1.逆上がりに必要なのはなんだろう?
一般的に体育の授業では「体を鉄棒に引きつけろ」と指導するわけですが、私に言わせればこの指導が甘いというか、教えるほうもその重要性をいまいち認識できていないように思えます。
それは体育教師の多くが逆上がりのできない子供に対し、補助用の『駆け上がり板』とでもいうべきものを使って、まず回転する感覚を掴ませようとするからなのですが……。
考えてみてください。自分の胸より低い鉄棒を持ったままその下にしゃがみ、バック転するように(自分の体と鉄棒の間にヒザを入れるように)くるんと回るだけなら、それ自体は誰にだってできるはず。つまり、回転する感覚というのはそれほど重要ではないのです。
それならむしろ下に板かマットでも敷いて、棒が最初からヘソの高さになるぐらいに調整してやったほうが、どれぐらい鉄棒に体を引きつければ回れるかという感覚が学べるでしょう。
なのにあの『駆け上がり板』を使うと、肘がピンと伸びたままでも足が鉄棒より高く上がり、駆け上がる勢いだけで回れてしまいます。
逆上がりのできない子供の中には、練習に疲れて肘をだらりと伸ばしたまま(体が鉄棒から離れたまま)、何度も足だけを振り上げている子がいます。これではいくらやっても無駄なばかりか、手のマメが潰れたりして痛い思いをするだけです。
しかも逆上がりに失敗して振り上げた足が地面に落ちたときも、足の裏には結構な衝撃が来ます。そんなことを何度も繰り返すうちに、やる気そのものを失ってしまう子も多いはず。
では、徒労に終わらない逆上がりの練習方法とはいったい何か?
皆さんは逆上がりを途中で止めたような体勢、つまり地面を蹴って両ヒザを鉄棒よりも高いところに持ち上げ、鉄棒を自分のヘソあたりにピッタリとつけたままの姿勢で何秒静止することができますか?
その状態で5秒から10秒も静止していられる筋力があれば、おそらく軽くジャンプしただけでも逆上がりができるはず。
むしろ最初に地面を蹴り上げる力などほぼオマケみたいなものだと感じるでしょうし、勢いをつければ何度も回転することだってできるでしょう。
つまり逆上がりで何よりも重要なのは、鉄棒にヘソがつくところまで自分の体を持ち上げる『筋力』と、自分の体や蹴り上げた足が落ちようとする重力に耐え、体が1回転するまでその体勢を維持する『筋持久力』に他なりません。
その筋力をつけるために最も有効なトレーニング、それはズバリ『
もちろん自分の首や頭よりも高い鉄棒で逆上がりをやるとなると、さすがに助走やジャンプ力もそれなりに必要になるでしょう。ですが逆上がりにおいて最も重要な筋力は、まず『上腕三等筋』と『広背筋』から生み出されます。
そこで両方をいっぺんに鍛えられる
とはいえこの
なので、ここは足を地面につけたままの『
これならまだ力の弱い子供でもできるだけでなく、逆上がりに必要な上腕三等筋と広背筋の『引く力』も効果的に身につけることができます。
しかも手のひらをあまり
耐えるべきことがあるとすれば、たた単純な疲れと翌日からの筋肉痛ぐらいです。
やり方としては腕をあまり開かず、曲げ伸ばしするときに肘が脇腹を
これは実際に逆上がりをするときにも重要なことで、
ちなみに太っている子供に逆上がりが苦手な子が多いのも、鉄棒にその巨体を引きつけたまま維持するだけの筋力が足りないからです。
要はそれができるだけの筋力を身につけさせるか、そのままの筋力でも逆上がりができるところまで体重を落とせばいいということですね。
逆に肘が伸びきったままでも、足を真上まで蹴り上げ、勢いまかせに回れるだけの脚力をつければいいのでは? と思われる方もいるかもしれません。
ですが鉄棒の高さが自分の胸や首より上である場合、体を十分に引きつけていないと鉄棒に足首やスネを打ちつける可能性もありますので、やはり練習は脚力よりも背筋力をつけることに力を注いだほうがいいでしょう。
鉄棒のないところでも親子で練習できるやり方として、床に寝そべった子供さんの手を親御さんが掴み、それを子供さんが引っ張って体を持ち上げるという方法もあります。
これだと垂直に重力がかかるため、むしろ
こうしたトレーニングを2週間から1ヵ月ほど(適度に休息日を挟みつつ)行なって筋力をつければ、肘をだらりと伸ばしたまま、ただ無駄に足を振り上げ続けるよりはきっと逆上がりがしやすくなるはず。
夏休みなどの長期休暇に練習すれば、おそらく2学期までには逆上がりができるようになるでしょう。また、そうした努力の末に何かができるようになるという成功体験は、お子さんのチャレンジ精神を育む一因にもなってくれますよ。
次回は小学校でやる定番のスポーツ、ドッジボールが上手くなるための技術について紹介したいと思います。
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