第7法 二人のレンケイ。そして、お茶会

 魔法体育館の特殊能力により、床に空いた穴、そして四人が回復した。

 試合が終わった直後に雛は帰って行き、水蓮は用事で退出した。なので感想戦のように彩翔はハクトと話していた。


「やるね、彩翔。完敗だよ」

「そうかな? 確かに相性は良かったね」


 そう、元々『レインチェイン』という魔法は連撃のタイプであり個々の威力のはかなり低い。

 しかしそこに雛の強化魔法が加わったことで、鎖一つのダメージを増加させることができた。今回の勝因はそこが一番大きい。


「これなら優勝も目指せるんじゃないかな?」

「だといいんだけどね……さっきもすぐ帰っちゃったし、今回の練習試合で仲違いが起きないといいんだけど」

「そうだね……でも! そんなこと気にする時間はないよ! もうすぐテストに試合に大会に……って続くんだよ!」


 この学園のスケジュールは他校に比べて多忙である。理由は魔法中心のカリキュラムなので仕方ないが、生徒に負担がかかるため、精神面に対して懸念が右上がりに寄せられている。


「嫌だね……」


 憂鬱プレイの結月彩翔。次なる道筋は闇に包まれていた。


 †


 阿鼻悟。

 その存在は変哲のない教師として通っている。

 しかし、実際は――


「ふむ、今年は一つ荒れそうだな。俺が潰した国の少女の帰国。しかも元魔法少女の編入。手を打つか……」


 暗い暗い部屋の中、呟かれた一言には誰も反芻することさえ憚れる。

 その部屋の中には青々として魔法檀があり、隅には大きい棚に入った大量の本が伺える。


 ――そう、彼は魔法使い。


 それも、裏の世界の人間だ。


 すると、悟の電話に通信アプリの通知が入った。確認すると、


『今日、そっちに行くよ』

『少し途中の道で災難があったけどね』


 と連続で送られてくる。


『了解だ。約束の場所で落ち合おう』

『おーけー』


 そんな言葉とともに、了解!と書かれた可愛らしいスタンプが送られてくる。悟はやれやれと肩を竦めながらも――可愛い奴め、と思い私用に耽った。




 用を終え満足した後、例の場所へ向かう。馳せた場所は御世辞にも綺麗と言えない荒廃した民家だった。

 だが、今の悟達には好都合。何せ、そんな場所に人が近寄る訳ないのだから。

 

「来たぞ」

「お疲れ様です。こちらへどうぞ、お茶も用意しております」


 席へ座ると悟は文字どうりに目を光らせ、お茶を一瞥し、飲む。


「はは、そんなに警戒しなくてもいいんですよ?」

「お前は信用ならん。没落皇子」

「……」


 夜のお茶会は明るくはなさそうだ。

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