第10話 ゲームするよ(3)
「因みに雀は縄張りを主張するときに平和的な手段と暴力、どっちが有効的だと思う?」
「暴力」
『すごい質問w』
『即答で草 そりゃつよつよ雀だからそうだろうけど』
『でも確かに縄張り争いとかあるしそうかも』
「正解!」
正解だ。だけど不正解だ。
暴力という手段に出られるのは、負けないという前提がなければならない。
縄張りにいる誰にも負けないという前提がだ。
「だけど私たちにはまだ暴力に訴えるほどの力がないんだ。レベルも足りないし十分な食料も確保できていない。だから誰かの縄張りの中に庇護してもらわないといけないの」
「ふむふむ。それで話し合いチュンか」
『なるほど。傘下みたいなものか』
『説明わかりやすい!』
「でも話し合いって具体的にはどうやるチュン?」
「ふふふ、それはお楽しみってことで。とりあえず地上への道を掘ろう!洞窟は上を掘っていったら外に出られるから。高さが足りなくなったら堀ったブロックを下に置いて足場にしたらいいけどって、雀だから関係ないか」
既に空を飛び、天井をくちばしで突く雀。
瞬く間に掘り進められ、やがて光が差し込んでくる。
「お、開通したチュン」
「先に外出てて、私も直ぐに出るから」
ジャンプしながら足元にブロックを敷き詰めていき、光のもとへ辿り着くと、鳥の鳴き声とせせらぎが聞こえてくる。
よいしょと顔を乗り出したら小川と、小川の上で鳥が魚を食べているのが見えた。
「川チュンね」
「川だね、しかもちょうどいい」
名前は『Heron』
記憶が正しければ、サギだったはずだ。
「じゃああの鳥に近づいてみて。多分、Fキーで話せると思う」
話せるというよりはいくつかの選択肢が表示される感じだけど。
「えっと、戦う、交渉、交換……二番目でいいチュンか?」
「大丈夫だよー」
縄張りの交渉は各自だから、私も話しかける。
戦う
→交渉
交換
もちろん、選ぶのは縄張りの相談だ。
といっても一筋縄ではいかないのはここからなんだけど。
「なんかAyu100匹とか書かれてるチュンけど……バグ?」
「残念ながらデフォだよ。この交渉の部分だけはパズル要素というか謎解きになっててね、何かしらの条件を達成しないと条件が緩くならないの」
「めんどくさいチュンね」
「わたし的にはこれが楽しいんだけどね」
「……ドMチュン」
『その動物の知識があれば簡単に条件達成できるみたいな内容が多いから、前某Metubeチャンネルが動物園の職員を呼んでセサクやらせるみたいな企画やってた』
「そうそう。これのためにわざわざ動物のwikiとか見て調べるの楽しいんだよね」
「へー、ちなみにこの鳥はどうすればいいチュンか?」
『微塵も感情のこもってない「へー」で草』
『飼い主と雀ちゃんの正反対感すこすぎるんだな』
『好きな子と話してるときと同じ反応しててトラウマよみがえった』
「あはは、サギはコロニーを作るから近くにいる別のサギを探してこのサギの
「なるほど」
ふよふよと飛びながら探しにいく雀を眺めて、コメントを見る。
「このキャラ移動遅めだから探すの雀に任せるね。私、コメント読むー」
「了解チュン」
「『飼い主さん結婚してください』……えっと君が大きくなってまたその気持ちが残ってたら考えてみてもいいよ」
『遠回しに断られてて草』
『それでも考えてみてもいいよ、なのほんま草』
「『飼い主さんって誰かと付き合ったりしないんですか?』付き合ったり……んー、しないかなぁ。正直、恋とか愛とかよくわからないんだよねぇ。友だちにはそういう疑問は学生で捨てとけってよく言われるけどわかんないもんは仕方ないよねぇ……雀は?」
「……とりあえずチュンのリソースを飼い主さん以外に割くのは嫌だとだけ言っておくチュン」
「それよく聞く気がする」
「よく言ってるチュンから」
『てぇてぇ』
『雀ちゃん、結構独占欲高い感じするけどそれでもお互い良好な関係を築けているのがとても良い……』
「あっ、見つけたチュン」
「おっけー」
マップで雀の位置を確認して向かうと、別のサギが魚をくわえている。
「さっきのサギと
「了解。じゃあ縄張り作ったら今回は終わりにしようか」
時刻は、21時49分。
ちょうどいい時間だろう。
『時間があっという間に過ぎてく……』
『最高だった!来週もセサク観たい!』
私もサギに話しかけたあとにそして先ほどのサギのもとへ向かうと、すんなりと縄張りをつくらせてくれた。
番だと言っていたが尻に敷かれているのだろうか?
「週末定例会議はこれで終了チュン!明日からみんな頑張るチュンよ〜!」
「おつかれ〜」
『おつです!楽しかった!』
コメントが流れていくのを見ながら、放送終了して、寧々は伸びをした。
「このゲーム、面白いね」
「うん、まぁ本格的にやり始めたら時間が足らないんだけどね……」
「それはなんとなくわかる」
放送も終わり、一息つく。
セサクをやってたからか、久々に映画でも観たい気分だ。
特にアニメーション映画で動物が活躍するのが良い。
「ねぇ、寧々」
___一緒に映画でも……
「あっ、まほろちゃんから連絡きた。一緒にゲームするから部屋行くね」
「……うん。わかった」
とたとたと、部屋に向かう寧々の後ろ姿を眺める。
変なモヤモヤが心の隅に留まり、すごく嫌な気分だ。
「……寝よう」
なんでか映画を見る気分じゃなくなっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます