第3話
「ひえぇ」
震えの収まらない携帯に距離をとって警戒心を剥き出しにする猫、もとい寧々。
私は震える携帯と取り、スワイプをしてとりあえずおやすみモードに変える。
あとは携帯からSNSに飛び、通知を切った。
「とりあえずこれで鳴らないから安心して」
「う、うん。超怖かった」
「分かる、バズったら怖いよね」
投稿して二十分と少し。既に百を超える数が
フォロワーも増え続けるなか、通知を整理していると気になる
猫耳を生やした愛らしい女の子のキャラクター、このキャラを私は知っている。
『こ、この雀は逆ににゃーが食べられそうにゃ……』
あざとい語尾に一人称、V界に舞い降りた猫神様。
VTuberの中でも異彩を放つ大手企業をスポンサーに持つゲーマー集団。
Virtual Gamers@プラスの副部長。猪突猛進のFPSゲーマー。
登録者数四十五万人の
「やばいやばい、どうしよう」
どうやってリプライを返すべきか。
寧々のプレイが目にとまり、なおかつ猫神様にRTされたことがこのバズの原因の一端であるらしい。
猫神様から来ました!というリプライがついている。
だがそれでもまだデビューすらしてないのにフォローまでされてしまった。
とりあえず気づかないふりをして、リフォローを見送り、リプライへの返信を考える。
失礼のないように、それでいてキャラを崩さずいかないと……
ぶつぶつ考えていると、「あっ」と寧々が声をあげた。
「どうしたの?」
「この人、知ってる」
寧々もvtuberには詳しい。
大手グループと大手の個人は大体網羅しているから知っていてもおかしくはない。
「返信しないの?」
「えっと、どうやって返そうか迷ってて」
「普通に返せばいいんじゃない?」
「簡単に言うなよー!大手だから怖いじゃん」
「そういうもん?」
「うん」
「じゃ、私がしていい?」
「……うーーん」
「なんで迷う」
寧々に任せていいものか。
いや本来ならリプライの返信は寧々がするべきなのだが、寧々は昔から返信が少々無愛想に見えることがある。
言葉に寄り道がないというか……まあそれでも。
「下切 雀は寧々だから返信は任せていい?全部に返信してたらキリないし返信してほしいリプライだけピックアップはさせてもらうけど」
「もち。それで
滅多に笑わない寧々が笑みを浮かべて、私の名前を呼ぶ。
社会人になってからは滅多に呼ばれない下の名前に、小っ恥ずかしい気持ちになる。
『チュンは猫さんにも負けない雀なので当然だチュン』
寧々が頑張って考えた雀の返信を見て、笑みを浮かべると私は猫神さんにフォローを返した。
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