第6話 まずは片付けですね
翌日の土曜日、三人姉妹は弥生さんの運転する車に乗って、おばあちゃんの家にきていました。
家の中の片付けをしながら、具体的にどのように改装していくのかを話し合うためです。
「やっぱり、この駐車小屋の壁が一番目立つわね。」
「でしょう。この壁は使えるよね。」
車を降りるとすぐに、睦月さんが道に立ってみてそう言いました。
弥生さんも睦月さんに賛成しています。
「何の話?」
「「看板よ!」」
二人が葉月さんに説明してくれます。
店を開店してもお客さんが付くまでは、三か月から半年は赤字が続くそうです。
ですからなるべく早く、ここが店になることを周りの人に知らせた方がいいそうです。
やはり経済的なことや仕事のやり方は、社会人の二人にかなわない葉月さんなのでした。
「姉さん、この壁を私に任せてくれない?」
「ええ、どっちにしろ睦月に頼むつもりだったから、好きにしてちょうだい。葉月と私は台所を片付けてるわ。」
睦月さんは弥生さんに車のキーを借りて、ウキウキしながらホームセンターに行ってしまいました。
相変わらず行動が早いですね。
弥生さんと葉月さんは家の中に入って、最初に台所を片付けることにしました。
「ねぇ葉月、ここはあなたの管理下になるでしょ? どうやったら動きやすいと思う?」
「うーん、お客さんに座ってもらうのはやっぱり座敷になるよね。」
「そうね。間の
おばあちゃんちは南側に座敷があって、そこに縁側が付いています。
縁側は掃き出し窓になっていて、そこから枯山水の小さな日本庭園が見えるのでした。
駐車場は、その庭の南側にあります。
さて台所ですが、座敷のすぐ北側に四畳半のテレビの部屋があり、そのまた北側に台所があります。
つまりここは昭和の建物だということがよくわかります。
自宅のように平成の建物だと、ダイニングキッチンが南東のいい位置にありますが、おばあちゃんの家は北西の寒くて暗い所が台所になっているのです。
昔はお客様が入らないところを、家の奥に持っていったのでしょうね。
葉月さんは昨夜、弥生さんが言っていたことがよくわかりました。
確かに四畳半のテレビの部屋を厨房に取り込んでしまえば動きやすくなります。
「うーん、この冷蔵庫の位置を何とかしたいな。レンジを使うのに邪魔だよね。」
せっかく三口ある電磁調理器が付いているのに、大きな冷蔵庫が邪魔で思うように動けません。
本来ならシンクの近くに冷蔵庫がある方がいいのです。
葉月さんが冷蔵庫を移動したい所には、食器棚が置いてあります。
「たぶんコンセントがここにしかないんだな。」
「コンセント! 盲点だったわ。そういえば古い家ってコンセントの数が少ないわ。これを改装の最初にしないと、何も動かせないわね。」
あらあら、やはりお店をするというのは、一朝一夕にはいかないようですね。
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