第3話
『雀の餌の皆さん、初めましてにゃ!Virtual Gamers@プラスの副部長こと
「いや、たぶん雀の餌の大半は、猫神様のリスナーだと思うチュンけど」
『せやなw』
『猫神様のおかげで雀ちゃん知れたみたいなところあるし』
『推し二人が喋ってるのまじで最高(最高)』
猫神様が、雀を見つけてくれなかったら、まだ収益化なんて遠い先の話だったかもしれない。
彼女が与えてくれた恩恵は大きいものだ。
____でも、まぁ、それは置いといて。
猫神様と雀が直接喋ってる!
まほろちゃんの時も思ってたけど、友人がテレビに出て、俳優やアイドルと喋っている、そんな不思議な感覚だ。
___黎明期、草創期、まぁどちらでもいい。
Vtuberの注目度が高まってきた時代、大多数からVtuberと認められているのは3Dモデルを使った数人だけだった。
2Dモデルを使っている者たちはVtuberじゃないと、そんなことを言う者たちがいたり、まだVtuberの境界がはっきりしていなかった三年前。
突如、彼女たちが現れた。
Virtual Gamers。
とある企業がVtuberに参入し、始まったVirtual Gamersは部長と副部長のたった二人で始まり、愛らしい2DモデルでVtuberの池に放り込まれた彼女たちは最初はVtuberではないと叩かれたり、登録者も再生数も増えなかったりと伸び悩んでいた。
私は、その頃に彼女たちを見つけた。
最初はなんとなく、色んなVtuberを紹介する30分ぐらいの動画をのんびりと眺めていたのを覚えている。
そんな中で、やけに楽しそうにゲームをするVtuberが気になった。
名前を覚えて、検索して、そして見つけた人こそが、まだ伸び悩んでいたVirtual Gamersの部長
喋りは下手だし、ゲームもそこまで上手くない。
でも、それでも、楽しそうにゲームをしてよく笑う彼女から目を離せなくなっていた。
やがて副部長である猫神様がゲームの腕前で一躍人気になると、そのままVirtual Gamersの名も売れ、登録者も一気に増えていった。
……だけど運営をしている企業の不祥事により、大炎上。
Virtual Gamersごと無くなってしまうピンチに、彼女たちに目をつけたのが大手ゲーミングデバイス企業『@プラス』だった。
@プラスが、企業を買収して、彼女たちを引き取り、Virtual Gamers@プラスとして再始動することになった。
それから大手Vtuberとして順調に歩んできた彼女たちだったけど、部長である紗雪さんが卒業してしまい、部長の座は今は空席となっている。
まぁ、つまり私は紗雪さんが大好きで、
そんなVGの黎明期を支えた猫神様と雀が、私の幼馴染が直接、Vtuberとして喋っている。これほどの感動はなかなかない。
『にゃぁ、改めて雀ちゃん、一か月記念と収益化おめでとうにゃ!』
「ありがとうチュン!……猫神様が見つけてくれなかったら、今のチュンはたぶんここにいなかったチュン……だから猫神様にはすっごく感謝してるチュン」
『ふふっ、にゃーは雀ちゃんに惚れちゃったからにゃ!ファントムのプレイ動画を見て、あの瞬間はにゃーはきっと恋に落ちてたにゃ。にゃーは普段、活動のこと以外、RTしないにゃけど、にゃーを惚れさせて、惚れた相手を自慢させたくなったのが紛れもない雀ちゃんの能力にゃ』
「照れるチュンね……」
『一般リスナーは限界です(てぇてぇ)』
『そっか、確かに猫神様がRTしてくれなかったら雀ちゃんのこと知らなかった可能性もあるのか……』
『猫神様ありがたや……』
こちら裏方一般人も限界です……尊い。
もし、この立場じゃなかったらこの配信の感想を毎秒ツイートしてフォロワー全員からミュートされるようなことになっていた。
『ほんとは今日、凸する気もなかったしチャットでお祝いだけするつもりだったんにゃけど……、三石まほろちゃんの凸観てたらにゃーのめんどくさいところが出ちゃって、にゃーのほうが先に雀ちゃん知ったのにー!って居ても立ってもいられなくなっちゃったにゃ……』
「チュンは猫神様が凸してくれて、嬉しかったチュンけどね」
『そうかにゃ?じゃあ、いいことにするにゃ!』
『嫉妬いいぞ~』
『大好きじゃん……』
『まぁ、それもあるんにゃけどついでにちょっとしたお誘いをさせてもらいたかったにゃ』
「お誘い?」
『うにゃ。2月の14日に新作のTPSRPGが出るのは知ってるにゃ?』
「あー、ネットのニュースで見たような、見てないような……」
『にゃはは、タイトルは『アビス・コール』って言って、ファンタジー×現代兵器をモチーフに作られているゲームにゃ。魔法なんかもあって、無限の自由度を謳っている作品なのにゃ』
「ほうほう」
検索を掛けてみると、一気にヒットする。
どうやら、今もっとも注目されている無料のオンラインゲームらしい。
『一緒にやらないかにゃ?』
「いいチュンよ」
『ほんとかにゃ!?嬉しいにゃ~!』
声を弾ませる猫神様に、私も思わず笑顔になる。
新作ゲームで、期待も高まっているなかで、猫神様とコラボ……これは伸びる!
あとそういう打算を抜きにしても、二人のコラボは見てみたかった。
たぶん、雀がVtuberを始めたぐらいからずっと。
『にゃあ、あとでディスコでメッセ送るにゃ!』
「わかったチュン!」
『にゃ、あらためて雀ちゃんおめでとうにゃ~!』
「うん、ありがと」
ピロロン。
猫神様が通話から落ちる。
コメント欄が爆速で、流れていく。
そのどれもが期待を示すものだった。
あとで寧々に予定を聞いて、ツイートンに呟いて……っと。
猫神様とのゲームコラボ……、なんとなくまだ先だと思っていたけど……
……そっか。
雀は大手企業勢、しかも猫神様からコラボの誘いをもらえるぐらいの存在になったんだ。
その事実が、胸に響く。
着実に私たちが前に進んでいる証明が、収益化や凸といった形で表れている。
それが今は嬉しくて仕方がない。
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