ってます」
「フラグはフラグって口に出したらフラグになるチュンよ」
「なるほど。なのでこうなった感じですね」
次の円が表示されて、円の収縮が始まる、
次の円は私たちの反対側、方向でいうと南の西側だ。
「近くの街に余った乗り物落ちてたりしないチュンかね」
「探してみるのはありだと思いますが、あんまり遅くなりすぎると入る場所がないかもしれないです」
「そうチュンね……。とりあえず街をざっと漁りながら走るチュンか」
「そうしましょう」
第1試合目はマラソンランナーになることが決定した。
こうなると外ムーブの強みが若干失われるし、回復も有限だし円外でのダメージの回復には使いたくはない。
移動しつつ、キルログ管理をする。
1試合がだいたい30分、今日は5試合することになる長丁場だ。
だからこそ流れの面でも最初の1試合は重要になる。
今のところ、戦闘は起こってるっぽいけど落ちてるチームはなさそうだ。
別ゲームだと残り人数が表示されてたりするけど、このゲームはそこら辺がやや不親切で残りの部隊数しか教えてくれない。
そしてそれも7部隊を切ると消える。
だから流れるキルログで管理するしかない。
「1人のチームがあるチュンね。あそこは確かに北側に降りてたはずだからもしかしたらどこかで隠れてるかもしれないチュン。一応クリアリング甘くならないように気をつけるチュン」
「了解です」
結局車も見つかることもなく、私たちはマラソンを完走することになった。
◆◆◆
_______やばい。
「ここから入れる保険があるチュンか?」
「ないよりではありますね」
残り部隊は15。
それが第4収縮の山間部が中心となった小さな円に、ぎっしりと詰まっていることになる。
そして次の円には入っていない。
今、私たちは右の円ギリギリの草むらの中で2人仲良く伏せているが、直ぐ斜め右から2つの足音がするからそこに敵がいるのは確実だ。
幸い、私たちには気づいていない。
「チュンたちが取れる策は2つチュン。まず、近くにいる敵と戦う。もう一つは円のギリギリまで草むらで身を隠して最後の漁夫の利を狙う」
「勝つためには2つ目ですけど、この人数ですと移動で入れるところがあるかどうかですが、ここで前の部隊を倒しても結果は同じです。キルポイントを貰うかどうかですね」
「それなら最後まで勝つことを優先するかチュン」
「ですね」
ギリギリまでここで耐えることにした。
どちらが正しいとも言えないだろう。
前の敵を倒して、運良く円に入れてこっちが正しいこともあるだろうしこのままここで待ってた方が正しいこともある。
こればかりは運で結果論にしかならない。
2人の意見が一致してるなら今はこっちが正しいんだと思う。
「今だけはカタツムリチュン」
「そういえばファントム・マインドにも居ましたよね。カタツムリの敵」
「あれはカタツムリじゃなくてカタツムリに寄生したボーダーのやつが本体チュン」
あんまり思い出したくないタイプの敵だ。
________ダダダ、ッパーン。
収縮時間が迫ってきて、最初に動いたのは誰か。
こう着状態の中で、銃声が響き渡る。
それが開戦の合図となった。
リアル志向のうるさい銃声が一気に鳴り出し、それでもチュンたちはまだ動かない。
収縮の開始はだいたい後10秒ほど。
耳を澄ませて音で、前のパーティの動向を探る。すると僅かながら足音を鳴らして前へ行く音が聞こえる。
前のパーティも円へ向かったのだろう。
「チュンは一瞬、伏せ解除して辺りの状況を見てみるチュン」
「了解です」
草むらから立ち上がり、草木が揺れる音を聞きながら立ち上がる。
見えるのは、前のパーティが円の際で、銃を握って敵を撃っている姿だった。
「ツユキちゃんも立ち上がるチュン」
自然と声が小さくなる。
ツユキちゃんが立ち上がり、目の前の光景をシェアする。
「右の敵を撃つからフォーカスを合わせるチュン」
「分かりました」
アサルトライフルのスコープで、右の敵の頭を狙う。
「撃つチュン!」
________パン!ッパララ!
2つの銃声が鳴り、1人が倒れる。
間髪入れずにもう1人の頭を狙うがしゃがまれてしまう。
「グレ!」
「投げます!」
ツユキちゃんの放ったグレネードが転がり、先程敵がいた場所で、爆発する。
耳鳴りがするが、赤い文字で表示された『1キル』の文字。
「ナイスチュン!スモークを投げてあのパーティのところに行くチュン!」
「はい!」
スモークを放り込んで、走る。
そして先ほどのパーティがいた場所でまた伏せた。
落ち着け落ち着け。冷静になれ。
このパーティを撃っていたのはチュンたちのパーティだけ。
後ろは居なくて、右端だから見るのは左と前だけでいい。
撃っていたのはどのパーティだ。
スモークが晴れるのを待ち、立ち上がると倒れて箱になった死体が前に見える。
そしてその近くに木の後ろで回復してるであろう人影が2つ左右に忙しなく動いていた。
あれか。
「2つの死体はグレはなかったです。鎮痛剤やスモーク、フラッシュはありました。置いときます」
「ありがとうチュン!」
スモークだけ受け取る。
円の収縮が終わり、最後の円が表示される。
それはまさに前にいるパーティの位置だ。
「運が向いてきたかもしれないチュン。ここは端っこで安全、ギリギリまでここにいて最後はグレ、スモークって放り込むチュン」
「残り部隊数はおそらく5です。記憶が正しければ1人のところが2つあります」
「マジでありがとうチュン。全然見れてなかったチュン」
「これぐらいは任せてください!」
ツユキちゃんが頼もしすぎる。
いつの間にか7部隊を切り、『?』と表示されて、残りの部隊数が分からなくなっていた。
これは私がやるって伝えていたけど、ツユキちゃんがちゃんとカウントしてくれていた。
残りの部隊数と人数によって立ち回りが変わってくるゲームにおいてそれはミスだ。
最初からもっと頼るべきだったと後回しにするべき反省点を閉まって、今のことを考える。
最終局面だ。
2キルと5位以上のポイントは確定したとはいえ、気を抜くことだけはしてはいけない。
左の敵はきっとチュンたちに気づいている。
前の敵もそうだろう。
だけど迂闊な行動ができないし、これは都合のいい解釈かもしれないけどグレネードを持っていない可能性がある。
戦闘で使用して補充できない可能性はもちろんある。
中ムーブなら尚更、敵を倒して奪っていないとその可能性が高い。
左と戦うのは前の敵に隙を晒すことになる。逆も然りで、左とは戦う必要はない。
________収縮の時間がやってくる。
先に動いたのは左だ。
スモークがいくつか炊かれて左側がモクモクになる。
前に走る複数の足音と、フラッシュの音。
左が前に攻撃を仕掛けた。
スモークが炊かれているし、グレはまだ残しておきたい。
潰しあってくれるならラッキーだ。
「行きますか?」
「まだチュン。最後の円だから収縮は遅い。ほふくをしながらゆっくり前に進むチュン」
少しでも勝つ可能性を高める。
絶対に油断しない。
ゆっくりと進んでいると、左から足音が聞こえてくる。
きっと残っていた1人の敵だ。
勝負をきめに行くのはやや早計だと思うが、フラッシュの爆発音が響き、スモークの中に飛び込むように中に入っていった。
_______最終局面に相応しくないショットガンの音が響く。
嫌でもそれは誰かわかった。
分かってしまった。
流れるのはショットガンのキルログ。
新しくスモークが炊かれる。
2人を見事に倒したらしい。
「ショットガンで2キル……凄いですね……」
「フラッシュとショットガンの組み合わせは流石に脅威チュンね」
フラッシュバンはまともに食らえば音と視界を失う。直接見なければ少しの間、視界がぼやける程度で済みはするが、どんなに上手い人でも確実に避けるのは難しいだろう。
戦況は残り5部隊で、もしメア博士が争っていた2部隊の生き残りを倒したとすると残りは3部隊。
前にいた部隊は2人、勝負を仕掛けたのも2人、両方倒れたとなるとツユキちゃんのカウントを真とするなら、1人の部隊が2つ、チュンたちだけが2人残っていることになる。
有利だ。
ただあと1人がどこにいるのか、だが恐らくは左前辺り、メア博士の後方でまだ伏せているのではないだろうか。
「前はショットガンチュン、距離を保ちつつ、戦うチュン」
「はい」
「グレを投げてほしいチュン」
残ったグレを前へ。
スモークは左と左前に投げて射線を切る。
パタパタパタと走る音が聞こえて、キルは入らない。避けられたのだろう。
そしてその音に合わせて別の足音がモクの向こう側でする。
残ってた1人も動き出した。
若干の距離を保ちつつ、前のスモークが晴れたところを半身で隠れているメア博士の頭を撃ち抜く。
その銃声と同時に、転がってきたフラッシュを咄嗟に振り向き、背中で受けて完全に食らわないようにして若干揺れる視界の中で、人影に向かって残った弾を撃ち込んだ。
狙いは定まらなくても数打ちゃ当たるだ。
勝利のファンファーレと、兎兎座と表示された倒したプレイヤーの名前に若干の優越感を覚えながら私たちの1戦目は最高の結果で終わったのだった。
◆◆◆
「ッナイス!!!!」
「ナイスです……!!!ッナイスです!!!!」
チュンの叫び声と、ツユキちゃんに声がハモって高揚感が湧き上がってくる。
「1戦目勝利だーーーー!!!」
「はい!はい!!!!」
「わああああ!嬉しいチュン……めっっちゃくちゃ嬉しいチュン……!!!」
「やりました!!!!!」
試合が終わったから急いで本配信を開く。
映っているのは最後の場面でメア博士がスモークに入っていくのが見える。
『メア選手が仕掛けました。武器はやはりショットガンですね……!』
『メア博士はショットガンを得意としているにゃ。にゃけど、この場面ではショットガンは脅威になりかねないにゃ』
『おおっとメア選手!まずは油断しているところにフラッシュバンを投げた!』
解説の猫神様と実況をしているプロのキャスターが盛り上げてくれる。
メア博士はフラッシュバンの中から姿を表して、近距離で1発。もう1人は2発で敵を沈めた。
「ここだけ見るとショットガン最強チュンね」
「適正距離をちゃんと分かってる立ち回りですね」
『残ったのは雀の止まり木、そしてメア博士、兎兎座さんにゃね』
『これは雀の止まり木が若干有利でしょうか?』
『有利ではあるにゃ。でも、こういう場面をひっくり返してきたのが兎兎座さんにゃからまだわからないにゃ』
『メア選手の2キルを見て、雀の止まり木も動き出す!左側の射線を切るようにスモークを投げてグレネードを放った!』
『左に敵がいると決めうった感じにゃね。兎兎座さんはずっとハイドしてたから場所自体は把握してなかったはずにゃ』
『グレネードを避けたメア選手が雀の銃弾に沈む!残りは2部隊!おっとここで兎兎座選手も動き出した!スモークの中に入り、フラッシュバンを投げる!2人が食らって、これはまさかまさかの1人勝ちがあるか……!……いや、避けている!?避けています!雀選手!避けられたら流石の兎兎座選手も手が出ない。最後は雀選手のキルで、勝ったのは雀の止まり木!!!!!!雀、兎を狩るー!!!!』
『お見事にゃ!あの場面でフラッシュを避けるという対応は流石としか言いようがないにゃ!そしてツユキちゃんはフラッシュをくらっていてもフレンドリーファイアがある関係上、無闇に撃たないでしっかり伏せたのは良い判断だったと思うにゃ!文句なしの勝利にゃ!』
やばい。
めっっっっっちゃ気持ちいい!!!
自分のプレイに実況解説がつくのってこんな感じなんだ……最高すぎる。
「気持ちよすぎるチュン……!」
「はい……!はい……!!!」
歓喜で若干涙声になっているツユキちゃんと気持ちはハグを決めているところだ。
『うおおおおお!』
『雀ちゃん強すぎる!!!』
『ファンマイコンビ最強!!!!!』
コメントもすごい勢いで流れていく。
_____ピコン。
ディスコにインタビューを準備しておいてくださいという通知が来る。
そういえば5分遅延だった。
「インタビューおっけーチュン?」
「大丈夫です!」
「じゃあインタビューサーバー入るチュン」
『雀の止まり木のお2人にインタビューしていくにゃ!まずは1位おめでとうにゃ!!!!』
『おめでとうございます』
「ありがとうチュン!」
「ありがとうございます!」
『じゃあまずは雀ちゃんに聞くにゃ!今のお気持ちはどうにゃ!』
「控えめに言ってさいっっこうチュン!ちょっとチュンにミスがあったけどそれを除いたら完璧な勝利と言えるチュン!」
『ミスにゃ?』
「チュンは途中から部隊の把握が出来てなかったチュンけど、それをツユキちゃんがしっかりしてくれていたお陰で最後の場面はチュンたちだけが2人なことに気づいたチュン。これはチュンがいっぱいいっぱいで出来ていたことができなくなってしまったのと、あともっと相棒を頼りきれなかった自分のミスだったチュン」
『ストイックですねぇ』
『ストイックすぎるにゃ』
「えっ?そうチュン?」
「相棒って言われると照れますね」
『じゃあ次は露木ちゃんにゃ!今のお気持ちはどうにゃ!』
「さいこうです!雀さんと一緒に勝てて、なんだか恩返しができたような感じがして泣きそうでした」
『ほほぅ。恩返しにゃ?』
「話すと長くなるのであれですけど、私は初対面の頃に雀さんに助けてもらいました。あれがなければ私はもうVTuberではなかったかもしれません。だからお役に立てて一緒に勝てて、本当に本当に嬉しいです…ぐすっ……はい……ほんとうに……その……ぐすっ、えとすいません」
ツユキちゃんの言葉が涙混じりになり、すみませんと何度も呟く。
やめてくれ。もらい泣きしそうだ。
「……大丈夫チュン?」
「はい……大丈夫です……!嬉しくて出るタイプのめじるなので……」
『いやー、お2人の仲の良さが伝わってくるようですね』
「でもファントム・マインド誘っても若干乗り気じゃないことがあります」
「ツユキちゃん?」
おっと?
急にダークオーラを放ち始めたツユキちゃん。
『にゃはは!そこら辺はあとでじっくりと話し合うにゃ!では!雀の止まり木のお2人でしたにゃー!』
「ありがとうございましたチュン!」
「ありがとうございました」
_______ピコン。
ディスコを抜けて、また2人のチームに戻ってくる。
喜んでいる間もなく次の試合だ。
アドバンテージもここから負けてしまえば失う。それが大会だ。
「ツユキちゃん、切り替えられそうチュン?」
「もう大丈夫です!」
「良かったチュン。じゃあ、ごめんチュンけど次の試合から部隊数や人数のカウント任せてもいいチュンか?」
「はい!大丈夫です!相棒なので!」
ツユキちゃんが明るい声で笑った。
もう大丈夫そうだ。
ゲームの待機画面にはもうみんな集まっている。
________さあ気合を入れ直そう。優勝するために。さあ、ここから5連勝して優勝だ!
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