第4法 邂逅
教室の電子板に掲げられたタッグの組み合わせを見て、彩翔はおもむろに絶句した。
何せ、タッグは雛なのだから――
「――この学校はね、大体が魔法とブルーパスによって構成されているんだよ。まあ魔法のほうはみんな初級しか使えないと思うけどね。素質がある子のみの入学なんだけど……彩翔はどうなの?」
可笑しい、きっと誰かの仕業だと無いものすがりをする彩翔。聞けば聞くほどこの学校を選んだことを後悔した。
まず、この学校は定期的に今回のようなイベントを行っているそうだ。それによって成績を決める為だ。彩翔もそれは問題ないと普段なら鷹を括るが、彩翔が怒る核心は魔法に関するものだからだろう。その殆どが魔法を駆使せねばならない。
そして二つ目。この学校での生活収入源は全て成績に反映して決まるからだ。
つまり、高い成績そ維持すれば維持するほど金銭に余裕が出来る。逆に低いものは落ちる処まで落ちることになる。
因みに収入はは全てブルーパスに転送され、ブルーパスによって支出を行う。食堂などの決済がブルーパスだったのもそのせいだ。
彩翔は分かってしまった。じぃがこの学校を薦めたことを――。
(確かに俺は頭が冴えるほうであり、なんといっても――魔法がすでに使える、上級でさえも)
そう、彩翔は既に魔法少女の経歴で上級――果ては未だ誰も知らない
彩翔はこれから力を発揮させ上に往くか。しかし今回のような場合だとタッグを組む。それによって力を出さなければ雛に迷惑をかけるのではないか?そう考えてしまう。
ハクトの問いに答えられないまま、一先ずは雛に声を掛けようとする彩翔であった。
††† ††† †††
昼休み。燦々と暑く照る太陽をバックに、彩翔は雛に声を掛けていた。
「あのー……」
「何かしら?」
早速と雛に声を掛ける彩翔……。だが初手の反応は余り芳しくない。
「タッグ、よろしくおねがいします!是非、練習して上を目指さない?」
取り敢えず魂胆として自分を下に見せてやっていこうとしている彩翔だが――
「勝手にするといいわよ。私は貴方の手なんて借りずとも上を目指すから」
「えっ……」
「じゃあね。次にあうのは明日よ」
「あっ、はい」
結論、失敗。
相手が強情な訳でもなく、ただ単に雛自身が自分至上主義だったからだ。
「どうしよ……そうえばハクトはどうしてるのかな?確かあの新聞部の人がタッグだったけど」
考えは収まらなかった。翌日にハクトに聞いてみることにする。
夕暮れが近づく頃、彩翔は一人悩み寮に足を運んでいた。
しかしそのとき――
黒い眼帯を着けた黒髪のポニーテールの少女に出会った。
「……! 誰だ?」
少女は答えるまでもなく中級魔法の『ブラインド』を仕掛け――彩翔の目の前が真っ暗になった。
しかし、彩翔に目は見える。彩翔の能力、魔眼。神秘魔法と呼ばれる潜在能力の権化。
この目にはありとあらゆるモノを見極めることが出来る。
彩翔はこの場を後にしようと素早く足を動かすが少女の初級魔法『スパーク』によって地面全体に電流が迸り体に麻痺が走る。痛みが蓄積され愚昧なことをしている場合ではないと踏んだ彩翔は――
「貴方、何者?初級魔法のブラインドから逃れるなんて」
個の世界の住民は、そもそも魔法が使える者の方が少ない。
「さあね。俺が怒る前に逃げたほうがいいんじゃない?」
「寝言は寝てから言うものよ」
脅しをかけてみるが反応は薄い。次の手を予測し転がれる体勢を作る。
少女は大きく飛び蹴りをいれる――が、既に彩翔は転がり避けれた。
直ぐに彩翔は体制を立て直す為手だけでなんとか立ち――中級魔法『クリアオール』によって周囲に目映い光が出で、疲弊、麻痺を回復する。
更に立て続けで上級魔法『ジャッジグロー』を執り、透明な鎖が無数に出、少女を縛る。
彩翔も、ここまで来れば応戦せざるを得ない。
「お前は誰に、何を言われここまでしたんだ?通常、魔法の行使は特定の条件下のみと限定されているぞ」
「言うわけ……ないでしょ」
少女の言動から、焦りが読み取れる。少女の肢体には絡み付く鎖が鋭利に刻まれ所々千切れ白く細い体が露になっている。
沈黙が続いて、次手について思考を張り巡らしていると、急に少女の後ろ陰から黒いゲートが出現した。
そこから出てきたのはクロウの仮面を被った人形のなにか。
瞬時に距離を取った彩翔だが、クロウの目的は少女のようで無理矢理担ぐとまたゲートに潜り、逃げられた。
「本当になんだったんだ……?」
連日の疲労はここぞとばかりに溜まっていた。このままでは体が壊れてしまう。今日は早く寝ようとする彩翔であった。
闇夜に灯された一閃の燈は今日も微かに光る。
失われた光は闇を道ずれにし、生きる闇は光を捻る。
この日、雨はどしゃ降りであった。
††† ††† †††
「あーあ、逃がしちゃったかぁ……」
火旋水蓮は、一人物陰に佇んでいた。
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