第2話

『祝収益化!祝1ヶ月!ほろよい配信!』


収益化がなされ、今まで絡んだこともないvtuberさんからもたくさんのお祝いを頂いた。

そして三日後、雀のデビュー1ヶ月記念。


「盛り上がってるかあああああ!」


『うおおおおおおお!¥5000』

『1ヶ月と収益化、おめでとー!¥10000』

『このビックウェーブに乗るしかないのですよー ¥5000』

いつにも増してテンションが高い雀と飛び交うマスチャ。


Metubeでは、収益化がされたチャンネルでは、マスターチャットというものが行えるようになる。

所謂投げ銭というやつである。

リスナーから配信者へと直接お金を渡せるマスチャは、配信者を支え、推しにお金を払うことができる素晴らしいものだ。

Metubeの取り分が三割らしいので七割は、Vtuberの血と肉になる可能性のあるお金なわけだ。投げるしかない!


「わー!みんなマスチャありがとうチュン!えーっと『雛見沢さん』『にぱー☆』さん5000円マスチャありがとうチュン!『富竹さん』10000円!?マスチャありがとうチュン!」


だいたい10分も経てば、マスチャの波も落ち着き、一人一人名前を呼んでいた寧々が肩を上下させている。


「実は、今日は1ヶ月を振り返ろうって配信をするつもりだったチュンけど、残念ながら飼い主さんとのコラボでほとんど話しちゃったから……だから今日は内容を変えてお酒を入れて雑談したりゲームしたりするチュン。もしかしたら誰かから凸がくるかもしれないチュン」


『ゲーム楽しみ!』

『凸……まさかあの人が来たりして』

『ちな何飲むの?』


「えーっと、飼い主さんが買ってきてるやつチュン。名前は外国語チュンね……これなんて読むの?」

「ノチェロだよ。イタリアのクルミのリキュールでこれはミルクで割ったやつ」

「へぇ〜、よくわからないチュンね」


『飼い主さんだ!!!!』

『お酒の解説してくれるの草』

『ノチェロ甘いから好き〜』


寧々が小さな口で、少量含むと少し味わい、ごくりと喉を鳴らした。


「あ、これ美味しいチュン。甘くてチュンの好みチュン」

「カシスリキュールとかカルーアもあるから、飲みたくなったら作るよ」

「ん。ありがとチュン」


『三石まほろ:飼い主さん、僕にはカシスオレンジください』


「この店はチュンの貸し切りチュンだからダメチュン」


『三石まほろ:そんなー』


まほろちゃんが来てくれたようだ。

コメント欄も一気に加速していく。


するとピコンと、モニターにアイコンが飛び出してきた。

Disscoldディスコの通知だ。


「お、いいチュンよ」


どうやら凸に来てくれたらしい。

凸とは、リスナーや配信者と、配信中に通話を繋ぐことを差す。

そういうものは凸待ちと呼ばれたりして、配信者が行ったりしてる。

V界隈での凸待ちは基本的には仲良しだったり同じ事務所のメンバーがやってきて雑談をしたり、お祝いをしたりと基本的にリスナーとは絡むことは少ない。


タブレットにイヤホンをつけて、雀の生放送を開く。

どうやらちょうど今、まほろちゃんと通話を繋いだようだ。


『僕の凸が始まる!……というわけで雀ちゃん、収益化そしてデビュー1ヶ月おめでとう!!!!!!』

「ありがとうチュン!」

『雀ちゃんとの出会いを昨日のことのように思い出すよ……』

「実際、1、2週間前チュンからね」

『一緒に野ばらを駆け回ったよね』

「銃弾がばら撒かれる戦場を駆け回った記憶しかないチュンけど」


コントのような軽快なテンポで会話が進んでいく、前のコラボでも思ってたけどやっぱりこの2人は相性がいい。


コメントも『草』『漫才かな?』と概ね私と同じ意見のようだ。


『初めて雀ちゃんの動画を見たときに、こんなに上手い人がいるんだってビックリしたんだ。正直、勢いでDM送って、ゲームしてコラボして、って感じだったけどほんっとうに楽しかった。だからこれからもよろしくね』

「こちらこそ楽しかったチュン。また遊ぼうチュン!」

『うん!じゃ、僕は配信があるから落ちるね』

「おっけーチュン。凸来てくれてありがとうチュン!」


ピロロン。

まほろちゃんが部屋から退出する。

どうやら、まほろちゃんはこれから企業の仲良しメンバーでコラボがあるようだ。

なかなか凄いメンツだし、あとで見とかないと。


「というわけでまほろちゃんがきてくれたチュン。あのコラボはチュンにとって初めてのコラボで緊張したりもしたけど、まほろちゃんの元気さにかき消されちゃった感じするチュン。こう思えば、太陽みたいな人チュンね」


『まほろんのそういうところに本当に元気貰ってる』

『わかる』

『三石まほろ:僕、泣いちゃった』


「わー!まほろちゃんはさっさと配信の準備するチュン!放送閉じるチュン!」


寧々の照れ隠しの言葉に、たくさんのコメントがつく。

その中に、ふと一際目立つものがあった。


『猫神 雫:次はにゃーの番にゃ?』


ぴきり、と固まる。

ある意味、このチャンネルがこんなにも早く収益化を行えたのは、彼女のおかげともいえるだろう。

登録者45万人……いや、最近は既に50万人に届きそうな勢いでノリにのっているVtuber界の猫神様。


どうやら彼女とのコラボは思っていたより早く実現してしまうようだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る