第4話 ある日の入学式 その4

 友永ともながゆう、俺は友人の七島ななしまはじめと一緒に学校の昇降口に向かっていた。


 小学校の卒業式から会っていなかったので話題は春休み何やっていたかという話になっている。


「って、親父殿がさあ言ってきてよ」


「ほんと、一は親子の仲いいな」


 そろそろ反抗期の時期だというのに聞いてる限りではそんな感じがしない。


「そりゃな、俺どの家族よりも仲いいと自慢できるからな」


「いいな。俺は最近、母さんと喧嘩ばかりだよ」


「彩花さんと? いい人じゃん」


「そうなんだと思うんだけどね……お」


中庭あるバスケコートの横を通りすぎるちょうどその時、後ろから誰かが慌てて走りながら通り過ぎた。

 その後姿を見た一が、その人物に話しかける。


「お昼じゃん」


 声をかけられた人物は「はい?」とだるそうに言いながら振り向いた。

 岡尾おかお昼也ひるや。同じ小学校で野球チームは違ったが、近くでやっている敵チームということでよく対戦していた。


「んー……。ああ、友永と七島のお二人さんか」


「おいまて、今の間なんだよ。まさか忘れてたのか」


 一が昼也に突っかかる。確かに今の間は気になる。


「いやいや、忘れてたとかじゃなくて頭が回んなくて」


 ああ、そうか。こいつ今日も寝不足なわけか。

 俺は昼也の肩に置き、ひとこと満面の笑みで言った。


「綺麗な青空で清々っしい朝だな!」


「俺にとっては、朝は毎日雨だ」


 三人は昇降口に入ると一が「下駄箱って入れるとこ決まってたっけ?」と聞いてきたので「まだ決まってないよ。今日は教室に靴を持ってく」と答えた。


「ん? あれ?」


「どうした、昼也」


 昼也が指さした方向に男女が廊下にいた。男の方は知っている嘉本よしもと三烈みれつだ。女の子の方は見たことない。


 ここから見ると女の子が変な人に話しかけられて困っているように見える。


「何してんだあいつ?」


「ほほう、女の子に何やら良からぬことを」


 昼也と一が思ったことを言った。

 いやそれはないだろ……さすがに、三烈も困ってるみたいだし。状況的にたまたまぶつかったとかそんな感じじゃないか。


 女の子が勢い良く頭を下げた。


「やはり良からぬことを」


「おいおい、女の子に謝らせるとか」


 だから違うだろって。心の中で突っ込んでいると三烈が俺たちに聞こえるギリギリの声で呟いた。


「なんか言ってくれても良かったのにな」


 そのつぶやきを聞いた途端、一は「お前が怖くて逃げたんじゃね」と三列の前に出て行き、俺と昼也もその後に続く。


一の笑い交じりの声に三列は「あん?」と答えてこちらを向いた。


「げ!」


 俺たちを見るなり……いや、一を見るなり三列の口からこぼれた。


「おい、てめえ。人の顔見て、げってなん、げって」


 一がけんか腰に突っかかり三烈はそれに答えた。


「そのまんまだよ……なんでいんだよ」


 一と三列がお互い黙りにらみ合う。

 昼也と俺は二人のことを気にせず……またかと思いながら三列の後ろにあるクラス表を見る。


「俺は一組か、また一番かよ。他の奴は……あ、友永はどうだった?」


「う~ん、まて……ああ、いたいた三組だ」


 俺と昼也はお互いのクラスを確認すると、にらみ合っている二人のクラスを探した。


「俺がエース!」

「エースは俺だ!」


 一と三烈が何かの拍子にお互いに向けて叫んだ。


「はあ!? 七島、お前みたいな遅い球でエース取れるわけないだろ」


「速いだけでコントロール悪い奴には言われたくないね」


 後ろのうるさい二人のクラスを発見した俺はちょっとだけニヤッと頬をあげた。


「優!」


 七島が名前を呼んできたので「何?」と言って振り返った。


「俺とこいつどっちがエースだ!」


「いや知らねえよ! 俺に聞くな。それよりも」 


 俺は一と三列のクラスを言う。二人の反応が予想出来て笑いそうになるが。


「二人とも二組で同じクラスだったよ」


 その言葉に二人は「「はあ!?」」と息ぴったしに行った。


「なんで嘉本と同じクラスなんだよ」

「なんで七島と同じクラスなんだよ」


 本当に仲いいな二人とも。全く同じことを言って。

 その時、学校のチャイムが八時半になったことを伝えた。






~この日の自己紹介~

 名前・友永ながともゆう

 クラス・1年3組

 出席番号・出席番号11番

 誕生日・8月15日

 身長・157㎝

 好きな食べ物・塩むすび

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