第7話 やれることからですね
電気配線の問題は後回しです。
テレビの部屋だった四畳半の和室を、キッチンに取り込むことが決まっているわけですから、最初にそこから片付けていくことにしました。
弥生さんと葉月さんは、ゴミに出すもの・リサイクルに回すもの・裏の小屋に一時保管するもの・お店に使うものに分けて、次々に片付けていきました。
睦月さんが戦利品を抱えて戻って来た時には、四畳半は綺麗に空っぽになっていました。
「おー、さすがだね。一部屋片付いてるじゃない。」
「お帰り睦月。何か看板になりそうなものが見つかった?」
「うん。ペンキとデコパージュを駆使してみる。それもだけど、お茶菓子や弁当も買って来たよ。」
「やったー!
「まかせなさい。」
そこで三人姉妹はお茶をしながら、看板に書く内容や経理のことを相談することにしました。
「これ、ペンキなんかを買ったレシート。店で使うものはお金を別にした方がいいと思ったから、出納帳も買って来たよ。」
「ありがとう。そうね、これからはきちんとレシートを分けましょう。」
おばあちゃんちにあった大きな菓子箱に、レシートと出納帳を入れておくことにしました。
睦月さんが菓子箱の上に、『おばあちゃんち・経理』と書いてくれました。
なんだか素朴な会計管理です。
「それで店の名前の下に営業時間がいるでしょ。どうする?」
「そうか、全然考えてなかったわね。」
「最初は、ランチと喫茶だけにしたら? 手芸品なんかも売っていくんなら、あんまり手を広げないほうがいいと思うけど。」
「でも葉月、それで利益が出るかしら?」
「出なくてもやってみるしかないよ。夕食になるとお酒を出す出さないという問題もあるし、そうなると閉店時間が伸びるよ~。」
確かに。
女性三人だけの経営では、酔っぱらい対策も大変です。
まずは慣れるまで、夕方までの営業でやってみることにしました。
営業時間は、午前十時~午後六時 になりました。
ランチは十一時半~二時です。
「次はランチだよ。いくらにする?」
これは葉月さんの問題です。
「ワンコインで、2種類というのを考えてたんだけど…。」
「それこそ利益が出ないわよ。もう1種類、千三百円のランチも作ってよ。」
「どうして?」
「ちょっと贅沢したい奥様向けよ。」
「そうするんだったら、八百円と千五百円のランチを作って、ワンコインの五百円は日替わりにしたら? 食材が余ってるのでワンコインのメニューをこしらえたら、店もお客さんもウィンウィンじゃない?」
「なるほどー。」
学生の葉月さんと、家にずっといた弥生さん。会社に勤めていた睦月さんではランチに対する感覚も違うようです。
結局、最後の睦月さんの案が通りました。
コーヒーや紅茶、ジュースなどの喫茶関係のものは、近所の店を偵察した後で少し安めに設定することにしました。
だいぶ形になってきましたね。
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