第18話「決戦Ⅳ」

 第十八話「決戦Ⅳ」


 「くっ……無事か、みや


 彼女を抱いたまま、そこへ転がり込んだ俺は、胸の中の少女を確認する。


 「大丈夫、何ともないわ、それより早く上へ」


 雅彌みやびはそう答えると倒れた自分達の頭上に繋がる鉄製のシンプルな階段を見た。


 俺もそれに頷く。


 そうだ、細かいことは後だ……今は……兎に角、やるべき事がある。


 地下数十メートルにある秘密工場、そこから人力で地上に脱出できるこの階段は、途中で何度も何度も折り返しながら地上に通じている。


 通常のビルで言うところの三十階から四十階に該当するそれは、今の二人には、希望を繋ぐ蜘蛛の糸であった。


 ーーカンッ!カンッ!カンッ!


 シンプルな鉄の階段を、必死に駆け上がる二人。

 途中、何度も何度も折り返して地上に近づく二人の呼吸は次第に乱れていった。


 ーーはぁ、はぁ、はぁ


 心臓が早鐘のように脈を打ち、肺が張り裂けそうな痛みを伴う。


 地上まであと少し、地下二階の何も無い部屋に出た時だった。


 ゴゴゴゴゴーーーーー!


 遙か地下の方から地鳴りが響き、室内は一度ガクンと大きく上下に揺れる!


 ーーズシャッ!


 疲労の頂点であった二人の足は、簡単に縺れて俺達は倒れた。


 地下二階の、上階へ続く階段以外何も無い部屋で、床に這いつくばる二人、疲労した脚の筋肉は、直ぐに立ち上がることができない状態だった。


 「みや、来るぞ!」


 先ほどの不自然な振動から、俺はそれを予測していた。


 ーーグシャァァーー!


 鉄筋コンクリートの分厚い床を、発泡スチロールの簡易な舞台装置のように容易く打ち破り、出現する巨大で無骨な鉄塊!


 俺達がやっとの思いで辿り着いた最下層からの距離を、ショートカットして現れる理不尽な鋼鉄の魔神。


 「階段くらい普通に上れよ……」


 俺はまだ乱れたままの呼吸で文句を言った。


 ーー!

 直後、俺は直ぐ隣から不穏な気配を感じる。


 俺の隣で、床に手をついたままの雅彌みやびの濡れ羽色の瞳が黄金の光を集約していく。


 「おいっこんな所で焔王えんおうは……!」


 俺は雅彌みやびの行動を察して、直ぐさま止めようとしたが間に合わなかった。


 ーーブワァァァァァァ


 眼前で突如巻き起こる熱風から、両手で顔を庇い、視界を確保しながら俺は隣の美少女を見る。


 直後、黒髪の竜の美姫と俺の周り一帯が、大地からそそりたった黄金の火柱に包まれていた。



 ごぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーー!

 ごぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーー!

 ごぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーー!



 幾本もの炎の柱が乱立し、その勢いを競う!


 炎竜の灼熱の息吹の如き紅蓮の業火に焼かれる室内。


 ーーメキッメキッーーーー!


 超超高温で溶けた鉄骨は、コンクリートの床の重量を支えきれず崩壊し始めていた。



 ドドドドドーーーードシャァァァーーーーーー


 部屋の床、中央部に亀裂が走り、一気に崩れ落ちる、勿論そこにぶら下がっていた巨大な鉄塊も共に奈落へ真っ逆さまだ!


 ヒューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーードシャーーーーー!!


 遙か下方でとんでもない規模の衝突音が響いていた。


 「…………おいおい」


 俺は絶句する。


 「これで当分は上ってこれないわ」


 そう言う雅彌みやびを俺は何とも言えない顔で眺める。


 「……なに?」


 「いや……」


 まあいい……済んでしまったことは仕方が無い、後は下の人がなんとか対処するだろう。

 俺はなにやら面倒くさくなって、下の階にいるであろう面々に丸投げしていた……ごめんなさい。


 「……」


 なんとなく、彷徨う視線が雅彌みやびと絡む。


 「みや、さっきも言いかけたけど……」


 俺はちょうど良い機会だとばかりに、先ほどの話を蒸し返していた。


 「騙されたことは気にしていないわ……いいえ、気にしていないと言うより、それも私を想ってのことだってわかるから……」


 「だったら、だったら何でここにいるんだ、俺の気持ちが解るなら」


 「あなたが私の為にすることがあるように、私にも貴方のためにすることがあるからよ!」


 俺の言葉を遮るように彼女は叫んだ。


 「……みや、おまえの立場はワカってるだろ、俺はその為に」


 「あなたは何時もそう!私の為だって、勝手に無茶をする!私を特別扱いして、護っているつもりだろうけど、私が貴方を心配していないとでも思ってるの!三年前だって……」


 「みや……それは……」


 かつての、その件に触れられ黙ってしまう俺。


 「あ……」


 つい出てしまったのだろう、自身の言葉を後悔して視線を逸らす雅彌みやび


 「……あはは、……なんだか、七年前の、俺が、子供だった俺が、みや九宝くほうから助けるなんて、何も考え無しに言って、言い争いになった時に似てるな……」


 「……」


 「……」


 「あのね……はがね……特別……あつかいされるのは、嫌じゃないの……あなたになら……その……」


 気まずくなる空気に気を遣い、彼女はボソリと言葉を発する。


 「え……と……」


 「でも、 何もかも蚊帳の外だなんて嫌!……はがねを……私にもこうくんを助けることができるかもしれない……のに」


 「……みや


 「ごめんね、はがねに余計に心配かけるってわかってるのに、どうしても……ほんとにごめんなさい」


 そう言ったのを最後に俯いてしまう雅彌みやび


 「いや、もういい……それより上へ行こう」


 俺は申し訳なさそうに謝る雅彌みやびに、ばつが悪くなってそう促した。


 だが、この時俺は本当に理解してはいなかった。


 彼女が、燐堂りんどう 雅彌みやびが何に対して謝っていたのか。


 俺自身、勝手に事を進めてきた後ろめたさからか、俺はその本質に踏み込むことを怠ったのだ。


 部屋の床に大穴が空いたため、そのふちを伝うようにして、向こう側の階段へ移動する二人。




 「これを上れば地下一階だ、やっとゴールが見えてきたな」


 「ええ、……ここで真那まなが……ファンデンベルグの援軍を止めてくれたの」


 少し、落ち込んだ声で雅彌みやびが伝える、俺はその言葉で、改めて彼女のそばにいるはずの、目付きの悪い少女がいないことに気がついた。


 「吾田あがた 真那まなが?」


 「ええ、最初は二人で戦ったのだけど、途中から私に先に行ってと……」


 「そうか……」


 吾田あがた 真那まなはかなりの手練れだろう、しかし相手はファンデンベルグの軍隊、せめてその中に上級士族がいないことを願うしか無い。


 俺達は緊張しながら階を上がり、地下一階の部屋前まで到着した。


 ここを通り抜ければ地上だ。


 しかしその扉は、分厚い鉄板に覆われた巨大な障壁として俺達を阻んでいた。


 当然のようにそれは強固に閉ざされた状態だ。


 「……」


 ファンデンベルグ兵がこれ以上の進入を許さないために閉じたのか、それとも、吾田あがた 真那まな雅彌みやびを追わせないために決死の覚悟で閉じたのか……。


 くそ、後者だったら泣けてくるな、すまなかった吾田あがた 真那まな


 おまえ、、ただの馬鹿な子じゃなかったんだな……。

 俺は心の中で、相手には非常に失礼な事を思いながら謝罪していた。


 「…………!」


 俺が感傷的になっている間に、隣にいる雅彌みやびの濡れ羽色の瞳が黄金の光を集約する!


 「わっ!だから、焔王えんおうはやめろって!」


 俺は再び、慌ててそれを止めに入った。


 なんて無茶をするお嬢様だ!ってか、さっきので、全く反省は無いのか!


 「……」


 不満げに俺を見上げる瞳、不満げだが……美しく整った濡れ羽色の瞳は反則的なまでに綺麗だ。


 かっ、可愛いからって駄目なものは駄目だ!たくっ、ちょっと目を離すとこれだ……

 またぞろ床を落とすつもりかよ……俺達にも下の人にも迷惑だろ!


 「……俺が何とかする」


 まだ何か文句がありげな雅彌みやびをおいて、俺は右腕の白銀の武装兵器を構える。


 「三式百五十番”ほう”」


 ヴゥゥゥーーン!


 俺と重厚な鉄製の扉、その間に青色光のサークルが展開される。

 俺はそれを突き破るように、渾身の右ストレートを放った。


 ドゴォォォォォーーーーーーーーーーン!!


 青円光のサークルを貫いた拳は光を纏った一撃となり、そのまま、分厚い鋼鉄の扉をひしゃげて弾き飛ばした!


 ガコンッ、カラララー


 直後、乾いた音を立てて右腕の武装兵器から長方形のカートリッジが飛び出した。


 ガシャン!


 俺は銃の弾倉のようなそれ、空になったカートリッジを外してポケットに入れ、同じポケットから別のカートリッジを出して元の場所に装填した。


 威力を飛躍的に増強する加速フィールドを打ち抜く突貫打撃!三式百五十番”ほう

 武装兵器本体に負担のかかるこの技でも、設計通り、この改良型なら大丈夫だった。


 麟石リンセキ入りのカードリッジ交換は必要不可欠だが、前のようにオーバーヒートすることは無いし、これなら連続使用も可能だろう。


 「……」


 「……はがね?はがね!」


 「あっと!……悪い悪い、ちょっと考え事を」


 俺は新型の実証試験を兼ねた、鉄製ドアの破壊に予定通りの結果を得て、思わず口元を緩めていたらしい……


 吾田あがた 真那まなを心配している雅彌みやびの前では不謹慎だったろう。


 「べつに吾田あがた 真那まなを心配していない訳じゃないんだ……ほんと、ちょっとは……いや、ちょっとは語弊だけど、正直それほど……」


 慌てて弁明する俺は所々本音を覗かせていた。


 「兎に角、入りましょう……どちらにしても先に進まないと」


 雅彌みやびは呆れた顔でそう言うと地下一階、地上への最後の部屋に入っていった。



 ーー部屋一面に倒れるファンデンベルグの軍人達。


 数十人はいるだろうか?どっちにしても激しい戦闘の跡がわかる光景だ。


 「……シュールだな……」


 俺は思わず感想を漏らしていた。


 折り重なるように倒れる兵隊達の真ん中辺り、そこに俺の……いや、誰も予期せぬ光景があったからだ。


 ここは地下一階の室内、と言っても大型トレーラーが十台は入る鉄筋コンクリートの空間だが、そこに折り重なるように倒れるファンデンベルグの一般兵達と、そして少し盛り上がった中央付近の人の山。


 ……そしてここからが問題の光景なんだが……その山に墓標の様に突き立った二股のなにか。


 白い墓標?いや、何かは解るんだ……それが何かは……ただ、現実として認めたくないだけ……


 それは……それは、人の山から逆さまに突き出す少女の二本の白い脚であった。


 ーーうーー!うーーー!


 うめき声を上げて時折バタバタと藻掻く白い脚。


 ……漫画かよっ!てかどうやったらそうなる!


 彼女のことを心配していた雅彌みやびの手前、俺は心の中で精一杯つっこんでいた。


 「……真那まな


 流石の雅彌みやびも、その光景に頭を抱えているようだ。


 「見たことあるな……こんな映画」


 呆れながら俺は、昔見た”なんとかの一族”を思い出していた。


 「……はがね……抜いてあげて……」


 情けない表情で、雅彌みやびが依頼してくる、なかなかに貴重な表情だ。


 「あ、ああ」


 俺は了解するとその人柱に近づく。


 「……」


 そして暫し、考えた。


 少女の白い脚、スカートを穿いている真那まなは、正直何とも言えぬあられも無い格好だった。


 しかし、俺は全く変な感情が起きない、いや、寧ろ関わりたくないとさえ思えた。


 「みや、あのさ、これ……このままで良いんじゃないか?前衛芸術ってことで未来永劫保存するってのは…」


 俺のその言葉に、雅彌みやびの視線に鋭さが増す。


 「わ、わかったよ」


 俺は仕方なしにその脚を両手で抱えると。


 「どっせい!」


 直下型バックドロップでも決めるように一気に引っこ抜いた。


 ーードサッ!


 「ぷはーーーーっ、はぁ、はぁ……」


 暫くぶりで新鮮な空気を吸い込んだのか、その少女は、引き抜かれたままの寝転んだ状態で大きく息を出し入れしていた。


 そして暫くして、自身を引き抜いた俺を見上げる。


 「だ、誰が瀬○内国際芸術祭の島にあるオブジェかーーーー!」


 俺に怒鳴る目付きの悪い少女。


 「いや……おまえ、助けられた第一声がそれか……瀬○内って……むしろスケキヨ……」


 「うるさい!うるさい!うるさい!」


 吾田あがた 真那まなは、わめき散らしながら詰め寄ってきた。


 「……真那まな


 雅彌みやびがそんな従者を窘める。


 「お嬢様もお嬢様です!私は命がけで……」


 そう言って涙目で、珍しく主に口答えする真那まな


 「……わるかったわ真那まな、ありがとう」


 その剣幕に押されて思わず謝る雅彌みやび


 現金な事に、主に礼を言われ満面の笑みになる真那まな


 そして、再び不機嫌な顔になり、目の前の俺に向き直る。


 「おまえは何か言うことは無いのか」


 睨む三白眼の少女。


 「……吾田あがた 真那まな、おまえにそんな大人っぽいパンツは似合わない」


 ガスッ!


 真那まなの鉄拳が俺の鼻を捉えていた。


 「おまえ、俺の鼻になんか恨みでもあんのか!」


 「恨みがあるのはおまえ自身だ!穂邑ほむら はがね!」


 醜い争いを始める二人。


 「はがね真那まな、そんな馬鹿やっている暇は無いわ、地上にでるのでしょう」


 雅彌みやびは呆れて一人地上への階段を上っていくのだった。



 ガシィィィーー!


 峰月ほうづき 彩夏あやかの前蹴りが、クラウゼンの鳩尾に決まり、男の出足を挫く。


 「ふんっ!」


 急所に決まったにも関わらず、その男は全く怯まずに両手を伸ばして女の肩を掴んだ。


 そしてそのまま力任せに引き倒そうとする。


 ガシィィーー


 今度は相手の顎を蹴り上げるしなやかな白い脚。


 頬傷の男の顔が完全に天井を向くが、それでも、その男は掴んだ両手を離さない。


 「っ!」


 動きを制限されたポニーテールの少女に、フォルカーの爪が迫る。


 ズバッ!


 フォルカーの爪が、彩夏あやかの顔面を捉えようとした寸前で、琉生るいの手刀がそれを払っていた。


 フォルカーは、自らの腕を瞬時に引き戻し手刀の斬撃を回避する、そして、その腕を今度は振り下ろした琉生るいの右の二の腕部分に向けて放ち、鷲づかみにしていた。


 ーーメキッメキッ!


 「ぐっ!」


 一瞬の攻防、腕を掴まれた琉生るいが、その握力に顔を顰めた。


 ブンッ!


 琉生るいへの追撃を用意するフォルカーを、肩を掴まれたままの彩夏あやかが足払いで振り払う。


 ザシュッ!


 同時に、琉生るいの左手での手刀が彩夏あやかの肩をホールドするクラウゼンを切り伏せた。


 「ぐうう」


 胸に斬撃の傷跡を刻んで片膝をつくクラウゼンと、その横で爪を構えるフォルカー。


 対して、負傷した右手をダランと下げ、左手のみを構える琉生るいと少し腰を落として構える彩夏あやか


 再び間合いを取った二組の緊張が程よく張り詰めた瞬間に、それは舞い戻った。


 ーーーーーヒューーーーードドーーーーーーーン!


 地面が激しく揺れ、砂煙が辺り一面に舞い上がり視界が無くなる。


 「な、何なの!」


 敵の新たな攻撃かと彩夏あやかは身構えた。


 しかし、当のフォルカー達も動揺は隠せない様子だ。


 やがて砂煙が薄くなり、その落下物が判明する。



 その表面は、深淵に潜む泥のように淀んだ鉛色。


 その風貌は、唯唯、貪欲な大食漢の魔王。


 首無しの鉄騎士、無骨な鉄塊。


 BTーRTー04べーテー・エルテー・フィーア鋼の虎シュタールティガー、通称ブリトラ。


 「はがね達……上でなにやってんのよ?いったい!」


 呆れ顔で、思わず彩夏あやかは上を仰ぎ見ていた。


 ブリトラの追撃はどうやら間に合わなかったようだ。


 刻々と変化する戦況に、このまま穂邑ほむら はがねの追跡のため、目前の二人とトコトン戦うか、それとも……


 フォルカーが思案を始めたとき、彼の無線がけたたましく鳴った。


 ーーピーー!ピーー!


 「フォルカーくん、非常事態だ!すぐに地上に駆けつけたまえ!ナンバーA八区域、速やかにだ!」


 「……」


 フォルカー・ハルトマイヤー大尉は、人使いの荒い上官に天を仰いだのだった。





 「よう、遅かったじゃねえか……雅彌みやび!」


 そう言って歪な笑い顔を向ける男。


 細身というか、寧ろ痩せすぎの感のある男は、長い手足と細い目、そして柄の悪いアロハシャツにクロップドパンツ、そして草履という、ラフというか、何とも言えない出で立ちであった。


 その男はアスファルトの上に胡座をかき、時折首を左右に傾けてパキパキと骨を鳴らす。


 「で、だ、爺さん、あんたの研究は、ちょっと不味いんじゃ無いかい?」


 ニヤニヤしながらそう言って目の前に立つ金属製の杖をついた白髪の老人を詰問する。


 「……」


 男の目の前に立つのは、ファンデンベルグの軍人であり、天才的科学者である、ヘルベルト・ギレだ。


 はがね達を待ち伏せするためだったのか、ギレ老人は、二十人ほどの兵士を従えた状態だ。


 「……」


 ギレは脂汗を流してその問いの回答に困窮する。


 「ネタは挙がってるんだ、爺さん、同盟国のよしみで、折角、共同研究で金と人を出してやってるのに、その研究が”上級士族の根絶”……そりゃ無いんじゃないかい?」


 俺は混乱していた、何とか地上に出ることが出来たら、在ったのはこの光景だ。


 「みや……いったいこれは……?」


 俺達がこの場所に出た時、くだんの男は雅彌みやびの名を確かに呼んだ。


 ”よう、遅かったじゃねえか……雅彌みやび”と。


 普段は行楽客で賑わう、リゾート施設、マリンパレスの中央広場、俺達が脱出した地上出口はその広場にあるメンテナンス用の小屋に繋がっていた。


 そして、本来は人で賑わうこの場所は、人っ子一人いない状態、いや、正確には、正体不明の痩せた男と、ヘルベルト・ギレ、そしてその麾下の兵士達だけが存在していた。



 「……九宝くほう……戲万ざま……閣下よ」


 雅彌みやびは苦しげに呟いた。


 第十八話「決戦Ⅳ」END

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