第3話 ある日の入学式 その3

 私、秋葉あきばかえではまたやってしまった。

 慣れてない人に話しかけられると、つい逃げてしまう。

 いつも、いつも、悪いと思っていてもこれだけは直せない……。

 次は、次はと思いながらも。


 気分が沈み、とぼとぼと廊下を歩く。


 トイレの前を通り、廊下の角を曲がったところで声が聞こえた。


「あ、ようやく来た。あっきー、クラス見つかった?」


 声が聞こえた方を見ると自分のことを「あっきー」と呼んだ夏木なつき百合ゆり冬川ふゆかわうめがいた。


 なつに私は、うんとうなづいて、もう一人の人物を探した。


「ど~したの?」


 もう一人を探していると、ふゆが聞いていると眠くなりそうな声で聞いてくる。

 私はバックの中からメモ帳を取り出して、そこに聞きたいことを書く。


「ん~っと、はるはどこ? ああ、あやちゃんなら~トイレに行ってるよ~」


 なんだトイレか。じゃあ、少し待ってれば来るかな。


 しばらくすると「ごめん、おまたせ」と言う声と共に、もう一人の友人。春風はるかぜ綾目あやめがトイレから出てきた。


「あ、梅。クラスどこだった?」


 私は、はるの質問に対しメモ帳に『四組だよ三人は?』と書いて三人に見せる。


「梅、四組なの? じゃあ私と同じだ」


 はるは手を合わせて喜び、なつとふゆは、お互いに肩を組む。


「私と店長は一組で同じクラスだったよ」


「ね~」


 また、なつがふゆのことを「店長」って呼んでる。

 おばあちゃんの茶屋のお手伝いをしているだけなのに。


 そう思っていると、はるが「じゃあ、行こうか」と言ったので私たちは廊下をまた歩き始めた。


「あ、そういやみんなは部活やるの?」不意になつが聞いてきた。


 ちょうど私の方を向いていたので、私は首を横に振る。


「あっきーはやらないか。店長は……無理か」


「う~ん、おばあちゃんのお手伝いがあるしね~」


「おばあちゃん何歳だっけ?」


「う~んと、今年で79才だよ」


「そっかー、じゃあ手伝いしないとね」


 なつが言い終わると、なつとはるの目が合った。


「……」


「……」


「あややはいいや」


「聞いてよ!」


 なつが悪さした時のサルみたいな、はるが毛を逆立てた猫みたいな顔になる。

私たちは二階に上るために階段を上り始める。それと同時になつがはるに聞いた。


「じゃあ、なにやるの」


「陸上部」


「ふ~ん」


「ちょっと!」


 まるでコントみたいな会話が繰り広げられる。

 隣でふゆが笑っていた。


「ふふ、じゃあ、ゆりちゃんは何するの」


「え!? 私?」


「うん」


 なつが不意打ちを食らったような反応をした。が、「そうだな」と言った後に「ふ、ふ、ふ」と不気味な笑いを浮かべた。


「私が入る部活が知りたいか?」


「いや、なにその言い方」と言うはるに対しふゆが「しりたいでーす」と言う。


 それに気分が上がりさらにつづけた。


「人気ナンバーワン、どんな人でも入れ、どんな奴でも文句を言わない」


 なつは自慢するかのように自分の入る部活を話す。


「そして何より自分の好きなことが出来る部活! その部活の名は!」


「その部活の名は~」緩い声でふゆが言葉を繰り返す。そして、なつが大きく口を開けた。


「その部活の名は。で、で、で、でーん。帰宅部!」


「帰宅部~」


 帰宅部か……帰宅部?


「帰宅部かよ!」


 はるが思わず叫んだ。


「どんな人でも入れ、どんな奴でも文句を言わない。優れたぶか」


「ただ家に帰るだけだろ!」


 そんなこんなで二階まで登った。なつとふゆはのクラスは三階にあるので、二階にクラスがある私とはると別れた。

 はるが一年一組の扉を開けて中に入る。私はそのあとに着いき、教室の中に入った。






~この日の自己紹介~


 名前・秋葉あきばかえで

 クラス・1年4組

 出席番号1番

 誕生日・11月30日

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