第9話 ゲームするよ(2)
________雀の朝は早い。
ブレークファストとしてミミズを数匹と水1杯。至福の時間だ。
「変なナレーションつけないでもらっていいチュンか!?」
『草』
『雀のグルメw』
うわぁ、と言いながらEキーを押して、ミミズを食べる雀。
食事は、捕食行動と呼ばれるつつくや齧るなどを行い、満腹度が最大になるか被食側の
「そういえば食事のシステムってどんな感じチュンか?」
「というと?」
「今、スズメで食べた感じ、二回食べれて体力の半分ぐらいを回復できたチュンけど例えば進化しておっきな鳥になってもそれは変わらないチュンか?」
「いや、それは変わるよ。例えば今食べたミミズは、雀だと二回捕食行動が行えて、ゲージの半分回復できるけど大きな鳥になるとミミズは一回しか捕食できないしゲージもほとんど回復できないから一応餌ではあるけどもっと大きな餌を探すとか繁殖させないと直ぐに空腹で死んじゃうね」
「繁殖……想像もしたくないチュンね……」
確かに、見た目がアレな生物がうじゃうじゃしてるのは見たくない。
「まぁ、鳥は魚を食べるのが一番効率がいいけどまだ食べられても池や川の小魚だから、水場のない現状じゃ、進化まではソレか果物で我慢しなきゃだね」
「果物チュンか?」
「うん、果物は万能で、肉食動物以外の生物はみんな食べられるようになってるんだ。まぁ、肉食動物も食べようと思えば食べられるんだけど……」
記憶が正しければ、セサクの死亡RTAの記録は肉食動物で果物を暴食することだったと思う。
このゲームは無駄にリアルを追求しているところがあるからシステム的な面で行動を阻害するというのを嫌う。
だから肉食動物も果物は食べられるし、野菜も食べられるわけだけど、残念ながらこの世界の植物や果実には猛毒がある。
肉食動物以外の生物は長い年月の中で無害化できるように進化したけど、肉食動物はもともと食べる習慣がないため、無害化できずに死んでしまうという設定らしい。
「ふむ、出オチ感満載だったチュンけど意外に考えられてるチュンね」
「あはは、じゃあ次はクラフトしてみようか」
このゲームは、サンドボックスゲームらしくクラフトというものが存在する。
土や木などを掘って入手して、それを材料にクラフトできるのは数千種類にも及ぶ。
「じゃあまずはスコップを作ろうか」
「スコップ……?どうやって持つチュンか?」
「ふふふ、それがこのゲームのわりと面白いポイントの一つなんだよね。とりあえず作業台を作ってみよう。ここは洞窟だから石を掘って、石の作業台を作れるよ」
お手本として鼠色がかった洞窟の壁を小さな前足で掘る。
左クリックを長押しして、だいたい5回ぐらい掘ると一つの
モグラとかだと素手での土採取効率高いんだけど、まぁそれはランダムだから仕方がない。
「普通に左クリックの長押しで掘れるからやってみて」
「わかったチュン」
ツンツン。ツンツンツンツン。……ツン。
「やってられるかチュン!」
「ぶはっ」
小さなくちばしで洞窟の壁をつつくが石がとれる気配はない。
それもそうだ。鳥や魚は石の採取をするには長い時間掘り続けなければならない仕様で、そのかわり、葉や枝などを多く取得することができる。
「これほんとに掘れてるチュンか!?」
「是でもあるし非でもあるって感じかな。これあげるから拾ってみて」
雀がツンツンしてる間に掘っておいた石を6つドロップして渡す。
「インベントリのクラフトってところを開くとレシピに石の作業台ってのがあると思う」
「んー、あったチュン」
「作ってみて」
クラフトは素材さえあれば直ぐ完成するようになっている。
瞬く間に、石の作業台を作り上げた雀はぽん、と雀サイズの小さな作業台を地面に置いた。
「なんか、小さくないチュンか?」
「プレイヤーに合わせられてるからね。まぁ、大きさはそうだけど誰でも使えるし、成長して体が大きくなれば作業台や装備品も大きくなるから」
「無駄なこだわりすぎるチュン!」
「あはは。じゃあ作業台で石のスコップを作ってみて」
「わかったチュン」
数秒後。
「……は?」と低めの声で疑問を呈する雀がいた。
「さもありなん」
『その反応は正解』
『今の低めの声で罵倒してほしい』
『こわこわ雀の片鱗が見え隠れしたな』
「なんチュンか。この『小型鳥用クチバシ型スコップv1.03』ってのは」
「これが小鳥用のスコップだよ。ちなみにスコップを装備すると魔法の力で石用スコップの効率に強制的になるからモグラとかの土とか石を掘る効率がいいキャラはそれで効率落ちることもあるから注意ね」
「いや、百歩譲ってクチバシ型のスコップってのはいいチュンけど……ネーミングセンスどうなってるチュン……」
「そういうものだって思うしかないね。私が作ったら『手にしっかりフィットスコップ 冬は手袋代わりになるよ』だったよ」
「終わりだ……」
『ワイ、魚類低みの見物』
『魚も酷かった記憶』
『どんなのか気になる……』
「魚は、小魚だと口ドリルで、おっきくなるとサイドアームだっけ?」
「不穏な単語しか聞こえないチュン……」
口のところがドリルみたいに回転して掘削するのが小魚で、おっきいのはサイドアームを取り付けられたはずだ。
「もう深く考えないことにしたチュン」
「それがいいね。ちなみに今日の目標覚えてる?」
「えっと……なんだっけ?」
「あはは、今日の目標は縄張りを作ることだよ」
「縄張り?」
「うん。最初に私たちがポップする位置は安全だけど、洞窟の奥に行くか外に出ると別の動物の縄張り内だったり人間の村や街だったりするんだ。
共存関係が築ける動物ならいいけど雀なら蛇とかは共存不可で攻撃されてしまうから天敵の縄張りじゃなくて自分だけの縄張りを主張しないといけないの。
ちなみにこの縄張りを作るとそこにスポーンできるようになるから重要だよ」
この縄張りでは、寝ることで獰猛な夜行性の肉食獣たちが活発に動き出す夜をスキップすることができたり体力の自然回復、あと他の共存関係にある動物が商売にきたりと様々なことができる。
また落としたアイテムは一定時間経つと消滅するが、縄張り内では消滅しない。
「作り方は?」
「ふふっ、それはね」
「うん」
「縄張り内にいる他の動物との話し合いだよ」
このゲームで一番面白いところの始まりである。
_____________________________________
※被食回数。
被食側を何回まで食べられるかを数に表したもの。
ミミズは上限2回まで、牛は上限10回までと単純な大きさによって変わる。
捕食中は、死体の腐敗速度が著しく上昇するため、自分より大きい生物を捕食して時間が掛かりそうな場合はナイフや近接攻撃で解体を行い、干し肉にすれば長持ちさせることができる。セサクwikiより引用。
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