第8話 看板ができました

 お茶をした後で、もうひと頑張りですねと、弥生さんと葉月さんは台所を片付け始めました。


睦月さんは外に出て、裏の小屋に歩いて行きました。

どうやら掃除道具を出して、壁の掃除から始めるようです。


睦月さんが壁を雑巾で拭いていると、声をかけてきた人がいました。


大村おおむらさんですか?」

「はい、そうですが。」


寿恵ひさえさんは残念なことでしたねぇ。」

「ありがとうございます。祖母がお世話になりました。」


「やっぱりお孫さんだったのね。誠一郎せいいちろうさんとこの娘さん?」

「はい。次女の睦月と言います。」


「私は、二軒先の田辺です。誠一郎さんは女のお子さんばかりだったわね。今日はおばあちゃんの家の片付けに来られたの?」


「はい姉妹三人で片付けに来ました。実はおばあちゃんの家で『おばあちゃんち』という名前のカフェを開くことになったんです。手芸品や絵も置きますので、開店したらぜひお茶を飲みに来てください。」


「まぁ、ご姉妹で?」

「はい。妹の葉月がコックなもので、ランチもしようと思ってるんです。」


「それは楽しみね。私も知り合いに言っとくわ。いつから開店なの?」

「これから改修業者が入りますので、まだはっきり決まってないんです。オープンの日取りが決まりましたら、ここの壁にお知らせを載せますから、それを見てください。」


「わかったわ。それでここを掃除されてたのね。お邪魔しました、頑張ってね~。」

「ありがとうございます。」


睦月さんは掃除に戻りましたが、口元はニンマリしていました。


わざわざ声をかけて来るぐらいですから、田辺のおばさんは目ざとい人のようです。

こういう人は、今聞いたことをあちこちに宣伝してくれるのに違いありません。



掃除が終わった睦月さんは、美大を卒業したという腕を最大限に生かして、素晴らしい看板を描きあげました。


端っこには大き目のオープンプレートのようなものも自作して、そこにはこう書きました。


『改修工事中 近日オープン』

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